解決へ

 藤田さんを見送ったマスターはお皿を洗いながら嬉しそうだ。


「フジちゃん、元気そうで安心したよ」


 その言葉に探偵は、「古い付き合いなんですか」と尋ねる。答えたのは自治会長。


「常連中の常連。彼と話をするときは『秋雲』だよ」


 その言葉にマスターも「雨の日は”客もこないし”と来てくれたんだ」と笑う。

 

「ずっとここの勤務でいいかな。良い喫茶店もあるし」


 巡査部長は空き箱になったバウムクーヘンの箱をつついている。

 そこに探偵が「ところで」と、小さく手を叩いて席につく。


「藤田さんの自転車もアルミ自転車ですよね?」


 探偵の質問に巡査部長は「だからやられたワケで」と顔を上げる。

 その言葉を聞きながら、マスターは手を拭いて探偵の横に座る。


「銀色で茶色の尻当て《サドル》だったね」


 その言葉に疑問の声を出したのは自治会長と巡査部長。


「フジさんのは黒いサドルだよ」

「あの方のは赤いサドルだったはず……」


 お互いに顔を見合わせる2人。

 さらに探偵が一言。


「私が現場近くで見かけた際は、さらに違うアルミ自転車でして――」



 喫茶店『秋雲』にいる一同は思わず黙り込んでしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る