第26話だったら、3人で交渉

【だったら、3人で交渉】


近くにカフェがないか探し回り、ようやく見つけて中に入った。


「困りましたね」

「ああ、ここまで話が大きくなるとはな」

「はい」

「このまま言いなりになると、どんどんはまって抜けられなくなりそうですよね」

「そうだな」

3人が黙る、しばらくしてさゆりさんが

「引き受けない選択肢がないなら、こちらの我儘を通そうと思う」

「はい」

「1階層のみ、ボス部屋には入らない、国防の連中には挨拶しかしない

もし国防や協会に変な動きがあったら、その場で隠蔽、最大俊足でダンジョンから脱出」

「行方不明とかで騒がられたらどうしましょう」

「入口の監視員に挨拶して帰れば、大丈夫だろ」

「そうですね ちゃんと帰った事になりますよね」

「須藤さんには、1階層のみでボス部屋には入らないで帰る、という条件で引き受ける」

「はい」

「そうだ、報酬を吊り上げよう」

「そうですよ、武具もまだ全部そろってないんですから、武具を買うお金が必要ですもね、それが良いです」

「いいですね、それ」

「それじゃあ、戻るか」

「はい」さゆりさんが須藤さんに連絡し

再び協会ビル10階応接室

「決まったか?」

「はい、1階層しか入りません、ボス部屋には入りません。

それと、国防の人達には 挨拶くらいしかできませんがそれでいいですか?」

「わかった。その条件で進める」

「それと、報酬です。前回はただの学生でしたけど、今回は5大パーティーですよね。こういう特殊ケースって、特別ボーナスがでるんですよね」

「まあ」

「1人1000万円」

「1000万円?!」

「はい」

「それはちょっときついかも」

「そうですか、それじゃあ、変態袋マンはここで消滅します」

「いや、ちょっと待ってくれ、厚労省に掛け合ってみる」

「お願いします」

「わかった、来週までになんとかしておく」

「それじゃあ、1階層の件、国防とのやり取りの件と会わせてお願いします」

「わかった」


そう言って俺達は、この部屋を出たて家に帰るつもりだったけど・・・・・・3人で俺の部屋に


「まあ、須藤さんの件はこれでいいだろう」

「はい」

「今までは協会の要望に沿ってダンジョンにはいっていたが、今後は我々の装備品調達を優先する」

「はい」

「あとはのんびり、高校生パーティーのお手伝いだな」

「「ありがとうございます」」


それから1週間、陽の訓練と、俺とゆうの高校パーティーメンバーの訓練に付き合って、3人で中級ダンジョンに装備用素材集め、上級ダンジョンの上層部だけど久しぶりに感覚を取り戻すために入った。


