14 野郎共の聞き耳立て
荷物を宿泊部屋に置きに行くと、部屋には直文と八一がいない。まさかと思い、スイートルームの入口の前にいく。茂吉と啄木は反応に困りながら部屋の前にいる二人を見ている。
一人は聞き耳を立てて、狐は壁に耳を当てている。啄木は呆れながら二人に聞く。
「……何してんの。八一、直文。なんで気配消してるんだよ」
二人は振り返り、直文は頬を指で書きながら苦笑する。
「ああ、啄木。実は、彼女達に勉強の差し入れを買ってきてノックをしようとしたら……なんか盛り上がっててね。入ろうにも入れない状態になったんだ」
二人が袋を手にしているのを見る。本当に甘いものらしく、八一は部屋とを見ながら息をつく。
「なんでも、私達の出会いの話をしてるな。あっ、三善真弓さんが発端な」
名前を出され、啄木は気になった。彼も気配を消して部屋に近づくと、少女達の盛り上がる声が聞こえる。親密な関係とは。彼女の好きな人はなど。身体能力も人以上であるため、防音対策がなければ普通に聞こえてしまう。
啄木は気になっているが、優先順位は好奇心ではない。先程遭遇した現象について話をしなくてはならず、二人を呼ぶ。
「直文、八一。浮かれてる場合じゃないかもしれないぞ。茂吉と一緒に買い物の途中、海から邪気が迫り上がったのを感じた」
啄木からの報告に直文と八一は、顔つきを真面目なものに変える。直文は冷静に聞く。
「それは、陰陽師じゃないんだな? 啄木」
「ああ、海に仕掛けられる呪術の行使は時間かかる。陰陽師の仕業にしてと、後からつけてきた奴との実力が伴わないだろ。海岸に効果は一日だが結界を張った」
茂吉はポケットからスマホをだし、チャットアプリのやり取りを見せた。
「一応俺は泳げる先輩に調査を頼んだ。海岸の水質に関しては問題ないって、観光協会のホームページにもあった。海水浴のついでに調査だね」
話を聞き、八一は厄介そうにまたは悲しげに腕を組む。
「……やはり、三月の爪痕はデカイな」
その言葉に三人は切なげな表情で黙る。
命を奪うこともあるが、悼む気持ちが欠如しているわけではない。人としての善き心を持っていなければ、組織の半妖は苦しまず彼らの罰になりえない。
啄木は息をつき、歯痒そうに頭をかく。
「自然災害を止める力があったとしても、俺達は現世にて起こる自然現象による災害の制止や重大なイベントの干渉は禁止。心苦しいけど、俺達は出来る限りのことをするしかない」
三人は頷くが、八一は「あっ」と声を出す。
「啄木。これ、奈央達に話したほうがいいよな?」
「当然だ。話しておいたほうが、今後の心構えもできる」
八一は「りょーかい」と頷き、ノックをして少女たちの会話を中断させた。本題を話してからの勉強会。八一と啄木のスパルタが始まったのは言うまでもないだろう。
勉強を終えたあとは、それぞれの部屋で入浴をし明日の海水浴に備える。
また真夜中に澄と茂吉の
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