🦊2ー4章 向日葵少女の狐の嫁入り
『狐の嫁盗み』
狐の嫁入りの話を知ってる?
狐の嫁入りは狐同士のの婚儀を言うけど、地域によっても言い方が違うよね。狐の嫁入りも地域によって違うし。そうそう地域によって大分異なるあれ。
ある地域では提灯の群れを思わせる夜間の無数の怪火。私の地元では日が出ているのに雨が降ることを言うかな。
狐の同士の婚姻を狐の嫁入りと言うけど、狐は人間相手でも嫁入りすることあるよね。狐の嫁に関しては安倍晴明の伝承が有名だけど……私の方には狐の嫁入り似たようで違う話があるの。
私達の地元では狐の嫁盗みって言って、嫁入りをするはずだった人間の女性を狐が横取りして嫁にする話なの。要は幸せじゃない略奪婚の話なんだ。狐に嫁、もしくは婿を取られないように、地元では稲荷大明神の神社に嫁婿の代わりに人を模した人形と油揚げを捧げる祭り。年に一回行なわれる祭りで残暑の頃に行われるんだ。
この祭りの由来は、稲荷大明神を祀る神社の昔話にあるの。
昔話を簡単にまとめると。
『本当の昔、この地域で狐に
『これを一年に一回、五百年は続けるように。さすれば、狐が人をさらうことはなかろう』と言った。
そこから、人々は言うように供物と人形を捧げていった。最初は半信半疑で一回やめただけで大丈夫だろうと考えていたが、一回パタリとやめただけで多くの嫁入り、婿入り前の人が狐にさらわれ始めたのだ。
ちゃんと言うことを聞いていればよかったと人々は思い始めて、ちゃんと稲荷大明神の言うことを聞いてこの儀式を続けていった。それが祭という形で、稲荷大明神に感謝を捧げるものとなっている』
この祭は地元にとっては大きな祭りで大切に扱われているんだ。
けど、百年前に一度だけ祭りをしなかった年あってね。地元のおえらいさんが金のかかることしなくていいと中止にしたんだ。町の人からの反対の声もあったけど、こんなくだらない祭りしなくていいと賛成の意見が多かったんだって。主に、若い世代中心に多かったらしいの。
祭は中止になって、人形や供物の備えをしなくなった。中止になった翌日、十五歳の下校中の男女二人が行方不明になった。最初はそんなに違和感はなかったけど、その次の日にまた下校中の男女が消えて、街の畑が荒らされる。五日後になって、皆はどうしてなのかって疑問に思った。反対した人々が祭りを中止したからだって言ったの。賛成した人々はありえないと思ったらしい。けど、賛成した人々、いわゆる若い世代が消えてからやっと確信した。
しかもね、殆どの消えてた下校中の男女って祭の開催中止の賛成派だったの。
稲荷大明神様の言うことを聞かなかったからだと恐れて、中止の反対派はすぐに人形と供物を捧げたの。人が行方不明になるのはなくなったけど、田畑が荒らされることは多くなったの。だから、ひっそりとお祭りを続けることになった。
けど、おえらいさんが「そんなことしなくていいだろう」って怒り始めて、供物を台無ししたんだ。おえらいさんは稲荷大明神のある神社を取り壊して、ゴルフ場やリゾート地を作りたかったらしい。
罰当たりだよね。罰当たりなのか、そんなある日。そのおえらいさんは服だけ残して消えたんだ。下着も、身につけているものも残して。生まれたままの姿で連れ去られたってことだろう。そんな奇妙なことが起きて恐ろしさを抱いたから、ちゃんとお祭りをするようになったんだ。
そこからとやかく言う人はいないし、こういう話もあるからちゃんとお祭りは続けていくんだけど。その他の人はともかく、なんでおえらいさんだけは生まれたままの姿で連れ去られたのか。その他の人は服を着て連れ去られたんだよ? なのに、おえらいさんだけって生まれたままの姿なのはどうしてなんだろう。
昔は人を贄にすることもあったから、それで服を着させずに連れ去ったとか……?
わからないけど、ここは色々と考えられるよね。
えっ、連れ去られた人々? 帰ってきてないらしいよ。行方不明になった皆は、本当に神隠しにあったように
ちなみになんで、こんな話をし始めたのかって言うと。近頃、狐の仮面をした男が夜に現れては女の子を連れ去ろうとしている話が各地であったから。若い子を連れ去ろうとしているから、狐の嫁盗みって言う地元の昔話を思い出したからしたんだ。
でも、不審者の可能性もあるから若い女の子、学生さんは気をつけてね。
『狐の嫁盗み』
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