第八話 今後を思う
「なんだ?ずいぶんと変わった服装のやつだな。まあいい。取り敢えず魔物を見せてくれ」
俺は〈アイテムボックス〉から
「ほう。素早い
〈アイテムボックス〉に対して何も言わなかったのはともかく、俺のことを子供と言ったことに関しては反論したかった。ただ、バンさんは体格もよく、身長は百九十センチメートルを超えているように見える。一方俺は、百六十センチメートルくらいで、さらに顔も子供っぽくはないが、大人びているというわけでもないので、バンさんの人柄的にも強く責めることは出来なかった。
「は…はい。そ、それでどうして風魔法で切ったってわかるんですか?」
「まあそれに関しては経験だな。たくさんの魔物を解体していれば嫌でも分かる」
そう言うとバンさんは横の台の上にあった刃渡り二十センチメートルほどのナイフを手に持ち、左手で
「ちなみに、普通は吊るして血を抜いた後に皮を剥ぐんだがそれだと時間がかかるからな。なれたらこっちのほうが楽だ。体温が残っている方が皮も剥ぎやすいしな」
そう言っている間に一頭の皮を剥ぎ終わった。
「言い忘れていたが
「そうなんですか……ところで魔石って何ですか?」
「そんなことも知らんのか、まあいい。魔石っていうのは魔物にとっての心臓だな。生命力と魔力が蓄えられているため、様々な用途で使われる。例えばこの部屋の照明には魔石が使われている」
天井にある照明を指差しながら答えてくれた。
「なるほど…ありがとうございます」
「てか、話している間に一頭終わったぞ」
目の前にはきれいに解体された
「流石に早くないですか?」
まだ解体を始めて十分程しかたっていないはずだ。
「慣れだよ慣れ。何十年もやっていればこれくらい普通に出来る」
なめるんじゃないと言わんばかりの気迫を感じた。
「あとはお前がやれ。道具はそこにあるのをつかえばいい。こういうのは取りあえず挑戦してみる方がいい」
「わ、分かりました」
俺はその言葉に頷くと、道具を手に取って
「解体が終わったら受付のところへ行きな。買い取ってくれるから」
そう言うとバンさんは他の人の所へ行ってしまった。
「詳しいやり方とかは教えてくれないのかな……」
俺の予想では一個一個丁寧に教えてくれると思った。
「まあ、でも一応今のでやり方は覚えたからな」
ただ、俺の記憶力はそこまでいいというわけではない。それなのに割と今の工程を覚えることが出来た。よく分からないけど恐らく神様のおかげだろう。
「よし!今夜を乗り切る為にも頑張るか!」
こうして俺は残り四頭の解体に全力を注いだ。
「は~終わった~」
時計を見ると、もう七時だ。つまり俺は二時間かけて解体したことになる。
「流石に時間をかけすぎたかな?」
一応早くやろうと思えば出来たが、下手にやって買取価格が下がってしまうのは嫌だった。
取りあえず〈アイテムボックス〉にすべてしまい、俺は受付へ向かった。
「魔物の解体が終わったので素材を売ってもいいか?」
「分かりました。ところで素材はどこにありますか?」
「〈アイテムボックス〉の中にあるが、どこに出せばいいんだ?」
流石に受付の台の上…では一頭乗るか乗らないかといったところだ。
「それでしたら、受付の横にあるスペースに出していただけるとありがたいです」
俺は受付がいくつか並んでいる所の一番端にあるスペースへ向かい、五頭全て出した。
「これをすべて売ってもいいか?」
「
そう言って彼女は品質を確かめながら一つ一つ値段を決めていった。ちなみに
「五頭で八万セルになります」
(セル?ああ…お金の単位か……)
考えてみればこの世界のお金の単位なんて考えたことがなかった。ただ、そうなると八万セルが高いのか高いのか安いのかわからない。日本円のような感じならまだしもジンバブエドルのような感じだと、何も買えなかったりする。
「それって今日一日宿に泊まることが出来る金額ですか?」
「この街なら一日どころか安い所なら十五日程、高い所でも四日は泊まることが出来る額ですよ」
当たり前のことだと言わんばかりの気迫を感じる。
(そう考えると何となくだが一セルが日本円でいうところの一円といったところか、分かりやすいな。)
慣れ親しんだお金と似たようなものだったので俺は息を吐き、安堵した。
「並の冒険者が解体しても五頭で万六セルくらいですからね。あなたの場合は買取価格に差が出る皮の部分が特にうまく解体されていますからね」
時間をかけて丁寧に解体したかいがあったのでかなりうれしかった。そして、冒険者としての収入がこれからは入ってくるので、お金に困ることはしばらくないという安心感に包まれた。
ちなみに、八万セルと言われて手渡されたのは銀貨八枚だ。俺はその銀貨を直ぐに〈アイテムボックス〉にしまった。
受付嬢にお礼を言い外に出た。外に出て空を見上げると日はすっかり沈んでおり、この世界の月と星が見える。
「宿を探さないとな…」
この街について俺は知らないが、適当に歩いていればあるだろと思い、街の中をさまよった。
十分程歩いたところで宿がいくつも並んでいる所を見つけた。
「どれがいいとかあるのかな?」
宿の見た目を見ると、きれいな見た目の宿から明らかにボロボロの宿なんかもあった。
結局俺はその中で一番外装がきれいな所に入った。扉の上に書かれている看板には緑林亭と書かれていた。
「おや?お客さんかね?」
中に入ると腰を曲げた白髪のおばあちゃんがにこやかに出迎えてくれた。
緑林亭の一階には、料理店のように机と椅子が置かれてあった。
「はい。部屋は開いていますか?」
「部屋なら空いてるよ。お代は一泊朝食付きで1万セルだよ」
(朝食付きで一泊一万セルなら宿の見た目的にもよさそうだな…内装もシンプルできれいだしひとまずはここに泊まろう)
そう思った俺は一万セルをおばあちゃんに手渡した。
「はい。ありがとう。部屋は二階の三号室が開いているよ。朝食は六時から九時の間に出しているからね」
「分かりました」
そう言って俺は二階へ上がり、三号室と書かれた部屋の中に入った。
部屋は五畳程の広さで、カーテンのある窓の横にベッドが置いてあった。そして、ベッドの横には寝ているときに手を出しやすい高さの机が置いてあった。また、部屋に入ってすぐ横にある扉の中には二畳程の広さのシャワールームがあった。意外だったのは、照明がどこにもないことだ。
「まあ、見た感じ結構過ごしやすそうな部屋だな」
俺はそう言いながらベッドに寝転がった。眠いし、シャワーは明日の朝浴びることにしよう。
「この世界に来て色々あったな~」
神様によって異世界に転生し、魔法や魔物といった前の世界には無かったものにも触れることができた。ただ、俺は元の世界に戻ってあいつを断罪しなければならない。そのために俺がすることは神様が言ってた転移の魔法をとやらを使えるようにする必要がある。そのためにはLV上げが必須だろう。
暫くして俺は考え事をやめ、寝ることにした。
「おやすみなさい」
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