第8話もう1人の境遇者

【もう1人の境遇者】

 ゆうがいつものように「おじゃましまーす」

 2人深刻な顔でうーん唸りながら

「どうしたらレベルを隠せる事ができるんだろう、ゆうだってばれたらまずいんじゃない?」

「うん、困ったね」

「まさかこんな事になるなんて思わなかった、隠せる方法がわからないと学校の皆と一緒にダンジョンに入れないよね~」

「私たちの他にも、例えば12神将の誰かがこっちに来てれば相談できるんだけどね~」

「だれか知りあいとかいるのか?」

「うん、あのレベル97の人」

「本当か?」

「うん」

 すげえTOP OF TOPを知ってるんだ

「どこに住んでるかわかる?」

「知らないけど、学校は知ってる」

「行ってみるか」

「うん」

 次の日、学校が終わってから2人待ち合わせて、トップオブトップに会いに行く、

「こっちにきてたらいいんだけど」

 ゆうについて行くと大学の門の前

「大学生?」

「そう、あっちでは剣道やってたんだけど」そう言って

 武道館に、中を見ると皆お面をかぶっているし、皆激しく動いているから垂れネームも読み取れず 全然わからない、練習が終わるまで そのままそこで座って待つことに

 30分くらいたって、休憩にはいったらしく、皆お面をはずし、給水タイム。

「あっ、いた」そう言って、手を振るとゆうにまけないくらいの超美形女子大生がニコっとちょっとぎこちない笑いをして、ゆうに向かって歩いてきた、この人がレベル97か、確か2つ名は『刀神』、ジョブはアークプリーストなのになのに前衛でモンスターを狩りまくってそんな2つ名がついた人。


「ゆう、どうした?」

「さゆりさんに会いたくなって」

「そうか」

「あの、練習が終わってからでかまいませんのでお時間いただけますか」

「ああ、もう今日はこれで終わりだから、シャワーあびてくるから待っててもらえるか?」

「はい」

「じゃあ」

 そう言って反対方向の扉に向かって行った。

「聞けるね」

「ああ」

「こっちに来てる感じだね」

「そうか?」

「うん、だって私の事、知ってたもん」

「そっか」

「もう、ずーっと“ああ”か“そうか”ばっかり、それに言葉使いも変!」

「ああ」

「昔みたいに話そうよ」

 小学校4年から、高値の花でどんどん遠い存在になって、都会の女子中高に通うと聞いてからは、俺とは住む世界が違うんだって早々に諦めた女子、それからも時々家の近所で見かけたけど、見るたびにどんどん綺麗になって、俺はいくら都内とはいえ、端っこの方でそれもずーっと地元にいるから、ゆうは見るからに都会の女子高に通うお嬢様って感じがして、話しかけられても緊張して二言三言かわしただけで用事もないのに「これから用事がるから じゃあ」とか言ってすぐにその場を離れて、1人になってからどきどきしながら 本当に綺麗になったな~、なんて思っていた。


