第27話陽にプレゼント
【陽にプレゼント】
夏休みも残り1週間 俺とゆうと陽でヤマダダンジョン館へ
陽が1度行ってみたいとかで一緒に見に行くことに。
さゆりさんは大学の剣道部の夏合宿とかでダンジョンはお休み。
3日前に大谷さん達とめぐさん達8名でヤマダダンジョン館に来て、色々物色、気に入った武装の値段を確認して、その金額を目標にダンジョンでのモンスター狩りレベルアップのモチベーションに。
それを聞いた陽がゆうにお願いして、今日3人でここにいる。陽は完全にさゆりさんに憧れており、自分も刀が見たいと言うので、剣コーナーに
本人は今まで貯めていたお年玉全部を刀に充てるつもりらしい。
ずーっと見て歩くと、ピンからキリまで色々あるな~
胡蝶双刀は・・・・・・ないよな~
こっちの世界に来てからネットで調べたことがあるけど胡蝶双刀はあったけど、数は少ないし、どれもみんな幅広で短い、俺が欲しい胡蝶双刀は完全に特注になる。
あんな変わった武器を使うのは俺だけか~、ククリナイフ2刀使いとか、コンバットナイフ2刀使いはゲーム内でもいたけど胡蝶双刀はなかったもんな~
剣も色々、短剣コーナーから始まって、長剣は両刃、片刃、大剣、レイピア、そして刀。
刀も値段がピンキリ、ずーっと見ていると1個だけ特別なショーケースに入ったいかにも高そうな刀が、
「ゆう、これってさゆりさんの刀に似てないか?」
「ほんとだ、ヒヒイロカネ合金だって」
「ほんとだ」
ヒヒイロカネ?初めて聞いた素材、値段が・・・・・・1000万円
「うわ、たっか」
ゲーム時代なら中級に潜って1000万ビットを稼ぐ事もできたけど、今は全て現金・・・・・・
この前の報酬が1000万円・・・素材の買取もたまっているから別に変えない事はないけど、
「高いね」
「ゆうさん、これ、さゆりさんの刀ですか?」
「うん、まったく同じじゃないけど、似てる」
「そうなんですか、さゆりさんって装備まですごいんですね」
「うん、本当にすごいんだよ」
「ああ、あの人はすごいよ」
陽が目をキラキラさせて眺めてる。
兄としては買ってやりたい、買えない事はないけど、中学生が持つ刀の金額としては・・・・・・
3人でそこに立ち止まって見ていると 店員さんがやってきて
「この刀、すごいですよね 」
おいおい、どう見たって俺達高校生に買えるような物じゃないだろ、なんで声をかけるんだよ、そう思っていると
「実は、これ売り物じゃないんですよ、うちの社長が趣味で購入したものを展示しているんですよ」
なるほど、前の世界では日本刀をそんな感じでコレクションしている人がいるって聞いたことがあったな~。
「そうなんですね、でもすごいですね、ヒヒイロカネってそんなにすごいんですか?」
初めて聞く素材なので、素人っぽく聞いてみた。
それから延々と店員さんのウンチク説明。
やっと終わったけど、よくわかった。
この世界ではヒヒイロカネという鉱物が武具にはとても優れた素材で、地上の刀のような “鍛える” という作り方ではなく錬金術で作るという事がわかった。
俺が、
「とてもためになりましたありがとうございました。」
と言って去ろうとしたら
「あの、こういう貴重な素材を使った装備品って どんな所に売ってるんですか?」
さすが ゆう そうだよ、それ聞きたかったんだ
「ああ、こういう商品はね」
&%&‘$&$&’()!“#$%
そうなんだ、よし、それじゃあ
上野に行こう
もう、俺は陽に刀を買ってやろうって決めていたから、そのまま3人で電車に乗って上野アメウオコへ
さすがアメウオコ、前の世界では軍事用品やナイフ、ボーガンそれとガンゲーム、サバイバルゲーム用専門店があった所がダンジョン用品専門店になっていた。
小さいお店ばかりだけど、見るからに専門店。
確かにあるある。
1店舗ずつゆっくり見ていくと 刀がずらーと
おおお!
