Chapter2 紅蓮悲憤⑤
七年間もの間、放置されていた不忍池は水草が無秩序に繁茂し、腐った蓮と葦が悪臭を放っていた。
「うぇぇ……もうやだー!」たまらず朝希が鼻をつまんで不満を漏らす。
全周およそ二キロメートルをざっと歩き通してみたが、発見できたものはやはりオルタネーターの痕跡である塩の山ばかりであった。
その後、再び五條天神社を見て回り、上野東照宮にも足を向ける。だがここでも主な収穫は無し。あるのはやはりオルタネーターの死骸である塩の山とおそらく地震によるものであろう潰れた社くらいであった。
念の為、東京国立博物館と国立科学博物館の前まで恩賜公園を一周してみたが、やはり目ぼしいものは見つからなかった。
東京文化会館の前まで戻ったあらりで四人の手錠端末のアラームを鳴った。帰投時間がもうすぐであることを伝えていた。
「結局、徒労かぁ」
骨折り損、といったように厚治が深くため息をついて肩をすくめてみせる。
「収穫無しでぶらぶら散歩しただけで終わったな。まあ良いんじゃないか。たまにはこんな日も。なあ?」
そう言って、フェリクスは子供たちの方へ目を向けた。
「今日は何事も無くて良かったです」と笑みを向ける史香と「お散歩楽しかった」と満足げの朝希。
「あ、あの私は……」
玉川はおずおずと訊ねる。自分の存在は一体何なんだという、抗議と困惑があった。
「あぁ、いたのか。アンタ」
「そういやあったな。貴重な情報源」と厚治も今気づいたかのように呟いて、玉川を指差す。
「そ、そんな言い草……」
しょんぼりと肩を落とす玉川だったが、反論の余地は無かった。
自分のパートナーのエフェクターを拉致される程度にすっとろいとはいえ、藤林に遭遇したのだ。事情を聴取するには十分価値がある。
だがまた自衛官、しかも今度はオブジェクターときたものだ。防衛省とのすったもんだが繰り広げられるのは目に見えていた。
「こりゃ司たちは大変だな」と苦笑いで肩をすくめてみせる厚治。
「深山が死にそうになってる面を拝んでおきたいな」けらけらと笑いながら底意地の悪い笑みを浮かべるフェリクス。
そうして四人はJR上野駅の公園口へ足を向けた。
そんな二人の様子を玉川は全く信じられないといった目で睨み据えていた。
「待ってください! 今もエフェクターの子たちがどこかで救助を待っているんですよ。一刻も争う事態じゃないですか。オブジェクターを六人も殺した奴が今もこの近くにいるかもしれないんです。のんびりしている場合じゃないですよ!」
フェリクスと厚治は互いの顔を見合わせ、呆れたように息をついた。
「日暮れももう近い。夜中に封鎖都心で行動することがどれだけ危険なことか、オブジェクターであるお前ならわかってるはずだろ」
指摘する厚治の声音は鋭かった。
電気が全く通っていない封鎖都心の夜は、かつて眠らない街とさえ呼ばれていたかつての大都市の様相は皆無であり、漆黒の闇の中に沈む。ましてやただでさえオルタネーターは視認性が良くない。
「夜間でのオルタネーターとの戦闘行為は、ほとんど自殺と同じようなもんだぞ。救助活動において、お前みたいにミイラ取りがミイラになることが、どれだけ事態を悪化させることか、アンタも自衛官ならわかってることだろうが」
フェリクスの目が細くなり、向ける視線は猜疑のそれへと変わる。
「そういやさ……」
わざとらしく首を傾げ、眉根を寄せて確信に近い疑念を冷たい声音でぶつけた。
「さっきあんた、藤林はエフェクターを保護したいって言ってたよな。随分、藤林に肩を持つよな。俺たちは拉致としか言ってなかったと思うが……」
それに、と疑念を刃のように向けて続ける。
「なんでお前さん、殺されたオブジェクターが六人だって知ってるんだよ……? あ? 言ってみろ。どこで知った?」
