第34話さぼったわけじゃないです

【さぼったわけじゃないです】


クラス対抗試合も終わり、豊島ダンジョンも20階層まで解放されることとなり、探求高校ではこのきっかけとなったエース君(君津)達の事もあり、安全を考慮し15階層まで探求できることとなった。


またいつものように訓練とダンジョン探求が復活


今日は、午後から闘技場で訓練、午前の授業が終わって教室でお昼、俺んちは両親が2人とも働いているので、朝コンビニで買ったサンドイッチとおにぎり、購買はめちゃ混みでほしいものが買えないから、最近はずーっとこのパターン、大谷さん、楠さん、伊達君と4人でお昼を食べていると、あの時の5人が教室に入ってきた。


やばいこの前の5人だ、色々考えたけど、試合観戦を抜けて自販でジュース飲んでたのがまずかったのかな、って思っていると大谷さんが「あっ、生徒会の人達だ」

そうだったんだ、やっぱり注意されるのかなー


俺は下を向いてじーっとしていたら、姫野が生徒会の人達の所へ


「生徒会の皆さんがDクラスに何の用ですか?」

「君は?」

「Dクラスのクラス委員をしている姫野と言います」


・・・そうだったんだ姫野はクラス委員なのか、そうか


そういえば最初の頃、クラスでそんな事あったな・・・・なんて思っていたら

「ちょっと人を探しているんだ」

「誰ですか?」

「このクラスに高谷という生徒がいると思う思うんだが」

「高谷ですか」

「ああ」

「ちょっと待っててください」


そう言って姫野が俺の方に向かってくる


大谷さんが「ねえ、高谷君、何かやったの?」

「きっと、この前のクラス対抗試合の時、抜け出してジュース飲んでたんだけど、それだと思う」

伊達君が「あー、あの時の?」

「うん」

楠さんが「大丈夫?」

「とにかく謝るよ」

「うん、それがいいよ、逆らっちゃあダメだからね」

「うん」

3人が心配してくれる中、姫野が

「高谷君、生徒会長が呼んでるよ、何かやらかしたのか?

 あまりDクラスの評判を落とすようなことはしないでくれよ」

 Dクラスの生徒の心配より、クラスの評判が大事なのか 

やっぱりこいつキライだ

「ああ、わかってるよ」


姫野の顔を見ないで、そのまま生徒会の連中の所へ

「高谷です。この前は試合観戦をさぼってすみませんでした」そう言って頭を下げると

「君は何を言ってるんだ?」

「はあ?」

「試合が終わった後にクールダウンをするのは当たり前だろ、その方法は人それぞれだ、君はあそこでクールダウンしていただけじゃないのかな、それを咎めるのはバカのやることだ、まさか君は僕の事をバカだと言うのかな?」

「いえ、そんな事はないです、ただ試合を見ないで1人であそこにいたので、さぼっているのを咎めに来たのかと思って」

「そんなバカなことはしないよ、君に話があるんだ、生徒会室まで来てくれないかな」


こんな状況で断るなんて選択肢、あるわけない、

「はい」5人に囲まれるようにして、生徒会室に。


Dクラスの前には結構な人数が俺達を見ていた。


その中に心配そうな顔をしている大谷さんと楠さんと伊達君の姿、思わず3人に手を振って、無理やりだけどニッコリ


学校の中は講義室と闘技場くらいしか行ったことがなくて・・・特に生徒会室なんて、回りをキョロキョロしながら後をついていくと、結構豪勢な部屋が、この人生徒会長なんだ、はあ~


大テーブルに皆が座って、中に2人いて全員で7人、俺は末席、入り口近くの席に立っていると

「まあ、座ってくれ」

「はあ」言われるまま座ると、コーヒーと紅茶どっちが良いか聞かれ、コーヒーをだしてくれた。


 高校でこんな接待、びっくり。

「君はアサシンだったね」

「はい」

「彼もアサシンなんだ」そう言ってその男子の方を向くと

立ち上がって

「書記の舘と言います」

そう言って俺に頭を下げた

「アサシンは人数も少ないし、レベルの高いアサシンは尚更少ないんだ、彼はその中でもレベルが30という高レベルアサシンでとても貴重な存在なんだよ」

「はあ」

「彼が言うには、君の動きはとても1年生には見えない、Dクラスではあり得ないと言うんだ」

「はあ、でも・・・・・・」

「君たちが最初に戦った大林、の噂は聞いているだろう?」

「はい」

「彼は素行が悪くてね、1年の時にダンジョンでトラブルを起こしたんだ」

「トラブルですか」

「協会が処分を下すところを高校でしばらく様子を見て更生させるから少し待ってほしいと申し出て、当面はダンジョンの立ち入り禁止と1年からやり直し、という処分が下されたんだ」

「あのー、どんなトラブルを起こしたんですか?」

「他の探求者に暴力をふるって、モンスターを横取りしたんだ」

「はあ」

「彼は1年の後半にレベルが20になって、それからあのような態度をとるようになってね、学校内でも自分より弱い生徒に横暴なふるまいをするようになり、とうとうダンジョンでも問題を起こしたんだ」

「はあ」

「それで、我々生徒会でも彼を要注意人物として、今回のクラス対抗試合でトラブルが起きないか、彼を監視していたんだ、それが君たちのパーティーと試合でね、相変わらずあのような口をきいてたから、トラブルが起きそうなら、我々が中には入って試合を中止させるつもりでいたんだ、当然先生たちもそのつもりでいたんだが、結果は君たちの圧倒的な勝利、それを見ていた舘が、君を見てそう言ったんでね、それから君達の2試合目をみて、舘が、間違いなく君のレベルは1年ではあり得ない、と言ってね」

「俺がですか……」


やばい、やりすぎた、失敗したかな・・・・・・舘先輩が俺の方を向いて


「君もアサシンなら、あの変態袋マンを見てすごいと思っただろう?」

「えっ?」思わず口にでてしまった

「あの動き、すごいと思わないか?アサシンがモンスターを倒しちゃうんだ、憧れるよね」

えーっ 憧れるの?

