第27話
由香里の手を押さえ、その親指を掌の方へ曲げてやり、残りの四指をその上に折り被させた。手首をしをりの方へ向けさせ、抽送の仕草をさせた。
由香里はすぐにそのサインを理解したようだ。
しをりの股間に向き直り、白濁した汚れを手首全体に擦り付けた。それから寄せた四本の指を先端に親指を内にして砲弾のような形にすぼめた手を、弛みきった開口部に埋め込んでいった。だが今までとはうってかわった慎重ぶりだった。
しをりも事態を把握したらしく、心持ち緊張しているようだ。握っていた由香里の乳房も放し、両手の指を絡めて口に押し当て、じっとしている。刺激も与えていないのに、臀部が打擲されたように鮮やかに紅潮していた。
「リラックス。リラックス」
幸雄はしをりの尻をピチャピチャ叩き、それからそこをじっくりと揉みあげてやった。触るたびにそこに幸雄の手形が残った。
ゆっくりと由香里の手が中に呑み取られていく。
第二関節が入った。指の付け根が通ればあとは楽だ。それはゆるゆると手首近くまで入り込んでいった。白濁した澱がまるで腕輪のように手首の周りに付着する。
由香里の動きが急に止まった。目がじっと自分の消えた手首を凝視している。どうやら動かすべきか否か逡巡しているようだ。
幸雄は由香里の腕をとって、ゆっくり動かしてやった。するとほっとしたようにそのリズムで由香里は手を動かし始めた。
手首がしをりの体内を出入りする様子を、幸雄は食い入るように眺めた。
彼にとってもパプニングだった。幸雄もフィストファックはしたことがなかった。ポルノ以外では目にしたこともなかった。それが思いつきでそうさせたのだが、大きな男の手より華奢な女の手の方が無難だろうととっさに判断はしていた。
幸雄の知る限りでは、みどりが一番楽にフィストを受け入れられそうだ。日本人ばなれした大きな体格、骨盤の張り出し。一方グラマーとはいえ、日本人の体型といえるしをりがフィストを受け入れられるとは想像すらしなかった。しをりに出来るということは、しをりとみどりの中間的な体型の由香里にも可能なのか?
だが、今回は勢いでやってしまったが、フィストを習慣にすることは感心しない。男だから、フィストを受けた女性が体内でどんな刺激を感じるものなのかは知る由もないが、自然に反した行為には思える。
何故ならセックスは勝れてメンタルな営みでもあるから。特に女性には。男なら、ただ欲望の赴くままに振る舞って発散し、それで何も後には曳かない。女性でもセックスを単に肉欲の解消と捉える向きもあるだろう。だがどんな場合でも、きっと女性は心が体に引きずられるに違いない。多分そのリスクの面を女性は〝傷つく〟と表現するのだ。女性は男性よりもずっと心と体が緊密にできているらしい。心が荒んで行けば、やがて精神も支障を来しそうだ。
一方で、構造的に被虐的性向にある女性は、一般的に男が女を〝モノ〟扱いすることに対し、かなり寛容であるように思える。男性が考える以上に、女性は体内に異物を挿入する行為に昂奮するものらしい。聞いただけ、見ただけでも昂揚するようだ。そこに今回のような行為が許される下地があった。
幸雄自身フィストがディルドーとどう違うのか、うまく説明できない。ただ、それが不自然だと思うからだとしか言いようがない。不自然が常態になれば、女性の締め上げる力も衰えるのではないかという男の身勝手な心配もある。
とにかく、しをりもゆっくり尻を動かし始めた。二人の女はほぼ同じ姿勢で、連結した貨車のように同じリズムで動きだした。
それまで心配してじっと見詰めていた幸雄はふいに我にかえった。
途端強い衝動を感じ、四つん這いになっている由香里に後から突き入った。
しをりの尻、由香里の拳、幸雄の腰――動力源が三つになった。それらは互いに連動し、時に反発しあいながら、互いに互いの興奮を高めていった。
突然幸雄は我慢出来なくなった。
「おおう!」
由香里の尻を強く引き寄せた。呼応して由香里も腰を強く後に繰り出した。深く挿入して、それ以上進むことができなくなり、荒々しく腰をくねらせた。
激しい放出が始まった。
「あああ……」
天を仰いだ由香里の、しをりに埋めた腕の動きが止まった。反対に猛然と腰を動かし、自分も夫と一緒に達しようとするのだった。
彼女が達しえたのかどうか、幸雄には分からない。彼はただ放出し続けた。自分でも近来にない量だと感じた。それだけフィストの刺激が強かったのだ。
一瞬の激しい昂揚が過ぎると、幸雄は体から急速に力が抜けていった。
夫の体の脱力を確認すると、由香里は再び自分の拳に専念し始めた。
「ああっ! ああ! ああ!」
首を垂れてじっとしていたしをりが首を強く振り上げ、いきなり高い叫びをあげた。どうやら達したようだ。待ちぼうけをくわされた身には、いきなり再開された刺激が強すぎて、一気に達したようだ。フィストにまだ不安を感じていた幸雄はほっとした。達した後、幸雄は由香里の体を撫でながら、しばらく馬鹿のようにつられて揺れていたが、それを潮にそっと撤退した。
それを合図に由香里も拳を抜きとり始めた。
ゆっくりと慎重に抜いていく。
拳が埋っていたあとは、一瞬ぽっかりと空洞が開き、奥深くが覗いたが、しをりがすぐに動きだしたので、瞬間垣間見えただけだった。
幸雄はベッドに虚脱した体を横たえた。