 そんな女子がこんなに近くに、ずーっと一緒にいるんだ、それもゲームで一緒にパーティーを組んでいたフレンドだったなんて、そりゃあ緊張するよ

「じゃあ、私が昔みたいに話そうか? ねえ、かっちゃん?」

「えっ?」

「えっ? じゃなくて、かっちゃん?」

「・・・・・・」

「ゆうちゃん、でしょ?」

「いや、その、もう高校だし、“ちゃん”はちょっと・・・・・・」

「じゃあ、それは許してあげる、でも、ほらもっと普通にね、あの頃みたいに、ね?!」

「ああ」

「だから、ああ、じゃなくて!?」

「うん」

 こんなに側で話ができて、こんなに風に言ってくれて・・・緊張するけど、うれしい

 そんな会話をしているとさゆりさんは着替えが終わったらしく

「待たせたな」

「ここらへんでお話できるようなところってありますか」

「そうだな、昔ながらの落ち着いた雰囲気の喫茶店があるからそこにするか」

「はい」

 そう言ってさゆりさんの後ろをついて行き、昔ながらの喫茶店に。

 古いけれど綺麗で落ち着いた雰囲気の喫茶店だった 

「で、どうしたんだ?」

「わかってますよね」

「何が?」

「私の事を知っていると言う事は、12神将『刀神』のさゆりさんですよね」

 さゆりさんはビクっとしてから、厳しい顔付で今度は俺を睨む

「大丈夫です、彼は私の幼馴染でレベル85です」

 それを聞いたさゆりさんはホッとした顔をして

「そうか、ゆうと君も同じくこっちに来た、という事か」

「はい」

「驚いたな」

「はい、最初は何が何だかわからなくて、誰にも相談できないし」

「ああ、周りの環境が、全てが違っている感じがして 驚いたよ」

「さゆりさんは、今まで何をしていたんですか」

「何もしていない。調べていくうちに、今ダンジョンに入るのは色々な意味で危険だと思った。

 だからもう少し状況がわかるまで何もしていないなかった」

「そうですか」

「でも2人とも私と同じ境遇というのがわかって少し安心したよ、ずーっと私1人だけかと思っていたから」

「私たちもです。2人だけかも、って」

 それから、俺は自己紹介と今まであった事を全部話すと

「そうか、君は最低クラスの落ちこぼれか」

 いや、そこじゃないだろ、それよりもっと大事な事があるだろ。

「確かに、どうもこの世界、というか日本ではレベル70が最高のようだから、私たちのレベルはかえって怪しまれる、そもそも、私たちのレベルが本物なのかもわからないし」

「はい、そうなんです」

「今度の日曜日、時間はあるか?」

「はい、でも、どうしてですか?」

「3人でダンジョンに入ってみないか」

「でも、入口には監視員が」

「君はアサシンの上級職なんだろ」

「はい」

「君はジョブスキルで隠蔽は使っているよな」

「はい」

「だったら、隠蔽スキルで入れば見つからないだろ」

「ダンジョンの外でも使えるんですか?」

「ああ、この前使ってみたけど、誰も気づかなかった」

「そうなんですね」

「ゆうはスキル枠に空きはあるか? あー、この世界でスキル登録ができるか確認しないとな」

「はい」

 そこで3人ともステータスを開きスキル枠を確認する

「枠は以前のままですね」

 そう言いながら操作してみると、ゲーム時代と同じように操作できたので

「いけそうですね」

 特にこれから、この現実世界で上級ダンジョンに入るには俺達3人は必須スキルになるから、隠蔽の取得は最優先だ。

「これで行けるな」

「はい」

「あっ、でも装備が」

「ああ、そうだな、マジックバックが使えないからな、だから、レベルの確認だけでモンスターはなるべく避けたい、積極的に倒すわけじゃないからな、とりあえず今回は現世界のそれなりのものを買うしかないだろうな」

「はい」

「それじゃあ、日曜日、川越駅に9時でいいかな」

「はい」

 連絡先を交換して、そこで別れ 2人

「よかったね」

「ああ、うん」

「でも、3人か~」

「まだ他にもいないかな~」

「そうだね」

「とりあえず3人いるから何とかなりそう」

「ああ、うん、よかった、俺達2人だけだと何をどうすればよいかわからないことだらけだし、確かにこのスキルを使えば監視員を気にせず潜れるから助かる」

「笑っちゃうよね、今までと違うスキルの使いかたするなんて」

「うん、ところでかっくんは、スキル枠に何入っているの?」

「えーとー、バフとデバフと電撃、残りの空枠は4つ」

「私は、弓最強と超エンチャントと超隠蔽と、空は5つとサブスキル枠1つ」

 最強?超? 空欄枠が5つ・・・サブスキル枠?

 俺そんなの持ってないぞ・・・・・・

 ゆうのレベル88はおかしい、こいつ本当は90超えているんじゃないか?


 ///////////////////

 このゲームは、スキルについてはとても簡単で、ジョブを登録すると、そのジョブに関連する・必要なスキルが自動で身に付く、これをジョブスキルと言い、俺のジョブはアサシンだから、隠密、跳躍、探索、短剣術、毒付与、などのジョブスキルがレベルアップとともに自動的に付いてくる、最初は全部ついてくるわけではなく、レベルが上がったら新しく増えたり、今までのスキルがグレードアップしていくような仕組みだ。


 例えば探索スキル、最初は前方50mのところにモンスターがいると、その周辺がゆらゆら動くだけの感知スキルだけど、それが索敵スキルにアップし、今の俺は、探索スキルにアップし、半径1km先のモンスターの存在が1匹づつ点で感知できる。

 弱いモンスターはピンクで強くなるに従って赤が濃くなり、自分のレベル以上のモンスターは濃い赤紫、そして同業者(人間)は青い点で見える。


 さらに、宝箱なども探索と罠検知が見え、誰よりも早く発見し、罠があればそれを解除、中身次第だけどうまくいけばアーティファクト級のお宝をゲットできる。

 今まで、結構これでお宝をゲットし、俺とゆうで山分けしてきた。

 でも、マジックバッグに入れていたから、この世界ではもう使えない。


 ゆうの場合、ジョブはウィザードだからレベルが上がっていくに従って使える魔法が増え、そして今まで使っていた魔法は威力が増大し、初、中、上、強・・・と変わっていく、といったところだ。

 そしてその他に【スキル枠】というのがある。

 これはレベルが上がっていくと枠の数が増え、自分のジョブスキル以外のスキルを取得することができる。

 ただ、1つの枠に1つしか取得できないし1度登録(取得)すると替えることはできない。


 例えば魔法というスキルはなく、土魔法、水魔法、火炎魔法、電(雷)撃魔法・・・の魔法それぞれスキルが1つの枠に1つのみになるので、アサシンである俺の魔法は、登録した電撃魔法しか使えない。


