ACT.23 『今夜はハロウィン騎士(ナイト)!』


10月の終わり。少し肌寒い季節。

時計を見れば、夜の11時をまわっている。

三日月が何かを語ろうとしている。


「パッピーハロウィン」

「わくわくハロウィン」

「トリック オア トリート!」

「お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ。」

「いえーい」


ゾンビ警官に仮装した彩聖あやせ

ゾンビ看護婦に仮装した万理架まりか


「何で警官のコス?」

「いつもと変わんないじゃん。」

「分かってないなー。彩聖は」

万理架が彩聖にツッコミを入れる。


「ごめんね。こういうの考えるの苦手なんだ。えへへ」


馬堀海岸駅近くにある秘密のケーキ店に向かう2人。


「トリック オア トリート」

何だか大人っぽい声の二人。


「はいはい。待っていたのよ。さぁ、中に入って」

二人を店主が向かい入れた。

部屋に入った瞬間、彼女たちの真剣な表情に。店の空気が明らかに変わった。表はハロウィンの喧騒で騒がしいのに、ここの店だけはとりわけ静かだ。

テーブルの上のケーキを頂く彩聖と万理架。


「ありがとうございます。」


「頂こうかしら」


「ええ、頂こうよ」


「静かだね」


「ええ、静かだわ」


2人の会話が続かない。しかし、思うことはお互い1つ。

「このお店が、彼女たち・フラワー騎士が愛したお店だなんて。ましては、今、自分たちが同じ空間にいるなんて。何だか不思議な気持ち」

「ここは、あの出来事から時間が止まっている」と彩聖が小さな声で囁いた。


「私、今だから分かるよ。彼女たち、きっと怖かったんだよ。きっと不安だったんだよ」と万理架が声を重ねた。


「だから、安心できるこの場所を求めた」


店に飾ってある彼女たちフラワー騎士たちの写真

最後に、2人は写真の中の耀子ようこのさりげない笑顔を眺めた。

満足げな彩聖と万理架..。

何といっても彩聖と万理架は、貴女の娘なのだから....。


「今日は、なんか場違いな格好で来てしまったね」


「うん」

「今度は、彼女たちに失礼のない格好で来よう」


「うん」


今日は、ゆっくり体を休めて。なぜなら、明日からはアルテミスとの厳しいパトロールが待っているのだから。


ACT.25 『今夜はハロウィン騎士(ナイト)!』終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る