ACT.6 『11才のルージュ』


2機のアルテミスを格納した巨大なトレーラーが、ハイウェイを疾る。レヴルージュ専用コンテナ内で待機する彩聖あやせ万理架まりかの二人。

コンテナ内の蛍光灯に小さな虫たちが群がる。到底、11才の少女たちがいる場所ではない。


「フーン、フーン♪」

アルテミスの後写鏡バックミラーを化粧鏡にする二人。

二人とも化粧上手。男性では無理だ。コンテナに揺られながら、1発でキメる。彩聖と万理架、目元のアイシャドウが美しく発光している。

化粧水、ファンデーション、アイシャドウ、エクステンション、口紅などなど。ブランドに強烈なこだわりがある二人だが、最後に残ったのは、フランス製の『ブルジョワ・パリ』、一択だ。

戦闘中に死亡することのある任務。だからこそ、美しくありたいのであろう。亡くなった母が愛用していた同じ製品はもうないのだけれど、それでも二人はブルジョワを使い続ける。母がブルジョワを愛用していた理由わけは、おそらくフォリス・ファリアとレヴルージュの両機関で、フランス語が公用語とされていた。その繋がりで耀子の目に叶うものがブルジョワだったのだろう。




事態が動き出した...。

整備班が大急ぎで、アルテミスとパーソナルコンピュータを繋ぐ赤い色の極太コンピュータプラグを、次々と引き抜いていく...。すごい発熱量だ。素手では、火傷するほどの高温だ。それと同時に、二人の緊張感も高まっていく。予選前のレーサーのそれに近い。


作戦行動開始3分前。

二人に力を!

『ブルジョワ』のルージュを唇にのせる。

一流のメイクアップアーティストに施された顔のように...。化粧をすることで気持ちの準備が整う。でないとやっていけない。

コンテナのゲートが開き、外光がコンテナ内を明るくした...。


「発進せよ、アルテミス!」


「了解」

「了解」




ACT.6『11才のルージュ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る