2話目

西武新宿駅で準急列車に乗って

これから自分が3年間を過ごすことになる高校へ向かう、ひとつひとつ駅を停車していく事に窓からの眺めが寂しくなってくる。

さっき東京に着いたのに、もう東京を離れているような感じである、実際横田の高校は偏差値的には中の下程度の都心から離れている高校だった。

東京にほとんど行ったことない横田は中学の先生と話をしてる時に「ここ、本当に東京ですよね?」と何度も何度も念を押した。

「自転車で10分も走ったら埼玉だけどな」とイヤミな先生であった。

駅の東口から出て自分の家の近くの住宅街とさほど変わらないような街を道を右へ左へと進むと、自分のこれから生活していく寮を見つけた。

門を潜り3つある三階建ての寮の1番汚い方が高一になる横田の寮である。

寮の前には多くの自転車が並んでいる。寮の隣にある貼り紙を貼れる壁には部活動の勧誘チラシがぎっしりと貼ってあった。一応、生徒に1人にひとつ部屋があり、ワンルームの小さな部屋ではあるのだが、しっかり郵便受けはちゃんと全部あり、自室である205号室を見ると去年の生徒の仕業か、郵便受けの名前の部分に直に「八木」と書いてある。横田は指に唾をつけて消してみたが消える気配がない。油性マジックらしい。


非常ベルのような音が微かに聞こえてきたのは、横田が階段を上がり始めた時である。1段上がる事に音が大きくなってくる。2階に着くと、左右にびっしりとドアの並んだ廊下が延びている。自室の前に立った時、その奇妙な音の正体がわかった。

誰が張ったのからお隣、203号室のドアに「目覚まし うるさい!」

と書かれた紙が張ってある。当の住人は留守らしい。

初めての一人暮らし(寮だけど)。そのドアを初めて開ける感動的な瞬間なのだが、隣の目覚ましが気になって仕方ない。

ガチャリ


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