 よく考えていると、俺が深くナイフを刺したところにゆうが電撃を打ち込んだ方が効果はある。


 まあ、最初はソロだったから、その時電撃魔法を登録(取得)したけど・・・・・・。


 まあ、これがこの世界でも同じなのか心配だったけど、さゆりさんに言われて空スキル枠を見てみると、ゲームの世界と同じで助かった。


 ゆうはアークウィザードだから足はそれほど速くないし俊敏に動けないけど、スキルはそういう仕組みだから俊足を登録した場合、俊足にはなるが、それのみになってしまう。


 しかし、エンチャントというスキルがあり、ゆうはウィザードなのでエンチャントを足にかけると足の動きが俊足且つ俊敏になったりするし、装備等にエンチャントをかけるとより強力な魔法が付与される、俺も投擲ナイフにゆうの魔法を付与してもらっているくらいだ。

 だからウィザードのゆうは、俊足とかバフを登録せずエンチャントを登録すれば自分のスキルにある魔法全て、何通りにも有効に使えると言う訳だ。


 ちなみに俺はアサシンだから、エンチャントスキルを取得してもエンチャントする魔法が1つしかない。


 俺の場合はバフスキルを取得し、その時に合わせ自由に体力強化だったり俊敏・俊足アップを使い分けていた。

 エンチャントもバフスキルもオールマイティなとても便利なスキルなので、探求者(冒険者)はたいていスキル枠ができると、まず最初ジョブ特性によってエンチャントかバフスキルを登録する。


 今の俺のレベルではバフは3重までしか掛けられないけど、超がつくとどうなるんだろう……ゆうは、このスキルに超がついている……

 “超”“最強”って初めて聞いたんだけどゆうはさらっと言っていた・・・・・・??

 やっぱりあやしい88?



 ////////////////////////

 俺はアサシンだから 魔法特性はなく、軽装備で速さ重視のためバフと電撃魔法を取得し、モンスターを倒すためデバフを取得していたが、それ以外はまだ必要ないというかこれから必要になるスキルがあるかもしれないと思って空きのままにしていた。


 次の日の放課後、2人でホームセンターに行って使えそうなものを買う。


 俺はゲーム当時と同じような装備と思い、胡蝶双刀を探したが・・・あるわけない、ネットで調べても俺が使っていたような形ではなかった。しょうがないからコンバットナイフ、投擲ナイフ、鉈を探すけど、それもやっぱりゲーム内で使っていたような物はなく・・・・この世界の物はちょっと不安、だからなるべく頑丈そうな普通の刃渡り30cmのコンバットナイフを2本、鉈を1本、投擲用ナイフはゆうのエンチャットの付与がなければ上級ダンジョンではあまり役にたたない。


 今回はゆうのエンチャットが効くのかを確かめるため、とりあえず1本だけ。


 ゆうは、かなり悩んでいた。


 アークウィザード用の装備なんて100%その世界特有のものだから、魔法を貯めたり放ったり、増幅させたりするのが主目的で、攻撃や守備は副次的だけどゆうは、特注の30cmくらいの先っぽと刃をつぶしたダガーナイフを太くしたような形状でグリップのついたロッド(杖)。

 そんなものホームセンターにあるわけがない・・・と思ってアウトドア―コーナーの隣を見たら、ダンジョンコーナー?

 う~む、そうだ、この世界はダンジョンが普通に存在するんだった。

 俺もそっちで探そっと、

「ゆう、ひょっとしてダンジョン用装備品ショップもあるかもな」

「うん、私もそう思った」

「今度、探して行ってみようか」

「うん、3人で」

「そうだな」

 結局俺は二刀流なんだけど、全部特注品なので、この市販の装備では形状も長さも違うし、そもそも性能に不安があるから、今回はレベルの確認だけと思い、結局最初に買おうと思ったコンバットタイプの長めのナイフ2本、鉈1本、投擲用ナイフ1本にした、お金もないし。


 そしてゆうは 俺が見ても初心者用とわかるような弓と矢と護身用のナイフ1本、ロッドは見当たらず今回はあきらめた。


 弓を振りながら

「軽いね」

「そんなもので大丈夫?」

「これ自体はダメだけど、弓と矢の両方に

 魔法付与して使えばなんとかなるかな」

「そうか」

「うん」

「それより、これって、普通のナイフと普通の鉈でしょ? 投擲用ナイフも1本で大丈夫?」

「ああ、心もとないよな」

「これじゃあ、かっくんなんか全然戦えないよ」

「ああ、でもしょうがないよ、当分はこれで我慢する」

 こんな装備に不安があるけど、それでも日曜が待ち遠しい。

 今週はずーっとオリエンテーションだけだから学校では何もなくて助かる。

 ゆうも学校が始まっているのに、それでも、毎日俺の家に来る

 もともと小学校時代から高値の花と思っていた相手だし、この世界に唯一同じ境遇者なわけだから一緒にいられのるのはうれしいんだけど、ゆうはどう思っているかわからないのが……


 2人でいると、時々陽が部屋に来て、ダンジョンの話を聞いてくる。

 この世界でも、同じように陽は頭がよく、バレー部では司令塔と呼ばれる完璧少女だった。


 そんな陽が、いつ一緒に入れるか、入るなら祐子さんも一緒に3人で入ろうとか、目をキラキラさせてくる。

 本当にこの世界はダンジョンがメジャーな存在なのだ。

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