第9話試してみる
【試してみる】
ついに日曜、2人で朝早く電車に乗って川越へ
わくわくして予定より早く着いてしまったので、ぼーっとしながら待っていたら、
さゆりさんがやってきた。
それでも、待ち合わせ時間より30分も早く全員そろってしまって、
「予定より早いけど、行くか?」
「「はい」」
遠目で監視員がいるのを確認し、3人で顔を見合わせ頷く、隠蔽を掛けると3人ともふわーと消え、
3人はお互い半透明のような感じだけどちゃんと見えるけれど監視員にはまったく見えていないようだ。
音を立てないように監視員の横を通ったら、ピピピ、感応センサーが鳴ったので ゆうがあわてて風魔法で入口にある小石や草を思いっきり飛ばし 3人は俊足で先ほどいたところまで戻る。
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「なんだ?この突風が原因か?」
「ああ、誰もいないから、おそらくそうだろうな、日報にはそう書いておこうか」
「いちおうセンサー感知時のモニターチェックを依頼しておくか」
「ああ、そうだな」
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甘かった。
探索スキルを忘れてた。
あわてて探索全開
「すみません、探索スキル使うの忘れてました」
「いや、私も気づかなかった、気にするな」
よく見ると、入口付近に赤い靄が漂って見える。
「はい、赤い靄がかかっているように見えます」
「温度感知か? ゆう、氷かなにかで温度感知を誤魔化す事はできるか?」
「はい、体の表面を外気温度と同じにする事はできます」
「まあ、確かに監視員3人だけなはずはないか」
「そうですね」
「人感センサーとおそらく温度感知センサーのようですが、他は、わからないです。他にもあるんですかね~」
「わからない、でもこれ以上ここで悩んでも仕方がない、ゆう、外気温調整と突風の同時掛けを頼めるか?」
「はい」
「それじゃあ、この2つを同時に掛けてもらい、念のため顔を隠して最速で通り抜けるか」
「そうですね、それでだめなら、もう他に手はないですから」
「そうだな、じゃあ、行くぞ」
隠蔽をかけ、バフをかけ、そして念のため顔を隠し
ゆうが2つ魔法を同時に掛け、突風で石ころや葉っぱ、ごみが宙を舞う、そこを最速で通り抜け、200mほど入ったところで、俺は探索スキルで聴覚・視覚感度アップをして監視員の様子を見る。
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ピピピ
「おい、また突風か?」
「おかしいな、コントロールセンターに問い合わせてみるか」
「そうだな」
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隠蔽状態の3人
「さゆりさん、監視員なんですけど、コントロールセンターに問い合わせするみたいです」
「そうか、もう少しここで様子を見るか」
「「はい」」
20分くらいたっただろうか
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「コントロールセンターから何か言ってきたか?」
「20分以上経ってるけど、何も言ってこない、どうする?」
「もう1度聞いてみるか」
「そうだな」
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「何もないそうだ、さっきの突風で人感センサーが誤作動したんだろう、という事だ」
「そうか」
「まあ、隠れてここに入るような命知らずはそういないだろうしな」
「豊洲(中級)のダンジョンならまだしもここはそうだよな」
「ああ」
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「突風が原因、と言ってます。大丈夫そうです」
「そうか、これからはこの方法で入るしかないようだな」
「「はい」」
「じゃあ行くか」
「「はい」」
いよいよダンジョンの中、この世界に来て初めてのダンジョン
ゆうと俺はゲームから3週間ぶり
妙に懐かしい、そう思っているとさゆりさんも
「なつかしいな、ほんの数週間ぶりなのに、妙に懐かしい」
「「はい」」
「さて、こっちの世界のダンジョンは初めてだから、1階層からゆっくり行ってみるか」
「「はい」」
3人でゆっくりボス部屋に向かって歩いていると、最初に出くわしたのがハイウルフが3頭