斜め45度の方向に話が行ってしまって、もう頭はパニック・・・・・・・・・

「舘君、そういう話は2人の時にしてくれないか?」

「あっ、すみません会長」

「いや、わかってくれればいいんだ」

「はい」そう言ってまた俺の方を向き

「君の動きが、あの変態マン・・・・の動きに似ている所があるんだ。

 それはつまり君のアサシンの能力はただの1年ではできない動きをしていると判断したんだ」

(そりゃそうだよ、だってそれ、俺だもの、しかしまずいな、このまま追及されるとばれるかもしれない、困った・・・)

(ピーン!ひらめいた)

「はい、僕もアサシンとして、あの変態袋マン・・・・・を見て、かっこいいなーーって思って、何回もあの映像を見ながら一生懸命訓練して真似できるように頑張っているんです。そうしたらほんの1部だけなんですけど同じような事ができるようになったんです」

どうかな~ 舘先輩の顔色を見ていると

「そうか、ほんの1部か・・・・・でも・・・・・・」

舘先輩が、考え込んでいるので

「だから、あの大剣使いの大きな動きととても相性が良かったんで、回りこんで、横や後ろに着いたりできるようになったんです」

「そうかな~ それだけじゃないと思うんだけど・・・・・」

これ以上話すとかえってボロがでそうなのでじーっと舘先輩の様子を見ていると、会長が

「まあ、高谷君の言う通りかもしれないが、大林をほんろうしたのは事実だ、そのおかげで倒せたようなものだし、それ以外にも君が皆に指示を出していたよね、それは今の1年にはなかなかできない事だからね」

「はあ」

「生徒会には執行委員という者がいてね、メンバーは部活で優秀な生徒と各学年の優秀な生徒たちで構成されているんだが、君もそのメンバーに入ってもらいたいんだよ」

えっ?勧誘?いやだ。

「1年だったら、エースと呼ばれている生徒がいるじゃないですか、彼が適任だと思うんですが・・・」

「もちろん彼にもそのメンバーに入ってもらっている」

「他にもAクラスやBクラスに優秀な生徒がいるんじゃないですか?」

「単純なレベルだけなら、確かに他にも優秀な生徒はいる、しかし、君は対抗試合で上のクラスのパーティーに勝っているんだよ」

「それならDクラスに委員長がいます」

「違うんだ、君のパーティーは誰1人として倒されることなくCクラスに勝っているんだよ、わかるかな、Dクラスのメンバーの誰1人として倒されずに上のクラスに勝っているんだ」

「はあ」

「対抗試合なら、倒されても退場するだけで済むが、ダンジョンはそうはいかない、最悪それは死につながるだろ?」

「・・・・・・」

「ダンジョン内で、もし格上のモンスターに遭遇したら、良い例がこの前の君津達だ、あの時変態袋マンが現れなかったらどうなっていたんだろう って考えるとね。

仮にリーダーが君のような人物だったら、変態マンが現れなかったとしても、全員無事で帰れたんじゃないかってね」

「はあ」

「先日、協会から20階層まで解放する通知が来たけど、その内容には、但し書きで 要注意があったんだ、それで探求高校では当分は15階層までとしたんだが、それは今後もあのようなモンスターが出現する可能性があると我々生徒会と学校は考えているんだ」

(う~ん、ごめんなさい、そういう方向で報告しようと俺達3人で決めました。)

「はあ」

「この前の姫様パーティーもそうだけど、今後は予想できない格上のモンスターが出現する可能性があるという事なんだ。

今まではレベルが高ければモンスターを倒せるから問題ないという考えだったが、これからはそういう事態に遭遇しても全員無事で帰ってこれる体制、指導が重要になる。生徒会では、学校に対し来年度からそういったカリキュラムを授業に組み込むように要請したんだ」

「はあ」


ゆうと2人でパーティーを組んでいた時は、俺が何も言わなくても俺が動きやすいようにフォローしてくれたし、俺もゆうが動きやすいようにフォローしていたが、相性がよかったから、何も言わなくても相手に合わせる事ができた。

大谷さん達は皆初心者だし、高校に入ってから知り合った仲間だから、そんな動きはできない。


でも春からずーっと一緒に訓練した仲間だから、皆の動きや特徴がわかっているからできたんだ。


「春からずーっと一緒に活動してたし、訓練も一緒だったからできただけで、そんな事言われても・・・」

そんな俺の言い分を無視するように

「それだけじゃないんだよ、君津の時も姫様の時も、あの変態マン・・・・はすごい速さでモンスターに向かっていき、モンスターを引き付けているだろ、その間に仲間の女性探求者が皆を助け、その間もずーっとモンスターを傷つけて、最後にはモンスターを倒してしまっているだろ。

今までの我々の常識では、アサシンは斥候、感知とサポート、せいぜい毒かナイフで弱らせる程度だったんだ。

モンスターを引きつけるとか倒すなんて事はしなかった。ところが変態マン・・・はそれをやった。

そして君の戦い方もそうだったんだ。」


「はあ」


延々と話しが続きそうで、なんか話がくどいな~そんなことを思っていたら、昼休みの終わりのチャイム


「午後から実習なので失礼します」


そう言ってさっさと生徒会室を出た教室に戻った もちろんバフ掛け俊足で逃げてきた。

探求高校は実習最優先、いくら生徒会でも実習を妨げてはいけない。

一番入口の席で助かった~

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