ACT.10 『プールサイドの秘め事』


8月7日 14時05分


自宅の窓から身を乗り出し、

碧い空をうつろに覗く少女、二人。

白い入道雲が、巨大な宇宙戦艦に見えた。

8月の猛暑が続き、人々の思考は、やや停止気味である...。





馬堀海岸市民プール・屋外エリア


飛び込み台から、華麗に飛び込みを決める万理架まりか

ビーチチェアに横たわる黒い水着の彩聖あやせ。サングラスにクリームソーダ。ちゃっと気取り過ぎの彩聖あやせ


水面から顔を出して、彩聖の元へ駆け寄る万理架。

「ねぇ、彩聖は泳がないの?折角プールにきたのにさぁ...。」

「そうねぇ」


ようやく入水する彩聖。

浮き輪に身を沈め、バタ足の彩聖。

「どうせ、私は泳げませんよ!」

意地になったのか、パタ足の速度が更に上がった。流石は、泳げないだけのことはある。


「でもさぁ、彩聖が。まさか、泳げなかったとは、知らなかったよ」

「泳げなくても良いんだよ。どんなに完璧に見える人間にも一つや二つの出来ないことはあるのだから」

万理架が宥める。


「うーっ」

「別に隠していたじゃないよ」

ムキになる彩聖。


「だから、いいんだって。彩聖がビンチな時は、私が助けてあげるんだからさぁ」

「ねっ」


彩聖のサングラスをとりあげ、眼鏡めがねの先セルを甘噛みする万理架。どうやら万理架は、彩聖の数キロ先の未来を行っているのかもしれない。



プールを後にする二人。

缶ジュース片手に、バスを待つ...。

生乾きの濡れた髪と水着の痕が淡く残った少女たちの体が、やけに艶っぽかった。




ACT.10 『プールサイドの秘め事』終

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