第71話 カケルくんと藍田と
カケルくんに連絡して、藍田と3人で会うことが決まった。
場所はカケルくんが素敵なカフェがあるって言ったので、そこで待ち合わせることにした。
俺は場所が分からないからと駅でカケルくんと合流してその店に行く。
藍田は店の入り口ですでに待っていてくれた。
藍田:「あ、本宮くん!
カケルくんだよね?久しぶり!藍田です。覚えてるかな?」
カケル:「久しぶり!藍田さん、ちゃんと覚えてるよ、道場の娘さんだし。会えて嬉しいよ。」
俺:「あれ?カケルくんて藍田の道場通ってたんだ?」
カケル:「うん、小学校3年生の時ね。登校拒否になってから道場も辞めちゃったけど。
ま、とりあえず店入ろ。」
ここのカフェは外観も素敵だが、中に入るともっと素敵だ。
俺:「カケルくん、こんな素敵なカフェよく来るの?」
カケル:「たまにね。で、今日はどうしたの?デート?」
俺:「いやいや、だって3人だし。藍田がオリエンテーリングのことカケルくんに聞きたいっていうから。」
俺はちゃんと説明したはずなのにと、焦る。
カケル:「冗談だよ、ハハ。
藍田さんも同じ班だったよね?」
藍田:「うん。カケルくんが怪我した後、全く話できなかったから。
もしかして、スズランの花取りに行って怪我したんじゃないかと思って。」
俺:「ああ、カケルくんはスズランの花を見つけてそれを取りに行ってはぐれたって言ってたね。」
藍田「あのスズラン、私が見つけてカケルくんに教えてたんだ。」
俺:「何でカケルくんに?」
藍田:「教室の中で、2人でスズランの話してたような気がして。あ、たまたま聞こえたんだけど、自然に生えてる生えてないって盛り上がってたよね?」
俺:「すごい、覚えてるんだ。そうそう、オレはすっかり忘れてたけど。」
カケル:「そう?藍田さんが見つけたんだっけ?覚えてないや。言っても言わなくてもオレ、自分で見つけてたよ。」
藍田:「あそこよく見えなかったけど、後で思い返したら、なんとなく崖っぽかった気がするの。で、もしかしてスズラン取りに行ったから崖から落ちちゃったのかなって思ってた。」
俺:「違うよね?スズラン取った後、戻ろうとして歩いてたら急に土砂降りになって、走って木の下に行こうとしたら、崖があって足滑らせちゃったんだよね?」
カケル:「そうだよ。スズラン取った時は無事だったよ。」
藍田:「そっか…。でもあの時、カケルくんがいないことに気付いてなくてごめんなさい。」
カケル:「いいよ、そんなの。もう10年前の話だよ?とっくに忘れたし、全然気にしてな…くはないな、やっぱり。」
俺:「え?」
カケルくんの意外な返答に戸惑う。
カケル:「2人共さ、オレ悲しかったんだ、やっぱり、ものすごく。
本当に悪いと思ってくれてるなら、その気持ちを形で示してくれる?」
藍田:「え、何?形って…?」
カケル:「藍田さん、お化け屋敷って好き?」
藍田:「全然好きじゃない。昔一回入ったことあるけど、すごく怖くて二度と入りたくないって思った。」
カケル:「ちょうど良かった。じゃあ、2人でウチの会社が制作したお化け屋敷ゲームにいって体験してきて。そして、オレにレポート書いて提出してね。
あ、レポートって普通パソコンで打つけど、今回は手書きで。ちゃんと話合って、2人の字で書いてね。
じゃないと、許すことはできないな。」
藍田:「え⁉︎お化け屋敷…む、ムリムリ!他のじゃダメ?」
カケル:「ダメ。
ここに入園券と無料招待券2枚あるから、コレで行ってきて。」
俺:「もしかして、新作ゲーム?」
カケル:「そう。この前の立体映像ゲームの発表会の後、お化け屋敷の制作オファーがあったんだ。
すごく怖いのに仕上がってるから、楽しみにしてて!」
藍田:「すごく怖いの?やっぱり無理だよぉ。」
藍田は泣きそうになってる。
俺:「違うのないの?もっと怖くないソフトなやつ。」
カケル:「無い。2人の本気見せて。
場所はここの近くの遊園地で、その敷地内にあるから。
じゃあ、オレこの後予定あるから、もう行くね。レポート仕上ったらまた連絡して。」
カケルくんはイタズラしてるっぽい満面の笑みでカフェから出て行った。
藍田:「どうしよう…。絶対ムリ。」
藍田の顔が蒼白色になって見える。
俺:「行くしかないよね。大丈夫!俺が絶対守るから!」
ヤバイ、俺、楽しみになってきた!
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