第40話 アユタのお姉さん

 カケル:「お姉さんて、名前は?オレの知ってる人かな?」


 アユタ:「間中まなか 優媛ゆうひ。多分、モンリベルトeには1年くらい勤めてたと思う。」


 カケル:「あ!間中さん、知ってる!すごく素敵なお姉さん。

 そっかーアユタくんのお姉さんだったのかぁ。」


 俺:「知ってる人なんだ!」


 カケル:「うん、確かに、ウチの会社に去年いたね。

 大学の夏休み始まってすぐ帰国してバイトしてたんだけど、オレが弟と同い年だからって、来てすぐくらいからちょくちょく話かけてくれたんだ。

 でもその時、大手のゲーム会社の人と付き合ってたよ。で、しばらくしてその人に、その同じ会社に正社員として誘われたっていう話があって…そうそう、ゲーム考える時間が欲しいからってウチの会社辞めたんだった。

 ゲーム会社って結構大変だから、勤めながらだと時間が取れないって言って。

 優秀なクリエイターだったから、きっとその大手の会社でバリバリ働いてるんだと思ってた。」


 アユタ:「その話、本当か?」


 カケル:「うん。本人が嬉しそうに話してるの直接聞いたよ。オレの知ってる間中さんなら。

 あ、そういえば、写真あるかも。」


 カケルくんは携帯を取り出し、写真をアユタに見せる。


 カケル:「この人、お姉さん?」


 アユタ:「そうそう!これ姉貴!」


 カケル:「じゃあやっぱりそうだ。

 彼氏は同じ大学の2コ上の先輩で…オレと同じ名前なんだよーって言ってたから、“カケル”か“イツキ”って人だと思う。」


 アユタ:「じゃあ、そいつが“カケルさん”なんだ!すいません!オレ、てっきり…。スッゲー勘違いしてました!本当にすみません!」


 アユタは泡食ったような顔をして、深々と頭を下げる。


 カケル:「誤解が解けてよかった!じゃあもううちの会社、攻撃しないよね?」


 アユタ:「もちろん!本当にすみません!

 あの、オレ…どうしたら…?」


 カケル:「この件は、オレでは判断できないので、会社に報告します。

 もちろん、お姉さんの事情も話します。

 どのような対応になるかは、後日連絡しますね。

 それでいい?」


 アユタ:「もちろんです!煮るなり焼くなり、お任せします。

 行ってもいいなら、謝罪に伺います。」


 俺達はそこでカケルくんと別れた。


 後日、カケルくんからアユタへ連絡があり、アユタはモンリベルトeの会社へ行って社長であるカケルくんのお父さんに会った。

 

 俺のオリエンテーリングの端末と通信障害以外では被害がなかったものの、モンリベルトeの職員の皆さんに多大な迷惑をかけ、業務妨害にもなっていた。

 サイバー攻撃はもちろん犯罪で、“然るべき対応”となるところだが、お姉さんの件を最大限に考慮して、今回は不問にするとのことだった。

 それは社内で会議した結果の、社員の総意とのこと。

 但し、唯一被害のあった俺への誠意ある謝罪が条件らしい。


 俺はアユタの心からの謝罪を受け入れた。


 良かった、これで無事に解決した。



 

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