第二十四話 Dランク冒険者になりました
盗賊討伐の一件が衝撃的だったのかは分からないが、あの後から街に着くまで誰も一言も話さなかった。その為ノイマンさんが不思議そうに馬車から俺たちのことを見ていた。
「お、見えてきたな。あれがカルトリだ」
シンさんの言葉で前を見てみると、前方にグランと同じくらい。高さ五メートルほどの石の門に、高さ三メートルほどの塀に囲まれた街が見えてきた。
俺たちは冒険者カードを見せてカルトリに入った。カルトリはグランよりも馬車が多い為か、道幅は少し広かった。そこで馬車が停車し、ノイマンさんが出てきた。
「冒険者の方々、ここまで護衛していただきありがとうございます。これは依頼完了票です」
そう言ってシンさんを含めた俺たち四人に一人一枚ずつ紙を手渡していった。依頼完了票は片手に収まるほどの大きさで、依頼完了、報酬金六万セル、サラン商会、ノイマンと書かれていた。
「それでは今後ともサラン商会をごひいきに」
そう言うとノイマンさんは馬車とともに去っていった。
「お前たち、これで試験は完了だ。あとはここの冒険者ギルドの会議室で合格かどうかど言う。その時に報酬金も渡す。では、ついてきてくれ」
俺たちはシンさんの案内で冒険者ギルドへ向かった。
「ここがカルトリの冒険者ギルドだ」
ギルドの大きさはグランと同じくらいだ。冒険者の数も夕方ということでかなりいる。
俺たちはそのまま二階へ向かい、会議室に入った。
「よし。では一人ずつ合格か不合格か言ってくぞ」
なんか受験の合格発表を見る直前のような緊張だ。いや、あの時は親に合格かどうか聞かれてから見るという多くの人がやらないことをした為か、ここまでの緊張はなかった気がする。
「じゃあ、まずはライザ。お前は合格だ。強さは申し分ないし、リーダーとしての指示も的確だ」
「や、やったぜ」
ライザは嬉しそうにガッツポーズをした。
「次はニナ。お前も合格だ。魔法の威力、精度ともによく、前衛のサポートがよくできている」
「ふぅ…よかった……」
ニナは安心したように息をはいた。
「そしてサルト。お前はギリ合格だ。強さは合格なんだが見張りの途中に寝るのはどうかと思うぞ…まあ、パーティーメンバーの二人が上手くフォローしているみたいだからな。ただ、今後は気を付けるんだぞ」
「は、はい……」
サルトは合格と言われた瞬間は喜んだが、ギリという言葉と、その後のダメ出しで直ぐに落ち込んだ。
「で、最後にユートだが、お前は合格だ。誰がどう見ても」
「わ、分かりました…」
何か俺の時だけため息をつかれた。確かにそれくらいのことをしでかしたので何も言えないが……
「と言うわけでランクアップの手続きと報酬金を渡すから冒険者カードと依頼完了票を出してくれ」
俺たちはシンさんに冒険者カードと依頼票を手渡した。
「じゃあ、少し待っててくれ」
そう言うとシンさんは部屋から出て行った。
少しの間沈黙の時が流れた後、ライザが口を開いた。
「何はともあれ全員合格できてよかったな」
「はぁ…確かに合格はしたけど俺だけダメ出しくらったよ…ライザとニナは褒められているのに…」
と、恨めしそうに答えた。
「まあまあ、確かに私たちは褒められたけど一番凄いのはユートよ」
「ん?そうか?俺の時はため息つかれたけど…」
と、とぼけてみたが、
「あれは強すぎるってことに対するあきれね。盗賊も一人で倒しちゃったし…」
ニナもまたため息をついた。サルトとライザの方を見てみたが、その通りだと頷かれた。
まあ、Dランク冒険者になる為の試験にしてはやりすぎたのは否めないが、盗賊とは初めて会ったので、下手に手加減したら誰か怪我するかもと思ってしまったのだ。
五分ほどでシンさんが会議室に戻ってきた。
「よし、ランクアップの手続きが終わったから冒険者カードを返すぞ。報酬金もだ」
そう言われて渡された冒険者カードにはさっきまでEランクと書かれていた所がDランクに変わっていた。
「これでお前たちは晴れてDランク冒険者になった。お前たちならさらに上も目指すことが出来るだろう。Cランク冒険者になる為にはDランク以上の魔物を百体倒すことだ。かなり大変だと思うが是非頑張ってほしい」
と、期待のこもった眼差しを俺たちに向けてきた。
「「「「はい。頑張ります」」」」
俺たちは元気よく返事をし、頷いた。
「よし、これで話したいことは終わりだ。解散してよし。あ、ユートは残っててくれ。少しだけ話したいことがあるから」
「わ、分かりました」
ちょっと話したいことがあるから残ってくれという言葉は学校の先生から聞くと、めちゃくちゃヒヤッとする言葉の一つだ。それを言われると、たとえ心当たりがなかったとしても何かやらかしたと思ってしまう。
(俺って何かやらかし…てたな……)
ゴブリン瞬殺事件と、盗賊皆殺し事件という中々のことをしでかしている。ただ、別にその二つは怒られるようなことではない。
俺は九割の緊張と一割の褒められるかもしれないという期待を胸に、シンさんの話を聞くことにした。
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