ACT.8 『撃鉄にキッスを』



7月の突風が、少女二人の髪を艶やかに光らせた。リボンのようにそれをフワリと変化させるのである。

彩聖あやせ万理架まりかの2挺のワルサーPDP/ファイアストライクが、太もものレッグホルダーから同時に引き抜かれる。そして、それを両腕で構える。片腕では無理だ。反動が大き過ぎる。か細い腕なら尚更だ。


片耳に付けられた小型のスクリーンがら、トリガーを引けと情報が表示される。


「PiPiPi.............。」

「Pi!」


「撃て!」

「わかってますって!」


「ダン」

「ダン」

2本の赤い光弾が、秒速5000キロの速度で、5キロ先に小さな装甲体を貫いた。


「やった」

「やったぜ」



実戦訓練は続く。

ワルサーの特殊な弾倉マガジンに、新しい光弾が装填される。レヴルージュが開発した対戦車用の光弾。彩聖と万理架の血液を複雑な分離器にかけ、精製された特別な光弾だ。自分たちの血液が兵器開発に使われたとしても、もう泣かない。もう迷わない。これがレヴルージュのやり方だ。自分たちがどう利用され、生かされようが構わない。彩聖と万理架、二人一緒ならどんな敵でも戦う。二人の気概と耀子の気概が重なっているのだ。私は、まるで亡くなった妻、耀子を見ているような錯覚を覚えた。


撃鉄に唇を寄せる万理架。何かを感じ近づく彩聖。

「どうしたの?万理架」

「いや、何でもない。誰かに見られている感じが」

「気の所為だよ」

「ああ」


一方、レヴルージュ側にも新しい光弾開発に迫られる理由があったのだ。コードネーム『PiXXY(ピクシー)』。とある国家の特殊戦大型戦車完成の情報を奪取していたからだ。



横須賀沖洋上30キロに国籍不明の潜水艦あり...。その腹の中に2機の最新鋭戦車が息を潜めていた...。





ACT.8『撃鉄にキッスを』終

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