「ねえ、これも、ヒヒイロカネ合金だって」
500万円、さっき見たのに比べ半額、安い
「聞いてみようよ」
「ウン」
「あの~、この刀なんですけど、ヒヒイロカネ合金なのになんで安いんですか?」
50歳くらいのおじさんがギロっと睨んで
「ああ、これはな、含有量が少ないんだ、ヒヒイロカネ合金の刀は表示法で最低含有量が決まっているんだが、これはそれ以下なんだ、そういう商品はヒヒイロカネ合金と表示してはいけないんだよ」
「でもこれはヒヒイロカネって」
「まあ、厳密に言えば違法表示だな」
「はあ」
「まあ、売らなきゃいいんだから、捕まりはしないきっと、行政指導はあるかもしれないがな」
「でも、それじゃあ、500万円は高いですよね」
「ああ、値段も嘘だよ」
「えっ?」
「ほら」そう言って後ろの棚から刀を出して
「これは本物のヒヒイロカネ合金の刀なんだが、ショーケースの刀を見て、買いそうな客にこっちを見せるんだ、まあ、吊り、だな」
「そうなんですか」
「ああ」
「やっぱりヒヒイロカネの含有量が少ないと、弱いですか?」
「ああ弱い」
「そうですか」
「ただ、弱いと言っても、ダンジョン鋼や地上の鉱物で作った刀や剣よりははるかに強い、ヒヒイロカネは少ないが、ちゃんとアバンタイトが使ってある」
「アバンタイト?」
初めて聞く名前だ
「お前達、ニュースは見てるのか?」
「すみません」
「ヒーロー達が大量のアダマンタイト鉱石を発見して、話題になったんだが、調べてみるとアダマンタイトじゃなかったんだよ、アダマンタイトより軽いがその分弱い、当然ヒヒイロカネよりもな、ただ合金として使うには相性がいいんだよ、それで結局、ヒヒイロカネ合金用の素材や、工業用として使われるようになったから、ほとんど人前には出てこなくなって今ではそういう関係の人達以外知らない素材になってな。
ヒヒイロカネが足りなかったが、ちょっと変わった鍛冶・職人がそのままこれを使ってこの刀を作ったんだ」
「はあ」
「変わった奴でな、こんな素材を使うくらいならヒヒイロカネの含有量を増やしたちゃんとした刀の方がはるかに高く売れるのにな」
「はあ」
「まあ、それでも、ダンジョン鋼や地上の素材で作られた刀よりはるかに強いからな、まあ中級ダンジョンの中層くらいまでなら問題はないだろうな」
「中級ダンジョンを知ってるんですか?」
「まあな」
「えっ?」
「俺も3年前までは冒険者だったんだ、だが足をな」
よく見ると、左脚が・・・・・
さゆりさんがその場にいたら、元に戻っただろうに・・・・
そう思いながら
「そうなんですね、これって本当の値段はいくらなんですか?」
「はあ?聞いてどうするんだ? お前達のような初級者には必要ないだろ」
「まあ そうなんですけど、やっぱり上を目指すにはそういう事も知っておきたいし、目標になるじゃないですか」
「高校生か?」
「はい」
「そうか、これから頑張って上を目指すのか」
「はい」
「そうか、それじゃあ、豊島ダンジョの深層くらいまで行けたら100万円で売ってやるよ」
「100万円ですか・・・・・・じゃあください」
「はあ? 豊島の深層まで行ったらだぞ」
「はい」
「お前な~」
その金額だったら陽に買ってやる、そう思った俺は調査員カードを見せた。
「何?」
「ここだけの秘密です」
「ほお」
「カード払いできますか」
「ああ」
「じゃあ お願いします」
驚きながらも 淡々と手続きをして
刀を筒状の専用袋に
「勢いで100万と言ったが、本当はもっと高いんだぞ、大赤字だよ、まったく、まさかぼうずが調査員とはな」
そう言いながら刀を渡し、続いて小箱を渡しながら
「これが、ヒヒイロカネ用のメンテ用品だ、アバンタイトの優れた所はメンテがほとんどいらない、だから工業用品にも使われているんだ、ただこの刀にはヒヒイロカネが含まれているからな」そう言って俺に渡してくれた。
「はい、ありがとうございます」
そう言って刀を受け取り、陽にそのまま渡すと
陽は俺とおじさんのやり取りを、目をキョロキョロしながら見ていて、刀を渡されても、どうしてよいかわからないと言った風で、ゆうはそんな3人をニコニコしながら見て
陽に
「よかったね」そう言って頭を撫でた
陽はようやく自分の刀、それも結構良い品を兄からもらったことに 思いっきり笑顔に
「兄さん、ありがとう、うれしい、こんなすごい刀もらって、ほんとうにありがとう」
そう言ってきたので、ちょっと照れ臭くなって
「ここらへんでお昼たべようか」
「そうね」
「それじゃあ、おじさん、相談したいことがあるんで、明日も来て良いですか?」
「明日も? ああ」
「それじゃあ、ありがとうございました」
お礼を言ってお店を出た。
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