うつむいていた玉川の視線が微かに上げられる。だが反駁の言葉は無かった。
空気が一瞬で張り詰めた。命のやりとりを始める寸前の痛いほどの緊張感。
「防衛省と自衛隊側に共有されているオブジェクターの被害者は五人だ。もう一人はつい先日発見されたばかりで、まだそちらさんには報告されてないってウチのボスから聞いてるんだが、なんでお前が知り得ないはずの六人目を知ってるんだ? 知るわけねえよなあ、お前の正体が、藤林凛で無い限り……」
文字通りフェリクスたち四人の目の色が変わっていた。
空気が硬直し拘束具と化したかのように、その場の全員が緊張に身じろぎ一つしない。
やがて、玉川の――否、藤林の瞼が観念したかのように閉じられる。
「三文芝居は終いだ。この大根役者がっ」
フェリクスが吐き捨てると同時に剣を抜く。厚治も背中の大剣〈パルヴァライザー〉を振りかざし、二人は藤林に襲いかかった。
だが先制攻撃の斬撃は藤林の一閃に弾き返される。その手には長杖〈ディフェンダー〉が握られていた。
長杖を振り回し構えながら後方に飛び退り距離を取って、藤林が口の中から何かを吐き出す。地面に吐き捨てられたものは二つの小さな綿の塊だった。藤林の顔が丸顔から写真で見通りの――あるいはそれ以上にやつれたものに変貌する。
見開かれた藤林の双眸がフェリクスと厚治を鋭く睨み据えていた。先程までの弱々しい印象は消え失せ、全身から発せられる殺気で長杖を槍のように構える姿の指先に至るまで、一分の隙も窺えない。
そして、見開かれた双眸はオブジェクターであることを証明するように人外のそれに変貌している。
だが、その虹彩の色が違っていた。毒々しい紫のアメジストではなく、鮮血の紅のルビーの輝きを片目ではなく両目に湛えている。
藤林は地を這うが如く身を低くし、二人に急接近。フェリクスめがけ、鋼の長杖を突き上げる。
眼前にまで迫った長杖の刺突をフェリクスは間一髪のところでショートブレードで弾き返す。
藤林、その身もろとも長杖を翻し、二撃目、三撃目をくりだしていく。
刃と鉄塊がぶつかり合う甲高い金属音に皮膚がびりびり震える。防御している端から、一歩間違えれば頭蓋を砕く一撃が次々と襲いかかってくることに全身が総毛立つ。
「うざってぇ!」
磁場が障壁として展開され、強烈な斥力がフェリクスと藤林を無理やり引き剥がす。斥力の衝撃で藤林は弾き飛ばされるも、難なく受け身を取ってみせる。と同時にサブマシンガン・M9を抜き、銃口をフェリクスと厚治に向けた。
「ばっかやろ!!」
厚治が前に出て、大剣〈パルヴァライザー〉を盾にして銃弾を受け流す。
「そうやって自衛隊の弾を国民様に向けるのが自衛官のやることかよ!!」
厚治の抗議を銃声で塗り潰すかのように、藤林は構わずサブマシンガンのトリガーを引き絞り続けた。無数の銃弾が厚治を襲うが、その全てを厚治は受け流し、捌いて見せる。
いくらレゾナンスによって身体能力が向上し、銃弾を捌き切る動体視力を得ているとしても、このままでは埒が明かない。
フェリクスはもう一度、磁場を障壁として展開する。放たれた鉛玉が磁場によって全て地面に叩き落としてみせる。
サブマシンガンの銃火が止む。カタタタ、という乾いた音が弾切れを知らせた。
ほぼ反射的に好機と判断した二人は、すぐさま手にした刃を振りかざし藤林へ突進する。
先にフェリクスが二刀で斬りかかった。藤林も長杖で斬撃を受ける。
パワーよりも手数を重視した連撃は、藤林に決してその刃は届くことはなかった。
それで構わなかった。藤林の背後、高く跳躍し大剣を振り上げた厚治の姿があった。こちらが本命だった。