同じハイウルフでも、下層部のハイウルフより弱い
なんで同じ名前なんだろうってくらい違う
「ハイウルフ? 1階層か・・・どうする?」
「俺が1頭やってみてもいいですか」
「じゃあ私達がそれぞれ1頭ずつやるか?」
「「はい」」
「よし」
俺は念のためバフを2重掛け、ハイウルフに向かって走り出す。
戦い方は下層のハイウルフと同じだけど、上層のハイウルフは反応が遅いから楽。
俺が飛び上がった瞬間、ゆうが火炎魔法で1頭を黒焦げに、
もう1頭は、俺が後ろからコンバットナイフを首に刺して電撃を放つ
残りの1頭は、いつのまにかさゆりさん倒していた。
思ったよりあっけなく倒せた。
バフ掛けはゲームの時と同じだ、別の意味で懐かしい。
「私達のレベルはこの世界でも、前の世界のまま使えそうですね」
「そのようだな、一応ボスを倒して2階層に行くぞ」
「「はい」」
1階層の他のモンスターも倒し、ボス部屋のボスも簡単に倒すと、同じようボス部屋の奥が扉のように開き2階層へ
ゲームの時と同じ感覚で動くことができたので、最初レベル確認のため、モンスターは倒さない方向だったけど、結局3人で代わる代わるモンスター、ボスを倒し
何事もなく進んだ
「装備が心配だな、ここで一休みして装備の点検をして、もう少し下まで行ってみるか」
「そうですね」
マジックバックがないから、荷物は最小限に持って来たので、コンビニで買ったサンドウィッチを食べ、ペットボトルの水を飲む
「やっぱりマジックバックがないと、深く潜るのが大変ですよね」
「ああ、この世界ではマジックバックはどうやって手に入れるんだろう」
「はい、絶対必要ですよね」
「あの、ダンジョン用装備品店があるみたいなんです」
「ああ、そうみたいだな、今度行ってみるか」
「はい」
マジックバックもないし、今回の目的は腕試し、だからモンスターのコアは採取せず、宝箱とドロップ品が出た時のみに注視して、他はそのままにしてひたすら下の階層を目指す。
そのまま3階層のボスを倒しここでどうするか相談
「一応、今のトップパーティーの到達最深部は、5階層だったな」
「はい」
「それじゃあ、5階層のボスを倒すところまで行ってみるか」
「「はい」」
ここは5階層、ここはハイウルフではなくてスケルトンウルフ、こいつを3人で倒し、スケルトンオーク3体をそれぞれ1体づつ倒す。
確か5階層はボス部屋のような空間がない、その代わり一番奥の壁の近くにアンテッドが2体、その壁を守るようにして立っている。
そのアンテッドを倒すと その壁からフワ~っと ゴーストが現れる、これがボス。正式な名前は忘れてしまったたけど、とても長い名前なので皆はゴーストと呼んでいる。
「ミレミアムホーンテッドゴーストレイスだよ」
さすがゆう、思い出した、そうだ、なんでもありのとってつけたような名前、長すぎて覚えられない。
アンデッドは物理攻撃が効果があまりないがゴーストはアンデッド以上に物理攻撃は効かないのだ。
さらにダンジョン内の壁をすり抜けるので攻撃してもなかなか当たらない、おまけに早い時間でアンデッドが復活するので時間がかかりすぎると大変な事になる、さらにゴーストは強力な呪詛を放ち、倒せないで、いら立っていると、隙を狙って、死角の岩壁からふわーっと現れ呪詛を受けてしまう。
呪詛をうけた人間はその場で倒れて動けなくなりそのまま10分もすれば死んでしまう、呪詛を受けてしまったら上級の解呪ポーションを飲むか、上級レベルのプリーストによる解呪をかけてもらうしかない。
一見上級ダンジョンにしては弱そうに見えるけど、かなり厄介で、戦ってみると、その倒しにくさでは上級ダンジョンのフロアボスだと納得せざるを得ない。
俺達2人の時はプリーストがいないから、俺は呪詛に掛からないよう小刻みに走り回って、壁に逃げ込まれる前に電撃を放しながら攪乱させ、動きが鈍くなってきたところを狙って、ゆうが壁をすり抜けて逃げてしまわないように土魔法で囲い込んで逃げ場をなくして、俺の電撃かゆうの電撃をビリビリ流すことでゴーストを水族館にいる半透明で光る深海魚のようにクネクネさせる。
そのうちゴーストが萎んで消滅、最後はコアだけが残る。
「ちょっと試してみたい事があるんだ、私にやらせてくれないか」さゆりさんがそう言って
ゴーストに向かって浄化ではなくヒールをかけるとゴーストがもがき苦しみだす、
半透明だったゴーストが実体を持っているような白い姿に変わる、生き返らせちゃうの?
