第72話 デート⁉︎

 カフェでコーヒーを飲みながら、このまますぐ行くか藍田に聞いたら、


 「見てみないと何とも…。でもさすがに、今すぐはムリかも。」


 と言ったので、とりあえず遊園地に行って様子をみることにした。


 カケルくんにもらった入場券を出し、園内に入る。


 藍田は困った顔をしているが、俺はめっちゃデートの気分。


 遊園地の見取り図を見て、お化け屋敷を探す。

 入り口から見ると奥にあるので少し迷いかけたけど、離れたところからでも分かりやすい建物で、すぐに分かった。


 はい、外観がすでに怖い。


 全く子ども向けではなさそうだ。


 藍田は“うわっ”という顔をする。


 ホラーが苦手じゃない俺も、躊躇ちゅうちょしてしまうくらいのレベルに見える。


 俺:「どうする?入る?」

 藍田:「やっぱり無理。こんなの絶対無理。」


 俺達は建物の近くのベンチに座って、お化け屋敷から出てくる人の様子を観察する。


 ー泣いてる人は…いないなぁ。


 カップルは…女の子は“めっちゃ怖かったー”っていう仕草だけど、笑顔だ。


 そんなに怖くないか…?


 俺:「なんかさ、思ったより大丈夫そうじゃない?結構皆笑ってるよ。」


 藍田:「そうだね。この建物の外観見て引いたけど、そんなに怖くないかもしれないね。」


 俺:「入ってみる?」


 藍田:「う、うん。いつか絶対入らなきゃいけないもんね?今日このまま行かないで帰ったら、次ここ来るまでずっとブルーになりそうだから、今日、頑張って行こう!ね!」


 藍田がストレートに俺を見つめるので、思わず照れてしまった。


 俺:「よし!じゃあ、行こうか!

 多分、カケルくんがワザと怖がらせるようなこと言ったんだよ。だから多分、大丈夫だよ。“ゲーム”だし。」


 藍田:「そっか、お化け屋敷というか、“お化け屋敷ゲーム”だもんね。ちょっと怖いゲームだね。よし、行こう!」


 俺達は決心して建物入り口に行く。

 入り口で招待券を出し、中に入る。


 中に入って簡単な説明を受ける。

 『各部屋のゲームをクリアすると次の部屋へ進めます。各ステージ2部屋あるので、空いてる部屋に進んでもらいますが、前の人が終わってない場合は前室で順番にお待ち下さい。

 リタイアする場合は非常口がありますので、そこから退出してください。

 Have a nice horror!』


 俺達は恐る恐る中へと進む。


 まず一つ目の部屋に入る。

 そんなに広くない部屋だ。


 中に入ると入り口の鍵が閉まる。

 ああ、あのゲームと同じだと思った。

 でもこの部屋の『カチャン』という音は怖さ倍増だ。


 『入り口のアイテムをお持ちください。準備が出来たら部屋の中央でスタンバイしてください。』

とアナウンスが入る。


 横のスクリーンに

『オバケ集めゲーム』

と表示されている。


 入り口に置いてあるアイテムは、金魚すくいのポイみたいな多きさの虫捕り網だ。


 アイテムを持ち、部屋の中央に立つとまたアナウンスがある。

 『オバケが浮遊しますので、お手持ちのアイテムで全て集めてください。全部集めたらクリアです。

 よーい、スタート!』


 合図と同時にオバケのホログラムが出現し、部屋の中を飛び回る。

 オバケはよくTVゲームで見るような、可愛い感じのキャラで怖さを感じない。


 2人で飛んでくるオバケを集める。


 今回は自分のアバターがいないので、オバケとの距離がすごく近い。顔を目掛けて飛んできたりするので、それにびっくりするけど、楽しい。

 藍田も楽しそうだ。キャーキャー言ってるけど、全然怖がってない。


 俺:「これ、すごく体動かすやつだね。」

 藍田:「うん、結構ハードかも!」


 やっぱりカケルくんはワザと怖がらせていたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る