第二十二話 三歩で三つの罠

「みんな準備できたね。それでは行きましょう」


 朝食を食べ終え、行く準備を整えた俺たちは、七階層に下りた。


「……スライムか」


 七階層に下りて、最初に出会った魔物は数体のスライムだった。だが、体は紫色で、大きさは五十センチ程だった。

 見たことのないスライムなので、一応〈鑑定〉を使っておこう。


 ー--------------

 名前 ポイズンスライム LV.15

 体力 1600/1600

 魔力 0/0

 攻撃 400

 防護 1500

 俊敏性 1600

 スキル

 ・毒生成LV.4

 魔法

 なし

 毒を散布して、攻撃する。麻痺毒で、受けると暫くの間動けなくなる。

 ー--------------


 毒を散布するのは厄介だ……と言いたいところだが、もっとヤバイ毒を雨のように降らしてくる魔物と戦ったことがあるせいで、へ~と、思うだけだった。

 それに、俺達の前では攻撃する暇すらこいつにはないだろう。


「はあっ」


 七階層担当のバールが剣で容易く真っ二つにして仕留めた。


「戦いになる魔物はもっと下に行かないといないからなぁ……」


 そう呟いた瞬間、俺の足元からカチッという音がした。

 その直後、俺の足元に穴が開いた。


「おっと。ギリギリセーフ」


 ぼーっとしていたせいで反応が遅れ、半分穴に落ちたが、即座に足元に〈結界シールド〉を張り、それを足場に跳ぶことで脱出することが出来た。


「大丈夫?」


 シャノンが心配そうにそう言った。


「ああ。大丈夫だ。じゃ、行くぞ」


 そう言って、前に進んだ途端――


 カチッ


 また足元から音がした。その直後、両側の壁に穴が開き、そこから槍が飛んできた。


「またかよっ」


 俺は悪態をつきつつも、両側から飛んできた槍を掴み取った。


「運悪いなぁ……俺」


 俺は、はぁと深くため息をついた。


「そ、そんな日もあるわよ」


「ええ。流石にもう引っかからないわよ」


 フェリルよ。それをフラグと言うんだよ。

 そう言おうと思ったが、それはかなわなかった。

 何故かって?

 俺が再び前へ進んだ瞬間に、俺達の真下に赤くて大きな魔法陣が現れたからだ。

 その魔法陣はそのまま俺達を学校の体育館程のスペースに転移させた。


「ここは……モンスターハウス!」


 シャノンがそう叫んだ瞬間、部屋に数百体のゴブリンやスケルトンが現れた。


「流石に数が多いわね。ここは連携して……て、ユート……」


 フェリルは……いや、みんなは俺からあふれ出る怒気に一瞬だけ体を震わせた。


「三歩連続で罠とかふざけんな!〈炎之龍息吹ドラゴンブレス〉×三!」


 俺はブチギレ、周囲にいる魔物どもを一瞬で焼き尽くした。


「あ~すっきりした」


 魔物への八つ当たりを終えた俺は、すっきりした顔でそう言った。


「ねぇ、彼になんて声をかけてあげればいいのかしら?」


「運が悪かったな……とかか?」


「それじゃ兄貴がかわいそうだ。ここは良い魔法だったな、とかだ」


「めっちゃ怒ってたし、今はそっとしといて上げた方が良いんじゃないか? 次は些細なことでも起こりかねないぞ。あの様子だと」


「ま、まあ。ここは優しく見守りましょう」


 何か後ろから声が聞こえる。

 うん。みんな優しいな。俺のことを気遣ってくれて。


「それじゃ、ここから出るか」


 俺達は、奥に現れた扉を開いた。

 すると、そこはさっき俺たちがいた場所だった。

 俺達全員が部屋から出ると、扉は崩れるようにして、消えてしまった。


「それじゃ、俺のせいでめっちゃ足止めくらったけど、先に行くか」


 三連続の罠によってかなり足止めされてしまったが、気を取り直して、俺達は先へ進んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る