ACT.28 『万理架 巴里(パリ)へ』


「これより翻獅万理架殿に転任を命ず」

「15時00分をもって、レヴルージュの任を解く」

「同刻、フランス国 ミリアージュに着任されたし」

「以上」


敬礼する万理架

動けない彩聖。


覚悟をしていた者としていない者。


無言の二人

部屋を出た万理架。

ショックで固まったままの彩聖。

別れ、それは時として、残酷なものなり。


真っ赤な夕陽が沈む、海が見えるレヴルージュの回廊にて

海面が夕陽に染まり、キラキラと輝いている。

そこには、幾許もない2人だけの時間が流れていた。否、止まっていたのだと思う。


万理架が沈黙を破った。

「彩聖...」

「私、パリに行く」

「今まで、私なんかとペアを組んでくれてありがとう。」

「彩聖の前で誓う。今の自分より、もっともっと強くなって成長するよ」

「さようなら。でも、さよならじゃないんだよね」


「フランス版レヴルージュ着任、おめでとう」

「わかってるって、さよならじゃないってこと」

「わかっていたって、涙が...」

「涙が止まらないよ!」

「フランスでの活躍、期待しているよ」

「万理架の事、大好きだよ」

「私の事、忘れないでね」

「約束だよ」


「約束さ」

「忘れないよ、彩聖のこと」


ザァ、ザァーという波音がいつまでの2人の耳に残った..。

最後に思い出の地、横須賀美術館に向かう2機のアルテミスと2人の後ろ姿。

スロットルを捻る。


「GO!」


万理架、巴里へ....。



ACT.36 『万理架 巴里(パリ)へ』終

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