第3話?
日常の中で大活躍とまではいかないものの美顔ローラーは真価を発揮していた! 毎日自分の素肌に当てているとなぜか自分の顔が日に日に可愛くなっているように感じる、不思議。女神様の通販だから女神様のご尊顔に近付ける効能があったりして! いや単に10歳と言う未成熟な身体から一歩づつ大人に近付いて行っているものなのだと思う、けれどおかしい、お世辞にも俺の母ウィーナ・ルドガーの顔は可愛いとは言えないご尊顔で、日々の生活を送っていらっしゃる、なぜあの顔でああも社交界だのに出席しようと思えるのか私には不思議で不思議でたまらない、この世界にきてはや10年経つのだがまだまだ分からないことだらけだ、世界は謎に満ち溢れているね!
まぁ下級貴族たるものそういった社交界の場には積極的に参加し、仕える意志を全面的に出していかなければならないのかもしれない、こっちの世界でも社畜じみたしきたりがあるのかと俺はうんざりする。
まてよ? 25歳になったナンシーによく顔が似てきてはいないか? ナンシーは上流貴族と浮気ができるほどの顔面上級者だ、いやG級と言ってもいいね、ちなみに胸は本当にG。ともあれ顔が整っていなければ話にすらなるまい、まぁだからあれほど上から目線でベットに呼ばれることはないだろうなんて言えるわけだ、まぁ結果追い出されてしまったわけだが。
しかし、しかしだ、この顔ナンシーそっくり・・・と言うより超えてきてないか?・・・美形の終着点のような顔をしているナンシーを思い出し、超えた? 終着点を? それってこの国に敵なしじゃね?
待て待て待て、私早まってはいけない、私は俺であって私なのだ。心にいつも一輪の花ではなく、闘志を持たねばならない。よって? ベットの上で男性に抱かれるようなことをしてはならない、しかし見てみろ、この顔だ・・・まずい、一歩外に出ればたちまち野に放たれたかのような猛獣が雄たけびを上げ私に襲い掛かってくることも・・・
ノックの音が部屋に響き渡り「お嬢様よろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよナンシー」
「失礼いたします」
「ナンシーあなた15の時に私を産んだの?」
ナンシーは突然の出来事に腰を抜かした、これほどまでに綺麗な腰の抜かし方はないだろう、世が世ならオリンピックにでさえ出られるのではなかろうか、まぁあと、2000年後ぐらいにはそういったバカげた競技があってもだめか。
「と、突然何を言い出すのですかお嬢様!」
「いや、お母さまだって今はまだ30ぐらいでしょう? それなのに見てこの顔! ナンシーに似ているというか、それ以上と言うか・・・なんか私可愛くなってきているような気がするのだけど気がするだけなのかしら?」
「そ、そうでございますね、まぁ子供の成長と言うものは目覚ましいものがありますゆえ、それぐらいの成長はあって当然かと、それに周りにいる人に左右されるとも聞いたこともありますし、まぁ世継ぎを産む使命がエレット様にはありますし、可愛くなることはいいことなのでは?」
その途端エレットはナンシーにしがみつき「怖いこと言わないで!」
いやナンシーからすれば今のこの状況のほうが怖かっただろうか、今晩ベットの上でナンシーがおもらししないことを祈るばかりだ。
「ど、どうされたのですか、一人っ子で長女であらせられるお嬢様には最初から定められていたことではございませんか、何をいまさら怖がっているのですか?・・・さては・・・旦那様以外の殿方と会う機会がないばっかりに、男性恐怖症にでもなられておいでなのですか?」
「ち、ち、違うわ! ねぇナンシー今の私って一般的に見てどう? そのか、可愛いのかしら?」
「ま、まぁ小さいころから見ていた私のひいきめ無しでも十二分にかわいいかと存じ上げますが?」
や、やっぱりだ、これはまずいことになった、このまま俺が男に会いでもしてみろ、今まで静寂を貫いてきた俺のベットの上はディスコよりもヘビィメタルよりもうるさくも激しくも艶やかな夜を迎えるに違いないそうなれば、というかそれ以上に! 私として俺として! 童貞の前に処女を捨てることになっちまう! これは国家の危機! それだけは避けねばならん! 元祖悪役だか悪徳だかの令嬢もこれを回避するために色々とあの手この手を尽くしてきたんじゃないのか! まぁ俺の場合は特殊が過ぎるってもんだが、どうにかして、この現状を!
「分かりました、お嬢様」
「お!ナンシー分かってくれたのね!」
「ええ、お嬢様が随分拗らせていらっしゃるということが、男性に慣れる訓練も必要かと思われますので、旦那様に頼んで執事も雇うことにいたしましょうか、最近ではこの領地も質の良い麦が取れて資金繰りもいいとおっしゃっていましたので」
それから数日後本当に執事が我が家にやってきた。
「は、初めまして私、この度ルドガー家に仕えさせていただくことになりました、執事のダグと申します、今日からよろしくお願いします」
父の書斎でこの家の住人全員が集まり挨拶が行われた、ダグと言う名前から屈強な男が連想されるかもしれないがダグは細身でどちらかと言えばインテリ系と言った方がいいだろうがメガネはしていない、頭の回転が速そうな男だった。
そして俺に男を慣れさせるという名目上、一週間に一度側使いはダグの仕事となった。
「お、お嬢様! 男性のいる前でそのような格好は!」
ダグと言う存在は把握しているつもりだ、だが! ダグが男性であり、俺が女性であるという情報が欠如していた!
