第二十三話 実践開始

 三日後――


 俺達はようやくニ十階層に着いた。


「ここからはきちんと連携して倒しましょう。一先ず前衛がディール、バール、シャノン、バルザック。後衛を私とユートがやる感じで」


「そうだな」


 俺達はそれぞれ前衛と後衛に分かれた。

 前衛はディールとバルザックが盾役を務め、バールとシャノンが攻撃役を務める。

 後衛は、フェリル様が魔法で援護し、俺は味方を回復しつつ、可能であれば魔法で援護するといった感じだ。

 連係モードになってから最初に現れたのはLV.50のロックコング六体だ。


「はあっ!」


 ディールとバルザックが近づいてくるロックコングの攻撃を受けたり攻撃したりすることで、注意を引きつつ足止めをした。

 その隙にバールとシャノンがロックコングの顔や関節部分を狙って攻撃した。

 そして、あっという間に六体のロックコングを倒してしまった。


「まだ後衛は必要なさそうだな」


「そうね。ただ、連戦すれば疲労は溜まっていくから、いずれ必要とされる時が来るわ」


「そうだな」


 フェリル様の言葉に俺は頷いた。


「ねぇ。今の連係は客観的に見てどうだった?」

 シャノンが俺達にそう問いかけてきた。


「パーティーでの戦いの経験は無いに等しいから、悪いが俺から言えることは特にないな」


 俺は残念そうな顔をすると、そう言った。


「……個々の戦闘力が高いから、いい連係が取れているように見えたって感じがするわね。みんな他人の動きに合わせることを意識しすぎているせいで、力を出し切ることが出来ていないんだと思う。ちゃんと役割分担しているんだし、他人のことは信用して、自分のことに集中するように心がけた方が良いわ」


 フェリル様。よく見てるんだな。

 俺にはそんなことさっぱり分からなかったよ。

 的確な助言を与えているその姿は、まさしく王族って感じがして頼もしいな。


「やっぱりそうよね。これは何度も戦って、少しずつ慣らしていくものだから、とにかく戦いましょう」


 こうして俺たちの連係力アップの特訓が始まった。


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 二十五階層 フロアボス


 広めの部屋の中央にいたのは、蛇のしっぽを持ち、わしのような翼をはやしたライオンだった。

 見たことのない魔物なので、一応〈鑑定〉を使っておこう。

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 名前 キマイラ LV.60

 体力 9800/9800

 魔力 9700/9700

 攻撃 10800

 防護 9700

 俊敏性 9800

 魔法

 ・火属性

 弱点

 ・土属性

 複数の生物の合成体。強さは核となった魔物の強さに比例する。

 ー--------------


「キマイラか……」


 俺はそいう呟いた。


「ガァアア!!」

 キマイラは雄たけびを上げると、翼を羽ばたかせて上へ飛んだ。


「〈氷槍アイスランス〉!」


 即座にフェリル様がキマイラに向かって魔法を放った。


「ガアアアア!!」


 だが、炎によって相殺されてしまう。


「〈雷速砲サンダーカノン〉!」


 俺は炎が消えたタイミングで〈雷速砲サンダーカノン〉を放った。


「ガアアアァ!!」


 〈雷速砲サンダーカノン〉はキマイラの右羽と右後ろ脚を消し飛ばした。

 右羽を失ったことで飛べなくなったキマイラはそのまま地面に落下した。


「はあっ!」


 弱ったキマイラを前衛の四人が「攻撃が届かない上空から一方的に狙おうとしやがって!」とでも言いたげな顔をしながら集団リンチの刑に処して、撃破した。


「ん~と……あ、ミスリルドロップしてる」


 シャノンがキマイラがいた場所に落ちていた白金の金属を両手で持つと、そう言った。


「はい。パース」


 シャノンが俺にミスリルの塊を投げた。


「ほーい」


 俺はミスリルを受け取ると、〈アイテムボックス〉に入れた。

 その後、俺達は部屋の奥に出来た扉を開き、先へ進んだ。

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