1週間後、須藤さんから連絡が来て再び虎ノ門へ

当然、この1週間はダンジョンにはいっていない、という事にした。


「やあ、1週間ぶりだな」

「はい」

「まず、川越ダンジョンの件、1階層のみで話はついた」

「ボス部屋はなしでよろしいですね」

「ああ、大丈夫だ」

「次に、ボーナスの件だが、厚労省と管理局の折半でなんとか話しはついた」

「そうですか、良かったですね」

「ただ、調査員カードがな、一応君達とは別の人物という事になっているんだ、ダンジョンで顔に大けがをして、それで顔を隠している冒険者という事にしておいた」

「それは私達側の都合だからしょうがないですね」

「ただ、報酬は、君達に別の方の調査員カードに振り込まれる」

「えっ? じゃあ普通に使えないってことですか?」

「まあ、変態君と仲間たち(仮)の恰好でなら使えるが・・・・・・」

「え~、なんとかならないですか~」

「う~む、こういうケースは初めてだからな~、わかった、何か良い方法を考えてみる 」

「よろしくお願いします」

そう言って俺達は頭を下げて虎ノ門を出た。

「大丈夫ですか?」

「難しいかもしれないな、どこの世界でも、お役所仕事はそう融通がきくような物じゃないからな、我々現場の事情より自分達の利権争いが優先されるんだろう。

装備品も結局ほとんど自分達で調達しなきゃいけないんだし、須藤さんも同じ境遇者ではあるけれど、協会側の人間、少し距離をおいた方が良いだろう」


「そうですね」


須藤さんは同じ境遇者だけど、所詮協会の人間

同じように接するのはちょっと危ないと思った。

やっぱり本当に信用できるのは3人だけという事か



【2日後 また虎の門の10階応接室】


「やあ、今回は本当に申し訳ない」

そういう言い方をしてくるという事は、この前の条件が通ったんだろう

「なんとか君たちの要望どおり1000万円、調査員カードに振り込むようにした、ただ、1度変態袋マンと仲間達(仮)の調査員カードに振り込まれてから、君達へ振り込まれるから、1週間ほど時間がかかる、それまで我慢してくれ」

「はい、わかりました」

「川越の件だが、私の立場がもっと上ならば、君たちの要望を叶えるのも簡単になるんだが、今の協会の本部長は探冒省の天下りでね、探冒省の顔色を窺ってばかりでどうもやりづらい、本当に申し訳ない」

そう言って頭を下げてきた

「まあ、そちらの事情もあるでしょうけど、私達は他の冒険者とは色々違うので」

「ああ、それは十分わかってる、僕もがんばって上を目指す、そして君たちを守れるようになるから、それまで我慢してくれ」

「はあ」

まあ、須藤さんは本当にそう思っているのかわからないけれど、同じ境遇者として一応口ではそう言っているが、管理局の組織の1人でもあるから、さゆりさんの言う通り、少し距離をおいて付き合う事に、とりあえず川越ダンジョンの方は、その方向で決まった。

1度手続きのためカードを須藤さんに渡し、手元に戻った時、探究者カードの名称は『変態袋マンと仲間たち(仮)』のままだった。

「だって、仲間たちって、ねえ、美女じゃなきゃあ」はあ

当日までは、大谷さん達、めぐさん達、陽の訓練と俺達3人の装備用素材集めをすることにした。


//////////////////


今日は、訓練日


大谷さんはゆうに弓と魔法について色々教えてもらっていた


「レベルが上っていくとスキル枠が増えるでしょ、さゆりさんが言っていたように、アーチャーの場合バフスキルを取得すると、脚とか腕や手や目も強化され、強く素早く正確に矢を射る事ができるようになるの、それから炎魔法を取得すれば、訓練すれば矢の変わりに炎を矢として使えるようになるの、水もそう、レベルが上ると氷ができるようになって、それも矢に使えるの。


レベルが上あれば上がるほど、より強い矢になるからね、物理系の攻撃は自分にバフを掛ける、魔法系の攻撃は炎か氷の矢って感じで使い分けると、どんなモンスターにでも対応できるからね、


それに魔法系の矢はストックがいらないから便利だよ」

「そうなんですね、さすがゆうさん、すごいです。私がんばります」

「うん、がんばってね」

「はい」

一通り、指導してゆうが俺のところにやってくる


ゆうってアーチャーじゃなくてウィザードだよね~なんて思っていたら

「ねえ、なんで私の事、ゆうさん ってさん付けで呼ぶんだろう。


 陽ちゃんならわかるけど、大谷さん達って同じ学年だよね」

「そりゃあ、どう考えてもゆうはずーっと上のレベルに見えるからだろう? 同じ学年には思えないんじゃないの?」

「そう?」

「ああ、そのままの方がいいと思うよ?俺達の間ではゆうはさゆりさん寄りの冒険者って思われてるから、最初に皆で豊島に入ったときもゆうを年上だと思ってたみたいだし、もし同じ学年だってわかったら、皆すっごく落ち込むと思うんだ」