女性の身体を見ても俺のあそこについていたものが今は存在しないので何とも思わなかった。
そして俺は元、男性なわけで異性の前で服を脱ごうがどうと言うことはないと、思っていたがダグはまだまだ年端もいかない少年で、何なら領地の少しキレる少年を側使いにしただけのようなことを言っていたような気もする、そうとなれば女性への耐性がないのも頷ける。
「お嬢様! 男性の前で裸になるのはおやめください! 外に出て服を脱ぐことの重大さは分かりますよね!」
ナンシーが浴室に駆けつけ、俺にそんなことを言い放った。
俺は野生動物か何かか!とツッコミを入れたくなったが今悪いのは俺な訳で。
「狼どもに食われるわね」
「承知の上なら謹んでください!」
「ナンシーも夜のベットの上で裸になるのは謹んだ方が良かったんじゃないの?」
「お嬢様今はそんな話をしているのではございません!」
手厳しい。俺はナンシーを連れて浴室に入る、最初から入浴は今まで通りナンシーで良かったのだ、下手に男性に任せるからこんなことになるのだと心の中で声をあげていると。
「お嬢様の胸中の男性という価値観がよく分かりませんね、危険と言うことは知っていながらも、平気であのようなことをやってのける、男性はお父様だけではございません、いくらお父様のことが好きだからと言っても、それ以外の男性はノミ虫以下ではないことは理解していらっしゃいますよね?」
そんなことは分かってはいるが、転生前の俺からしてみればダグは年端もいかないただの少年だ、意識しろと言う方が無理というもので毛も生えそろっていなければ、皮すらむけているのかもどうか怪しい、まぁ転生前の俺は被ったままだったが・・・言わせんな恥ずかしい!
「男性に慣れるいい機会です、ダグの前で女性とは何たるかを学んでいきましょう!」
そう高らかに宣言したナンシーの胸が本当の意味で張られていたので俺は唯々眼福だった。
お風呂を後にした俺とナンシーはすぐさまダグの元へと向かった、とりあえず先ほどの行いを謝る? 俺が? 職務放棄したのはダグの方ではないのか? という疑問をおくびにも出さずダグを探しているとダグは父であるアイクの部屋にいた。
事の経緯をダグから聞いていたであろうアイクが怪訝な目でこちらを見ている、そんな顔されたって仲間には入れてあげないよん! っと今はそんなときではないらしい。
「エレット、話はダグから聞いた、なんでも裸体を晒したのだとか・・・」
「はいお父様、私男性と言うものを甘く見ていました、ナンシーが言うには男は全て金だと思いなさいと、お金があるからと言ってすぐさま飛び込んではいけないと、罠の可能性もあるからしっかり吟味してから飛びつかなければと」
「ちょ、お嬢様!?」
「エレット! 今は冗談を言っている場合ではない! ナンシーがそんなことを言うわけなかろう! ナンシーが冗談を言うのはベットの上だけと相場が決まっておろう!」
「奥様―! 奥様ー! 旦那様がー!」
ナンシーは自分の背後にある扉を開き、大声で叫んだ。
「じょ、冗談だ・・・エレット、ダグに気を許しているのはいいがまだここにきて一日目だ、節度のある行動をしなければ、ここでは働きにくかろう、ダグには今後この領地運営の補佐役に徹して貰おうかとも思っている、まぁどうなるかは分からんがエレットの婚約者にもどうかと少しは考えている」
補佐役から突然俺の婚約者だって!? 話が一足飛びすぎやしないか!? いやでもこういうのは普通貴族同士の政略結婚とかそういうのが普通なんじゃないのか? もしかしたらこんな片田舎の麦畑しかないような地に嫁いできてくれるような者はいないとふんで、ダグを婚約者にと言っているのかもしれない、痛み入るぜパパン・・・っておい! 他人事のようだがこれは俺の人生にかかわる大事な話だ! 騙されるところだったぜ危ない危ない。
「お、お父様、もう少しダグのことを考えてみてはいかがでしょうか? 突然連れて来られた家の娘と突然婚約者などと言われても、戸惑うばかりでしょうし、それにまだ相手のことを何1つとして存じ上げていませんし」
「そうか、今までこういった話すらなかったから分からないだろうが、貴族に生まれた以上婚約者はその家の当主が決めるものなのだぞ、エレットよ」
そ、そんな・・・薄々感づいてはいた、婚約者を決めるのは自分ではないと・・・
覚悟を決める時がついにきたのかも知れない。
それからと言うもの美顔ローラーかけ、ダンス、素振りに加え、実戦訓練とも言えようダグとのエレット男慣れ作戦が始まった。
「ダグは普段どんな事をしているのかしら?」
「はい、我が領地ではご存知の通り畑をグループで分割し、一人で複数の畑を切り盛りするのではなく、複数人で複数の畑を切り盛りする、他地方では法人化なる制度を取っておりまして、その人員の分配を主にやらせて頂いております、怪我や病気になり、著しく一つの家庭に負担を掛けることなく、この領地一丸となって上納出来る様に尽力するのが私の役目でございます!」
「ダグ様・・・お嬢様は決してそう言ったことを聞いているわけでは無くてですね・・・普段暇な時や、家での生活風景をですね」
「し、失礼しました! お嬢様の側使いをしていない時には人員の采配や、相談連絡、資金面でのやり取り、収穫規模、上納時期の把握で普段大忙しで、あまり自分に割ける時間が無いもので、それ意外と言われると思い浮かばず・・・」
「そう・・・ダグって凄いね!」
俺はこの時心底感心していた、今の俺と年齢は変わらず、きっと人生1回目であろう少年が我が領地のために一生懸命に仕事をしているのだと言う事実に。
思わず笑顔が溢れてしまった。
そんな顔を見て夕日に照らされたダグの顔も少し赤くなっているのが見てとれた。
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