第41話 アユタのお姉さん②

 アユタは、モンリベルトeへの勘違いからの件は事なきを得たが、“カケルさん”への憎悪は消えていない。


 お姉さんの件をカミングアウトしたアユタは、あれからちょくちょく

 「なんとかなんねーかなぁ。」

とぼやく。


 俺も佑も、調子がいつも通りじゃないアユタが心配だ。


 そんな時、カケルくんから連絡があった。カケルくんの希望で4人で会うことにした。

 また半個室のあるファミリーレストランでご飯を食べながら話する。


 カケル:「ごめんねー、集まってもらって。あれからアユタくんのお姉さん、どうなったか気になってさ。」


 アユタ:「心配してくれてありがとう。でも、あれから家帰ってないから分からないんだ。でも親の話では、あんまり変わってない感じらしい。」


 俺:「お姉さんに直接さ、どうやったら元気になれるか聞いてみるとか?」


 アユタ:「そうしたいんだけど、トイレと風呂以外ちっとも部屋から出ないらしいし、やっぱり話もしないらしいんだ。」


 佑:「アユタはお姉さんと最後に話したのはいつ?」


アユタ:「あー、ゴールデンウィークに帰った時、ドア越しに。

 姉貴元気かぁ?って声かけたら“うー”って、それだけ。」


 佑:「うー?」


 アユタ:「うんの“ん”も面倒くさいみたいな感じだった。」


 俺:「返事があるなら、まだいいんじゃない?」


 アユタ:「確かに。春休みの時は一言も無かったかも。」


 俺:「家帰ってさ、お姉さんともう一回話してみなよ。そろそろ気分も良くなってきてるかもしれないし。」


 カケル:「オレさ、4年生の時登校拒否になったって言ってたじゃん。

 オレの場合だけど、部屋に籠った最初は“行かなきゃ、でも行けない”っていう葛藤があったんだ。精神的に辛くて、学校に行かないことの罪悪感もあった。

 でも、何日かしたら“もういいか”ってなって、学校行かないっていうのが普通になってきたんだ。

 そしてまた時間が経ったら、学校に行きたい気分も出てきたんだけど…、でも行けないんだよね。今度は怖くて家から出れなくなった。

 オレの親も同じ。最初はオレを学校に行かせようと必死だったけど、なんか行かないのが普通になって、“しょうがない”に変わった感じだったんだ。」


 俺達はカケルくんの話をじっと黙って聞いた。


 カケル:「お姉さんはオレとは違うかもしれないけど、返事があったということは、部屋を出るきっかけを待ってるかもしれない。

 オレが、本宮くんと同じクラスになったっていう、ただそれだけで行こうかなっていう気になって、行ったら行ったで普通だったし。」


 アユタ:「きっかけかぁ…。」


 佑:「それって結構難しいよね。心を動かすものなんて、人それぞれだし。」


 カケル:「キャンプに誘うっていうのはどう?」


 カケルくんの唐突な提案に、皆びっくりする。


 俺:「いきなりキャンプって、めっちゃハードル高くない?」


 カケル:「普通の人ならそうなんだけど…。」


 カケルくんには何か思惑があるのか?

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