第50話 キャンプ飯

 ゲーム受付の管理棟を出て、キャンプ場に戻り、夕食の準備をする。


 カケルくんがいろいろ準備してくれていたが、アユタの希望でやっぱりバーベキューコンロに炭を起こす。


 それでも5人のご飯の準備は大変なので、カケルくん持参のツインコンロも活用する。


 アユタはまず持参した食材の中からアルミホイルに包まれたものを取り出す。


 炭に火が付いたら網の上にそのアルミホイルに包まれたものを並べる。


 次にコンロでスープを作る。


 鍋に水とコンソメキューブを入れて、冷凍のミックス野菜と一口大に切ったソーセージを入れ、塩と胡椒で味を整える。


 炭で焼いてるアルミホイルの中を覗き、焼け具合を確認する。

 場所によって火の通りが違うらしく、場所を入れ替えて調整する。


 アユタがほとんど全部やってくれてるので、俺達は指示があるまでチェアに座って待機する。


 待ってる間、お姉さんが話始める。


 優媛:「ウチ、両親が仕事忙しい人達で、私が中学生2年生になったくらいから、親が休みの日以外は私が料理作ってたの。

 アユタは小学1年生だったかな。

 もちろん簡単なものしか作れなかったけどね。」


 俺:「すごい。お姉さん、中学生の頃からって…。オレ、部活しかしてなかった。」


 優媛:「そんな大したものは作ってないのよ。

 でも、アユタが10歳か11歳の時、私高校3年生で大学受験があったの。私が勉強しなきゃいけないからって、その間代わりにアユタが夜ご飯作ってくれたんだ。」

 

 佑:「10歳⁉︎アユタすごっ!」


 優媛:「私が料理してるのずっと手伝ってくれてたから、その頃には十分包丁も使えてたし、安心して任せられるくらいになってたのよ。」


 カケル:「それにしたって、感心する。」


 優媛:「今アユタが料理してる姿見たら、あの頃思い出すな。

 こんなに大きくなったんだなーって。」


 アユタ:「姉貴、あんまり恥ずかしい昔話はやめてくれ。」


 俺:「全然恥ずかしい話なんかじゃないよ!かなり惚れ直した。」


 佑:「オレも!アユタの料理って、年季入ってたんだね。

 ニワカ“今時男子”じゃなかったんだ」


 アユタ:「まあな。

 でも、ちなみに言うと、地元の大学に受かってウチから通ってた姉貴は、“大学生って忙しいのよー”って言って、それからもオレに作らせてたんだ。」


 優媛:「だって、アユタが作る方が美味しいもん。」


 俺:「あれ、そういえば俺達お邪魔した時も朝迎えに行った時もお母さんいたけど、たまたま休みだったんですか?」


 優媛:「んー実は、私がこんな風になっちゃったから、お母さん仕事、退職しちゃったの。

 今は短いパート。

 本当に申し訳ないと思うわ。」


 俺は随分余計な事を言ってしまったと後悔した。


 優媛:「あ、なんか暗い雰囲気にしちゃってごめんね。私もう大丈夫だから、気にしないでね。」


 お姉さんが笑ってくれたからホッとした。


 そろそろアルミホイルのやつが焼き上がったみたいだ。

 

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