「そっか、そうよね、わかった、でもかっくんは幼馴染って言ってるから、今まで通りだと」

「うん、わかった、ありがと」

ゆうのその強さと経験値について、めぐさん達に怪しまれないか聞いたところ、ゆうと俺はさゆりさんから特訓を受けているし、幼馴染君は探求高校生でもすごいって、

実はDクラスは最低だけど、そこまく詳しくは知らせてないから大丈夫だそうだ。

まあ、そういう風に口裏を合わせておいた。


 さゆりさんは、プリーストとしての指導の他に陽に刀剣指導、そして伊達君と吉祥さんに大剣指導をしている。


盾の訓練については申し訳ないが、教本と動画での練習になるけど、さゆりさんや俺が剣や短剣で盾への模擬攻撃をしての実践訓練もしているので問題ないだろう

俺は、アサシンの指導なんで・・・・・・ないや。


訓練の成果を確認するため、週に1回だけどダンジョンに入ってモンスターを狩る。

俺達が須藤さんに豊島の調査報告を、まだしていないので、今でも探求高校では10階層までしか入れず、夏休みという事もあって、探求高校の生徒でいっぱい、

特に8階層から深層部分は上級性や1年のAクラスが独占。


彼らが勝手に協定を結んで探求高校の生徒には各階層の入り口に門番を立て、入場制限を行っているので、8階層もあふれ出して、俺達は結局7階層までしか潜れず、3年D、2年C、D、1年B、C、Dクラスで醜い争いが起こっている。


最初はCクラスの強さを見るには良いかななんて思ったけど、こんな状況じゃあダンジョンに入っても判断もできないし、訓練にならないので、解禁後にすぐにでも本調子に戻れるよう、ダンジョンの感覚を忘れない程度に入って、ゴブリンやラビットの素材を狩り取る程度。


なのでもっぱら、地上での訓練。


ただ、着実に実力がついてきていると思うし、それでも素材の買取はバイト代くらいまでにはなってきている。


その一方で、俺達は皆と一緒に豊島ダンジョンに入った時は、入り口で別れ、もう1度15階層より深層に潜り協会のノルマを果たす。


そして空いている日は引き続き、装備用素材集めのための中級を週1回、マジックバックのため宝箱探しとワーム狩りを行っている。



――豊島ダンジョン20階層での話――

調査も2往復目の時

相変わらず2人は、歩くペースを全く変えず淡々とモンスターを倒してどんどん下の階層に進んでいる


「まったく異常はないな」

「そうですね」

「これで調査終了かな」

「はい」

「さゆりさん、ゆう、そんな勢いで進んでいたら、異常が起こる前にモンスター倒しちゃって、どんどん下の階層に進んでしまっているんじゃないかって思うんです」

「そう?」

「うん、だって、皆、普通の速さでモンスターを倒していくんだよ、1日1階層とか2階層とかのペースだと思うんだよね、この前だって、君津達は、おそらくだけど、ようやく18階層のボスを倒して、休憩して、装備の確認をして 19階層に入ったら異常があったって感じだろ?

ゆうもさゆりさんも、簡単に19階層のボス倒してそのまま20階層行ってここもあっさりボス倒して21階層行ってボス倒して・・・・・って、他の階層のボスが別の階層に現れる時間なんか全然ないし、例えば、もし20階層のボスが移動して19階層に現れるような事があっても、その前に2人が20階層のボスを倒しちゃうじゃない」


「そうか、言われてみればその可能性もあるか」

「そっか」

「うん」

「問題なしと報告したのに、異常モンスターが発生したらまずいしな」

「はい」

「もう少しゆっくり進むか?」

「はい」

「うーむ」

「どうしました?」

「15階層から30階層は問題なし、と報告するつもりでいたけど、1度に全部の階層の調査報告は難しいな」

「そうですね」

「何回かに分けて、段階的に調査報告するとしようか」

「「はい」」


今まで一機に15階層から30階層まで回っていたのをやめて15―20階層を数回廻ってから報告する事になった。


どうもあの2人は自分のレベルが異常に高いというのを忘れているというか、自覚していないというか 困ったものだ。

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