第42話 祭典を優先した結果

 カクヨムコンの規定文字数に追われていた二ヵ月間、なるべく早く帰宅していました。布団の力に負け、朝早く起きて作業できなかったことが影響していたのです。平日は電車の中と夕食後に執筆し、少しでも新しいアイデアを膨らませようとしていました。見切り発車でラストの構成がないまま書いていたため、先行きが分からなすぎて不安になりながら。


 無事に規定文字数をクリアし、読みに行けていなかった作品を怒涛の勢いで巡り、年に一度の採点は大満足で終わりました。


 その二ヵ月後、私は別の祭典に追われることになります。

 学年末の成績処理です。


 高校入試で消えてしまった授業の関係上、三学期のテストは二月中旬に実施できません。レポートは建国記念日の振り替え休日やら天皇誕生日で書いて来なさいと言えたのですが、テストは遠隔でできず。


 レポートの採点に追われながらテスト対策を作り、新たな採点を抱えながら授業準備をしなければいけない二週間が始まりました。


 早く帰っていた二ヵ月間に、仕事の分量を分けてあげたい。そう後悔したことは数えきれません。十二月のときに三学期の授業準備をもう少し進めておけば、余裕をもって採点できたのでしょうが。


 あまりにも準備が間に合わなかったときは、学習した評論文に関連した教材を作りました。iPadで見られるようにデジタル資料のリンクを張り、絵巻物を実際に見た感想を書かせたのです。


 理想はレプリカの巻物をグループごとに見せて、質感も味わってもらいたいところでした。一番後ろの席でスクワット応援もどきをしたり、ペットボトルを投げつけ合ってあろうことか別の生徒に当てたりする要注意人物達のいるクラスでは、オンライン資料で十分な気がしました(ちゃんとする子が多いから、情けないのが目立つぞ……)


 考えを具体的にさせる作業は手抜きをしません。面倒だったと感想に書いた生徒に「どこが面倒だと思った?」と訊き、何がの部分を引き出します。


「ちょっとしか見れないから」

「そうだよね。iPadでスクロールするのは違うの?」


 こくり。


「じゃあ、今話してくれたことを付け足しておいてもらえる?」


 文章を読ませる時間も大切だけれど、考えを文字にする時間も同じくらい必要です。絵巻物に書かれていた変体仮名の解説もできて、心の中ではご満悦でした。大学生で学んだ知識に再度触れるとテンションが上がります。ただし、授業準備で「む」だと認識した文字が「者」を崩した「は」だったことが判明して、鑑定眼のレベルが落ちたことに頬は引きつってしまいました。


 生徒には「この字は『む』だと思うよね。だけど実は『は』なんだよ。元の字は漢字の『者』で、漢文だと平仮名『は』で直すよね」と復習を入れながら話しました。後で生徒の感想を読みながら、件の字の横に漢字「者」と「は」を書いてくれたものがあることに気づき、話を聞いてくれた喜びに震えました。


 公式自主企画の猫の日作品でつかの間の癒しを得ながら、入力を終えた年度最後の採点の祭典。安堵する間もなく次年度の準備が始まる三月も、すさまじい勢いで消化されていくのでしょうね。


 とにかく癒されたいのと甘いもの読みたさに、宇部松清さまの「サワダマチコのホワイトデー」


 https://kakuyomu.jp/works/16818023213353522894


 の二次創作を書きました。公式が書かれるのではないかなと思い、ボツになることを覚悟しながら温めていたネタでしたが、私の想定を遥かに超える尊さのおかげでお蔵入りは免れました。


 二次創作のキャッチコピーは「同じになる訳ないじゃん!」とツッコみたくなる甘い響き。本家の白南風くんに言ってもらった日にはもう、この身が消滅しそうです。


 羽間さんの二次創作楽しみですとおっしゃってもらえる方々のおかげで、書き切ることができました。一話ごとに糖度が増していきますので乞うご期待!


「本命彼女だけにお返ししたいもの」

 https://kakuyomu.jp/works/16818093073216841533


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