『掌編小説集・星花ワルキューレ(ほしはなワルキューレ)~咲誇れ!気分はフラワー騎士(ナイト)~』

2環乃ことり 

ACT.2 『花々の休日』



-馬堀海岸四丁目交差点-


信号が青に変わった。

その先に見える海の向こう。そこには、洋上に浮かぶ皇国R.A.D.I.U.S.があった。

あそこにはフラワー騎士たちの園、『花の扉』がある。


元気な声で、炎花ほのかがみんなを呼んだ。

「みんなー、早く速く」

「海が見えますよー」


「さぁさぁ。ここがスタート地点ですよ」

海岸沿いを歩き始めた少女が5人。


暫くして、ライラが言った。

「いつまで歩かせるつもりだ?」早くもライラが炎花に苛立ちをみせる。


「少しは歩いた方が、美容にはいいんだよ」

「特に、ライラちゃんにはね!」

「くっくっくっ」

炎花のいやらしい笑い声が、疲れを増大させた。


その後、

見事に海岸沿いの道を歩き切った少女五人..。



「みんな、お疲れ様。」

「あの高台の建物」

「あれが横須賀美術館なんだ。レストランもあるんだよ」

炎花が誇らしげに言った。


館内を満喫した炎花他四人の少女。

いや、満喫したのは芸術好きの炎花だけたったかもしれない。



「とても良かったね。またみんなで来ようよ」


下を向いて黙り込む5人。


場の雰囲気を変たい炎花が、小さなカメラを構える。

「みんなで写真を撮ろうよ」

その行為が炎花の優しさだった。


容姿端麗な少女たち。カメラを向けられれば、その気である。

流石は、リコーGR。写りが良い。



帰り道、



「また歩いて帰る気じゃないだろうな?」

「バス他、交通機関の選択肢はないのか」


「シフォンの家に寄らないと後悔する」

炎花が強い口調で言った。


「うーん。仕方がない」

「炎花に付き合ってやるか」

覚悟を決めた5人。



雨が強くなってきた。

シフォンの家に、駆けこむ少女たち。

暫し、雨宿り。


みんな、注文したケーキに口を付けない。


雲の隙間から光...。




炎花のひらめき。

「そうだ!」

「いい事思いついた」


理解不能な炎花の行動。それも、炎花の優しさ。



走水小学校に不法侵入する5人。

誰もいない6階の教室。

洋上のR.A.D.I.U.S.を、無言で見つめる少女たち。




覚悟は決まった。




教室に斜光が入る。

少女たちの影が長く長く伸びた...。





ホワイトアウト



ACT.2 『花々の休日』終

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