第39話 積み上がらない理由

 昔できていたことは、年月を重ねてできなくなります。逆上がり、木登り、ダンゴムシに触ることなど。無垢な子どもだったからこそできたことは、少なくありません。


 新しいものを記憶する力もしかり。人の顔と名前を忘れっぽくなる大人の立場では、高校生の記憶力が羨ましくなります。


 しかしながら、冬課題を範囲にしたテストでクラス平均四十点を切られてしまうと、羨ましさは激減します。八十点代を取ってくる生徒がいるおかげで、百点満点だったことを思い出せます。


 助動詞六種類と文章問題二種類は、正直なところ高一の二学期に学んだ内容でした。休暇のうちに基礎を定着し直してもらいたかったのですが、例のごとく解答の丸写し。そんなところで見栄を張るくらいなら、テストで成長ぶりを発揮してほしいのですけれど。


 もう受験まで一年を切っているというのに、二年生は危機感がなさすぎます。学力試験だけで勝負しないといけなくなったとき、点数が上がらない古文漢文に苦労する未来が見えます。


 課題の難易度を下げても、学力が定着しない理由はなぜか。その理由は、朝のホームルームで糸口を掴めました。某オンライン学習アプリを朝学として取り組ませているのですが、問題文がすべて表示される前に選択肢を選ぶ生徒が複数いました。


 こいつ、選択肢を暗記してるぞ!


 間違えた問題を繰り返し出してくれるアプリの特性を、悪用されていたのでした。活用の種類や助動詞の接続、基本を扱ってくれているのに、それすらも分からないから記号を暗記するのは自分のためになりません。むしろ記号ではなく基本の方を暗記してほしいものです。九九の要領で!


 三年の夏から本気で勉強し続けて一般後期まで頑張れる人は、ほんのひと握りです。三者懇談で担任からお勉強をしっかりと釘を刺されたことは、もはや記憶にないのでしょうね。学校でゲームしに来ている気にさせられます。


 解説を読まずに、次の問題へ行くな! 古文の解き方が分からないなら、授業担かつ副担の私に聞け!


「ストップストップ! この問題の解き方は……」


 教材の表を見せながら解説してあげるのは、自己満足になってしまうのかもしれないけれど。勉強方法の手本をほかの生徒にも聞かせることで、現状が少しでも変わってほしいと願わずにはいられません。

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