朝希によって厚治にもたらされるレゾナンスエフェクト〈超強化(ハイレゾナンス)〉。レゾナンス状態になることで強化される身体能力向上の効果を更に増幅するエフェクトである。特殊性は何も無いシンプルなエフェクトであるが、それ故に使い所を選ばずに済む。
「ずおりゃぁ!」
通常のレゾナンスよりも瞬間的に数倍に跳ね上がった筋力による重い斬撃は、だが空を切り、アスファルトを粉微塵に砕くだけで終わる。寸前で藤林が回避してみせたのだ。
立ち煙る土埃の中、再び二人と一人が互いに睨み合う形になった。
「さすがに六人殺してきただけあるな、くそったれ」
毒づくフェリクス。藤林に殺害された六人のオブジェクターの中には二人と同じレッドラベルも存在していた。十中八九騙し討ちだろうが、それでも藤林が手練であることは変わりはない。ましてや二人の猛攻を捌き切ってみせたのだ。
「これ、傍から見たらとんでもないよな。刃物持った大の男二人が女一人に寄ってたかって……」そうこぼしながら厚治が大剣を構える。
「無駄口叩いてる場合か。あいつ、俺たちをマジで殺す気だぞ」言いながらフェリクスも双剣を逆手に構え直す。
自衛官だというだけあって、基礎体力も身体能力も体系的に鍛え上げられているのがわかる。何よりこの女は戦い慣れていた。
それもそうだ。これまでに六人ものオブジェクターを屠ってきたのだ。一つ一つの攻撃に鋭さがあり、ためらいは微塵も無い。単純に、〝殺し慣れてる〟のだ。
「なあところで、藤林のエフェクターを見かけないんだが……」
息を整えながら厚治が呟く。
「いや待て。あいつの眼の色、おかしくないか。というか両眼とも変化してなかったか? ありゃ一体何だ……?」
レゾナンスによって強化された身体能力は視力も向上させる。多少距離があれど、藤林がレゾナンス状態になっていることは確認できる。だが自分たちのように片眼だけではなく両眼に、色も紫ではなく血の色の紅だった。
厚治がそう疑問を口にした途端、フェリクスと厚治の二人の目の前の空間が歪み始めた。
「なっ……!」
疑問と驚きを口にするよりも前に、歪んだ空間がその反動を解放するように炸裂する。爆熱を伴った紅蓮が広がり、熱風と衝撃波が二人に襲いかかる。
目の前で起きた不可思議な現象を認識するよりも早く、二人は反射的に飛び退り空中で身を縮こませた。
爆音が轟き、二人が爆熱に晒される。衝撃波によって駅の自動改札を超えて吹き飛ばされた。だが被害面積を最小限に留めていたため、床に叩きつけられながらもすぐに受け身を取って立ち上がった。衝撃波で粉々にされた精算所の窓ガラスが足元でじゃりじゃりと音を鳴らす。
「これが藤林のレゾナンスエフェクトか……!」
舞い上がった塩と土埃にまみれながら、フェリクスは藤林を睨め据える。
周囲の空気を焼き払い、熱気が未だに立ち込める。肌に叩きつけられた衝撃波の感覚が剥がれない。
さしずめ〈爆炎(エクスプロード)〉といったところか。フェリクスは胸の内でそう定義する。
フェリクスたちに向けて藤林が手を掲げる。自動改札を飛び越えて二人に駆け寄る史香と朝希の姿を見て藤林は歯噛みし、その手を止めた。
「ガキどもには手を出せないみたいだな……!」
躊躇した藤林を見て、フェリクスが不敵に口の端を釣り上げる。とはいえ史香たちを盾にするような外道じみた行いをするつもりなど毛頭無い。だが躊躇していることから、藤林は全力を出せないと推測できた。
「フェリクスさん!!」
「アツジっ!! 大丈夫!?」
「大丈夫だ。それよりも二人とも下がってろ……!」
朝希と史香の身を挺するように、フェリクスと厚治が二人の前を剣で遮る。
「なんでこんなことをする!? これが自衛官のやることかよ!!」
「……もう私は自衛官なんかじゃない。自衛官としてこの国を護る気なんかもう毛頭無い。子供を戦わせるこの国に自衛官として護る価値なんか、無い……!」