そこをまぐろ解体ショーで使うようなかなり長い包丁?みたいな刀で一刀両断。
ヒールにそんな使い方があるんだ、そう関心しているうちに簡単に倒してしまった。
ヒールをそんな風に使えるのはさゆりさんだけのような気がする、おまけにあの剣裁きも。
「本来なら浄化で消すと一発なんだが、ヒールを試したくて、ちょっと面倒な方法だけど、倒してみたが、うん、いけそうだな。ただ、やっぱりちゃんとした装備が必要だな」
「はい」
今日は自分のスキルがこの世界でも使えるか試すのが目的だから、とりあえずここで帰る事にした。
帰還用移転魔方陣を探すと、ゲームの時と同じようにゴーストが出てきた壁にうっすら浮かび上がっていたので3人手を魔方陣に手を付けるとフワっとした感覚と共に、数秒で1階の移転部屋に戻ることができた。
「今の装備だと心持たないから、今日はここまでかな」
「はい」
「来週も大丈夫か」
「はい、あっ、でも、装備品」
「そうか、そうだな、じゃあ、来週は、その武装具屋で武装品をそろえるか」
「はい」
3人で池袋に向かって電車で帰る。
池袋でさゆりさんと別れ、ゆうと2人
「さゆりさんって、なんでもアリだな」
「うん、プリーストの最上級職なのに、剣が大好きで、あんな2つ名がついたんだよね」」
「そうだよな、あんな倒し方、初めて見たよ、そんな事もできるなんて、やっぱ頂点はちがうな~」
「うん、プリーストなのに攻撃が大好きで、いっつも前衛で刀を振ってるの、でも今回はダンジョンが現実になったから、ヒールを試したんだと思う」
「そっかー、確かにケガはいやだよね、アークプリーストで『刀神』って2つ名は伊達じゃないな、さすがトップオブトップ、やることが違うな、まあ、でも、ゲームの時のレベルのままで戦いができそうで良かったよ」
「そうね、装備品とマジックバックがあればね」
「うん」
「手に入るかな」
「そうだよねえ」
「うん」
日本のトップパーティーの最深階層は俺達にとっては普通だった事が大きな成果
「あっ、レベルの隠蔽」
「あっ、そうだ、3人で川越のダンジョンに入るときは隠蔽で入れば問題ないけれど、学校の皆と入る時はやっぱり必要だよね、どうしよう」
「とりあえず、さゆりさんにレインで相談しよう」
「うん」
あと、問題はお金、ゲーム内ではビットで全装備をそろえることができたけど、この世界はどうなんだろう
調べなきゃいけない事が多すぎて結構大変、
明日からまた学校が始まるし、
「ゆう、この前の友達とダンジョンに入るの?」
「うん、少し練習してから入ろうって言ってる」
「そうか」
「皆装備品はどうする?」
「初級ダンジョンだから、今回みたいな感じかな」
「そっか、初級だからな」
「うん」
さゆりさんにレインで相談したところ、明日こっちに来てくれるという連絡が来たので、学校が終わったら3人で待ち合わせる事になった。
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「さゆりさん、この世界のトップですが、5階層に到達しただけで、まだ攻略してないみたいですよ」
「えっ?そうだっけ、いや、すまん、思わずゴーストを倒してしまった」
「まあ、どっちでもいいと思いますけど」
「そうだな」
[「はい」」
結局宝箱もドロップ品なかったので、コアもどう処理していいかわからないからそのままにして帰ってきた。
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