第51話 キャンプ飯②
アルミホイルの包みを違う場所によけて、バーベキューの網から鉄板に替える。
鉄板が温まるまで、次の準備をする。
俺達にもやっと仕事が回ってきた。
さっきのアルミホイルのやつを、各自の硬めの紙皿に乗せて運ぶだけだけど。
次にアユタが取出したのは、なんとステーキ肉!
「うっわ!!」
男3人が、見た瞬間に立ち上がって肉の周りに群がる。
アユタ:「2枚ずつしか焼けないから、誰先に食べる?決めといて。」
俺:「それはもちろん、レディーファーストで、お姉さん。」
佑:「そうそう。それとキャンピングカー借りて運転してくれたカケルくん。」
優媛:「やだ、気を使わないで。大聖くんか佑くんが先に食べて。」
カケル:「そうそう。オレも後でいい。」
アユタ:「そういう譲り合いは困るなー。じゃあ、じゃんけんでもしてよ。」
俺:「アユタは?」
アユタ:「オレは焼き係だから、後でゆっくり食べるよ。」
じゃんけんは一応したけど、それでも俺達は譲り合って拉致があかない。
なんとも日本人気質だとしみじみ思う。
俺:「そういえばカケルくんてさ、あれからずっとアメリカだったの?なんか、全然アメリカナイズされてない気がするんだけど。」
カケル:「オレ、人間に興味無いって言ったでしょ?それ、アメリカ行っても変わらなかったんだ。
あっち行って、誰も知らない、全然違う人達の中だと、1人でいるのも全然苦痛じゃなくてむしろ楽だったんだ。
まあ、あっちでもオレは“友達作れないダメなやつ”って思われてたかもしれないけど、言葉を聞き流すのは日本語よりも楽だったからね。
だから、あんまりアメリカの人に影響されてない。」
俺:「オレはカケルくんのこと、そんな風に思ってなかったよ!」
アユタ:「Thank You.」
佑:「さすが、綺麗な発音だね。」
アユタ:「誰かスープ温めてカップに入れて。」
「ラジャー!」
俺達がアユタの方へ目をやると、アユタは肉に何かかけてチャッカマンで火を付けた。
ボッと肉の周りに火が付いた後、慌てる様子もなく肉に蓋をする。
俺:「すごい!何?今の!」
佑:「オレ知ってる!フランベってやつだ。実際に見るの初めて!」
アユタ:「正解!ウィスキーでフランベした。」
優媛:「すごーい!アユタ進化してる。」
カケル:「本物の料理人みたいだね!」
皆がすごい!とびっくりした顔してるのを見て、アユタも嬉しそうだ。
アユタ:「ちなみに、このステーキの蓋は100均の材料でオレが手作りしたんだ。でも2個しかないから、2枚ずつしか焼けない。」
蓋って、手作りできるんだとそれも感心した。
結局、誰が先に食べるか決まらなかったので、アユタが肉を4つに分けてくれた。
アユタ:「次焼いたら、今と逆側食べろよ。」
アユタも一緒に食べられたら良かったけど、そこは遠慮しないで、4人で先に頂く。
肉はびっくりするほど柔らかくて旨い。
俺:「この肉どうしたの?絶対高いよね?すっごく美味しいんだけど。」
佑:「本当に最高!キャンプでこんなステーキなんて、贅沢!」
アユタ:「母さんが、皆が家に来てくれたことと、キャンプに行くことがすごく嬉しかったみたいで、“コレ持ってけ”って渡された。
ステーキの予定ではあったけど、もっと安い肉にするつもりだったよ。」
「ありがとう〜!アユママ!」
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