フェリクスの怒気の問いに、藤林は冷たく言い放つ。
「お前、何言って……」とフェリクスは疑念を露わにしたが、一拍置いて「エフェクターを拉致して回ってたのは、それが理由かよ……」と歯噛みした。
「その子たちを引き渡せ。そうすれば命だけは見逃してやる」
向けられた殺意に微塵とも動じず、藤林が言葉を返した。
「随分ご大層な犯行動機だな。だがお前のやり方も認めるわけにはいかねえ」
アメジスト色に輝く右眼を向け、厚治が凛然と言い放つ。
「ならどうして、その子たちを今すぐ両親の元へ帰してあげないの」
藤林の声が、妙にしん、と静かに聞こえ、だが重く鋭くフェリクスの胸を抉って沈み込んでいく。藤林の言葉に呼応するようにサブリミナルのような幻影と幻聴がフェリクスを押し包み、現実から意識を切り離そうとし、苛んでくる。
――どうして? どうしてお兄ちゃんはアタシを逃してくれなかったの? 本当はレゾナンスとエフェクトで強くなったことを愉しんでいたんじゃないの?
違う。そんなことはありえない。俺だって、戦うことは怖かった。
――だったらどうして、アタシを家に帰すのに、手段なんか選んだの?
違う。手段なんか選んでも、結局は手詰まりになると思ったから。
――違わない。それは結局、お兄ちゃんがアタシよりも自分の方が大切だったんじゃないの
「違う! だってこれしか方法が無いじゃないか!」
自分を蔑む幻影の蜜李と藤林の姿が重なったまま、フェリクスは怒声で返す。
「その子たちのためなら、どんな手段も取れるのが大人のはずでしょう。そうやってこんな薄汚れた国と社会に従わされることを良しとして、結局はその子たちを使い潰すのね」
「フェリクスさんたちはそんな人なんかじゃありません!!」
だが史香の強い声音に幻影は霧散し、フェリクスの意識は現実に引き戻された。
「誰があなたについていくものですか!!」
「ばーかばーか!! アツジ、フェーリャ、あんなのさっさとぶっ倒しちゃってよ!!」
史香と朝希の拒絶の言葉に藤林は微かに眉根を寄せた。幻影の残滓を払うようにフェリクスは頭を振り、アメジスト色の人外の眼睛を藤林に向けた。
「オーライ。お嬢さんがたのリクエストだ。やるぜ、フェーリャ」
大剣の切っ先を改めて藤林に向けた厚治の声に、フェリクスは両腰に釣っている二振りのショートブレード〈ボーンバイター〉を抜いて応じた。
二人は脇の下のショルダーホルスターに収めたグロック26の重みを確かめるが、抜く気にはなれなかった。既に接近戦に持ち込まれている間合いでは、銃を抜いて撃つ前に長杖で脳天をかち割られるのがオチだろう。
藤林のあのエフェクトはいくら加減をしていようと下手をすれば、背後の史香と朝希にも威力が及ぶ。レゾナンスによる身体強化が施されているとはいえ、まともに喰らえばひとたまりも無い。距離を取るか、それとも接近するか。
二人は一端、距離を取ることにした。フェリクスは史香と朝希を両脇に抱え上げると精算所を右目に入谷改札方面へ向けて渡り廊下を脱兎のごとく駆け出す。
「あんなにかっこよくキメて、なんで逃げてんの!?」厚治の左脇の中で朝希が抗議の声を上げるが、「ちょっと黙ってろ!」とフェリクスは足を速めた。
「逃がさない!」
藤林の鋭い声と共に背後で空間が歪む感覚。そして爆発と熱を背後に感じたが、それほど強烈なものではなかった。おそらくあの透明の爆弾を設置できる射程(レンジ)はそう広くは無い。
藤林は苛立ちとともに中空に埋め尽くすようにいくつもの見えない爆弾を設置し、次々に爆発させていく。
次々と咲き誇る爆熱の紅蓮。衝撃波と轟音、そして黒煙が上野駅の構内に満ちる。その爆発の黒煙を突っ切って藤林が追跡する。フェリクスたちの背中を視界に捉えた。だが――
――三人? もう一人は……?