しをりが這い寄ってきて、幸雄の濡れた道具をしゃぶった。先端からはまだ残滓の液が湧き出ている。
荒い息をつきながら、由香里が傍らに倒れ込み、脚を大きく開いた。体内から幸雄の体液が溢れ出始めていた。彼女はしをりの手首をとり、そこへ導いた。今度はしをりにフィストさせようというのか。
しをりは幸雄を離れ、由香里の股間に屈んだ。幸雄は上体を起こして、女達の行為を眺めた。
妻の、白濁した幸雄の精をどろりと垂れこぼす肉口は既に充分過ぎるほど潤い、酸欠の魚の口のようにひくひく開閉している。流れ落ちてくる液を溜めた菊座はこちらも生きているように飛び出たり窪んだりしている。
すぐに半分近くが埋まり込んだ。由香里は目を見開き、大きく口を動かしたが、言葉にはならなかった。
眺めていた幸雄は股間のものがまた強張り始めた。
すぐにしをりの拳は何の抵抗もなく由香里の内側に姿を消した。
しをりはベッドの上に片肘と片膝をつき体を持ち上げている。片足はベッドの下の床に残したままだ。
幸雄はベッドを降りると、狙いもつけず後からしをりに侵入した。
いきなりだったので、しをりは竦み上がった。
構わず幸雄は激しく突きあげた。しをりの体はとっくに仕上がっているので、気遣いは不要だった。
しをりの姿勢のせいで、彼の先端が味わう刺激がすこし変わっている。しをりも同様に感じているだろうか。
とにかく、しをりはすぐに狂おしく応戦しだした。幸雄の腰の動きに合わせて迎え撃ち、深く埋った位置で臀部を振って、捏ね回した。猥褻な尻の動きだった。妙な姿勢でこれだけ動けるとは、相当に体が柔らかいのだ。その間フィストした手は留守になっていたが、ひとしきり捏ねて軽いエクスタシーを得ると、また意識をそちらに振り向けた。
無毛の、ぷっくりした真っ白な秘所を、これも染みひとつないしをりの腕が抉っている。摩擦で早くも幸雄の精液が白濁し、圧迫されて澱になり、手首を斑模様に汚している。しをりは埋まった手首近くに顔を寄せ、長い舌の先で由香里の尖った肉芽を転がし始めた。
それを眺めながら、幸雄はまた一層激しく責め立てた。
強く尻を掴まれて身動きできなくなったしをりはされるがままになったが、衝撃は手首から由香里に伝わり、彼女の豊満な乳房が揺さぶられた桶の水のように踊り狂い、ひしゃげた。
「……!」
声にならない喘ぎを全身で表して、しをりがぶるぶると悶えだした。中で幸雄を締めあげる力が一段と増した。
さっき果てたばかりの幸雄の道具は盤石のコンディションには回復してはいない。 だがしをり本人も意識していない彼女の内部の造形の妙が幸雄を容赦なくいたぶっていた。圧され、潰され、磨りあげられて、幸雄はまたすぐに臨界に達してしまった。
観念した幸雄は逃れるかわりに、柄まで通れと突き入れた。
「おおうっ!」
すぐに放出が始まった。
「あんんん……!」
それを感じて、しをりが小刻みに全身を痙攣させた。肌が粟だっている。
「ん~ん……!」
幸雄は喉を鳴らした。達しながら何度も深く突き入れ、精を注ぎ入れた。
幸雄が身動きしなくなると、しをりは由香里から拳を抜き取りにかかった。
男性の液と女性の液に濡れ光る拳が現れた。
幸雄もしをりから離れた。
しをりは幸雄に向き直ると、濡れた手でまだ先端から男の液を吐き出している彼のものを握り、しゃぶりだした。
自由になった由香里がしをりの片脚を掬い上げた。今精を注がれたばかりの場所に唇を押し充てた。
液の塊が上唇に落ち、口の傍らを伝って零れた。
ずずず……。流れ出る液を吸い取る湿った音がたった。
「んんん……!」
しをりは幸雄のものを手離した。自分を刺激するように両手で腹部を下から上に擦り上げ、薄目を開いた状態になって乳房を掴み、喘いだ。
それから向きを変え、今自分が拳を容れていた由香里のその場所に、顔を埋めた。
ずるずる……。
そこからも湿った音がたった。
二人の女は分泌液で顔を汚しながら、互いの体内に入った幸雄の精を啜りあげ、飲んだ。
最後に互いの唇を貪り、口中の体液を混合しあった。幸雄もそこに顔を寄せ、二つの唇から自分の体内から出た液を啜った。
それから三人はようやく互いの体を離れ、横になった。真ん中が幸雄だった。
女二人は荒い息を弾ませている。隣のしをりの乳房が盛んに上下していた。乳首がまだ勃っている。由香里を見遣った。由香里は腹を波立たせていた。彼女の乳首も勃っていた。一段落したが、昂りは容易に鎮まらないようだ。
そのうち、幸雄の体越し、女達はどちらからともなくまた体を寄せあい、接吻し始めた。初めはちょんちょんと唇を軽く触れあわせ、微笑みあっていたのが、次第にディープキスになった。
鼻や喉の奥から苦し気な喘ぎが漏れ始めた。すぐに脚と脚を絡ませあい、互いの充血した襞をまさぐりだした。
幸雄のものにもせわしく手が伸びてきたが、それはもうひび割れた古ホースよりも役立たずだった。やがて手は伸びてこなくなった。女達は不甲斐ない男を見限り、自分達だけで楽しむことにしたようだった。由香里が幸雄を跨いで、しをりの反対側にいった。
女達の飽くなき性欲に驚嘆しながら、衰えて自然に煩悩から解放された老僧のように、幸雄は目を瞑った。
すると途端にコトリと眠りに落ちてしまった。
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