第七話 冒険者になりました

「ウォルフさん、試験受かりました」


 俺は満面の笑みで試験合格書を渡した。


「よかったじゃないか…ん?お前シンに勝ったのか!?こいつはすげえな。多分あいつのことだしお前に負けたことに落ち込んでるだろ」


「確かに落ち込んでいました…ね」


 シンさんのプライドを守る為に言わないでおこうと思ったが、言ったら面白そうかなと思い、教えてあげることにした。


「やっぱりそうか。まあ、分かった冒険者カードを発行してくるから少し待っていてくれ」


 そう言うと、ウォルフさんは受付の奥へと向かった。




 五分後、ウォルフさんは銀色のカードを持って戻ってきた。


「ほら、これが冒険者カードだ。記入ミスがないか確認してくれ」


「……はい。問題ないです」


 ちなみに冒険者カードは縦四センチメートル横八センチメートルほどの大きさで、真ん中に名前が書かれており、その横にEランクと書かれていた。


「これから冒険者についての説明をしていく。まず、冒険者というのは入口のすぐ横にある掲示板に貼られている依頼票をはがして通常受付書かれている受付のところへ行って依頼表を見せれば依頼を受けたことになる。ただし、期限が書かれている場合、その期限までに依頼を達成できなかった場合、依頼を達成出来た時にもらえる報酬金の三割を違約金として払わなくてはいけないので注意が必要だ」


(違約金か……絶対払いたくないな)


 というか、今の俺は金を持っていないので今失敗したら払うことが出来ないということをこの時の俺は忘れていた。払えなかったらどうなるかをウォルフさんは言っていないため、俺はそのことを考える余地もなかった。


「あと、その掲示板の横に小さめの掲示板があるだろ?それは常時依頼が張られている場所でな。それは別に受付で見せるとかはしなくていい」


「分かりました」


「あとはランクについてだな。冒険者にはランクがあり、それに応じて受けられる依頼も変わってくる。ランクはS、A、B、C、D、E、F、Gの八段階あり、Sが一番上でGが一番下だ」


 あれ?俺は冒険者になったばかりだ。それなのに、なぜ一番下のGランクではなく、二つも上のEランクからなのだろうか?ウォルフさんにこのことを聞いてみたら、


「試験官に勝ったんだから別にEランクからでも問題はない。ただ、Eランクより上のランクになるにはいくつかの条件達成と試験が必要だ」


「そ、そうですか…わかりました」


 まあ、ランクは高い方が稼ぎもいいと思うので、その点で見ると、かなりありがたかった。


「これで説明は終わりだ。ほかに質問はあるか?」


「いえ、大丈夫です」


「早速依頼を受けるか?……と、思ったが、もう夕方だな。また明日依頼を受けに来るといい」


 窓から外を見てみると、空はオレンジ色に染まり、日は少しずつ沈んでいるようだ。

 さて、俺も家に帰え……あ


「やばい。寝泊まりする場所がない。金もないし…どうしよう……」


 俺は今、かつてない以上に慌てていた。それこそコンビニに行ってレジで財布がないことに気づいた時よりも慌てている。


「そうなのか?うーん……利子は少しつくが、冒険者ギルドから金を借りて宿に行くか?」


 借金はしたくないけど、それ以外に方法が無さそうだと思った俺はその提案に、「はい、そうします」と言おうとしたとき、再び俺はキュピーンと閃いた。

 〈アイテムボックス〉の中にある森狼フォレストウルフの死骸って売れないのかな……と


「すいません。魔物の死骸って売ることは出来ますか?」


「そりゃ出来るがどこにあるんだ?まさか今から討伐しに行くってわけじゃないだろうな?」


 ウォルフさんは半分真面目な顔で聞いてきた。


「いや、今から討伐なんてしませんって…〈アイテムボックス〉の中に入れてあるんですよ」


「〈アイテムボックス〉か。ずいぶんと便利なスキルを持ってるんだな」


 ウォルフさんは俺が〈アイテムボックス〉を持っていることに驚き半分羨ましさ半分の目で感心していた。


「はい。で、どこに出せばいいですか?」


「ギルド所有の魔物の解体所がギルドを出てすぐ右側にあるからそこに向かうといい。そこで解体して売れば宿代になると思うぞ」


「分かりました。では、行ってきます」


 そう言って俺はギルドを出た。

 そして、すぐ右側の建物へ体を向けた。冒険者ギルドと同じくらいの大きさの建物で、看板には素材解体所と書かれていた。



 中に入ってみると、あちこちで魔物の死骸を解体している冒険者が目に入った。


(そういえば魔物の解体ってどうやればいいんだ?)


 森狼フォレストウルフを食べるときに解体したが、あれが正しいやり方だなんて到底思えなかった。正面に目を向けると、受付があったので、ひとまずそこに行ってみることにした。


「ちょっといいですか?魔物の解体に来たのですが、初めてなのでやり方がわからなくて……」


 すると、そこにいた受付嬢が、


「それならそこにいるバンさんに教えてもらうといいですよ。あの人はここ一番の解体職人なので、頼りになりますよ」


 と、答えてくれた。受付嬢が指をさした先には、腰に汚れた布を巻き、腕を組んでいる深紅の髪をした四十代後半くらいの男性だ。顎鬚もあり、見た目からなんかの職人って感じがした。

 俺は受付嬢に礼を言うと、男性の元へ行き、後ろから話しかけた。


「あの~魔物の解体の仕方を教えていただいてもよろしいでしょうか?」

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