気づくのが遅かった。渡り廊下に立ち並ぶコインロッカーの陰に身を潜めていた厚治が眼前に現れた。
「くたばれ、オラァ!」
その場に満ちた黒煙を振り払うほどの厚治の大剣〈パルヴァライザー〉の斬撃。藤林は文字通り間一髪でその一撃を回避する。空を切った大剣はその名の通り、コインロッカーを粉砕した。
回避動作から切り返す形で藤林が長杖を厚治に突き立てる。まともに喰らえば骨をも砕く槍の如き突撃。だが厚治は返す刀で弾き返してみせた。
「作戦だったのね! でも失敗してるじゃない!」
「やっかましい! 史香! 朝希と一緒に下がってろ!」
史香と朝希を安全な位置に置いて、フェリクスが踵を返した。
「〈レールガン〉!!」
藤林めがけ、弾丸の如くフェリクスが飛翔する。加速の乗った二振りのショートブレードによる斬撃。藤林も長杖で受けて凌ぎ、フェリクスごと弾き返してみせた。が、その威力を殺しきれなかった。長杖を手放すことはなかったものの、体勢を崩し胴が晒される。
その致命的な隙を見逃す厚治ではなかった。一文字切りが藤林の胴目掛け振るわれる。
完全に捉えた。そのはずだった。
藤林は咄嗟の判断で体勢が崩れるがままに任せて、仰向けに倒れ込んだ。厚治の斬撃が胸の上で空を切った。
だが天井に顔を向けた藤林が微かに驚く。
靴底と天井に磁力を付与し、蝙蝠のように天井に張り付いているフェリクスの姿があった。引力を斥力に切り替え、天井を蹴ってさらに追撃する。
藤林は床を蹴り、鋭く転がってこれを回避する。追い打ちに厚治が大剣の重い一撃を振り下ろす。藤林はもう一度、今度は床を蹴ってこれを回避。体を跳ね起こすと同時に鋭く蹴る。
鉄板入りの安全靴のキックを剣で受ける厚治。
その隙を逃さなかった。藤林がもう片方の足で後ろ回し蹴りを放つ。ガラ空きの厚治の脇腹に藤林の蹴りが突き刺さった。
「ぐあっ……!」
蹴り飛ばされ、厚治はコインロッカーに背中から叩きつけられた。けたたましい金属音と共にコインロッカーがひしゃげる。
「てめえっ!」
フェリクスが二刀をを振るう。だが疲労とダメージが蓄積しつつある攻撃は長杖に弾かれて――
「しまっ」
致命的な隙を晒したフェリクス。藤林が長杖をそのみぞおちに突き刺した。肺と臓腑がひっくり返るような感覚にフェリクスの目の前に火花が散った。藤林は長杖でフェリクスの肢体を持ち上げると、厚治とは正反対の方へ投げ飛ばした。
呼吸ができずその場でうずくまって咳き込み、せり上がってきた胃酸を吐き捨てる。涙で塞がる視界を拭いながら立ち上がろうとするが、酸素不足と痛みで全身が痺れて言うことを聞いてくれない。
ふと、脇の下に違和感ができた。床に叩きつけれた衝撃でハンドガン・グロック26を収納していたショルダーホルスターが開いていた。
その中身は床を滑って、史香の足元で止まった。
絶対的な暴力をもたらす黒い鉄塊を目の前にして、史香の中で衝動が迸る。
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