ACT.5 『GR_LOVERS 彩聖(あやせ)の瞳に映るもの』



「あの......」

「あの」

「私の被写体になってください」

それが、彩聖あやせの願い。


小さなカメラが、出番を今か今かと待っている。

リコーの傑作カメラ、『GR』。焦点距離は28ミリ。カミソリのように良く解像する。テレコンバータ付きの40ミリも所有している彩聖だが、28ミリで撮影することが、彼女の流儀ともいうべきか。


「パシャ」

 

しかし、良く写るものだなぁ。髪の毛の細かな線が、一本一本解像している。全く破綻していない。被写体の方は、どうだ?流石は、万理架まりかだ。細長い手足がモデル映えしている。シャッターを切ると、どんどんその気になる。小学5年生にはみえない。とても大人びていて、見ているこちらが、怖くなるくらいだ。


「カシャッ」

「カシャッ」


GRがもっと撮れと叫んでくる。

もう150枚近くは、撮ったであろう...。

その時、万理架の背後から、そっと抱きつく彩聖。


「好きだよ...」

ストラップ越しのGRが、小さく揺れた...。



少し困り顔の万理架。

「...。」


「さぁ、今度は私が、彩聖を撮影する番だよ」

右も左もわからない万理架がシャッターを切る。すぐさま背面モニタで確認すると、そこには、小さな28ミリ・GRを片手に持った作り笑顔の彩聖の姿。


「うん、いい感じ」

「私、このカメラ。好きになっちゃた」と万理架が微笑んだ。

GRのお陰とも言うべきか。お互いの距離が急接近した1日。



彩聖の瞳には、万理架の優しさが一枚、記録されていった...。




ACT.5『-GR-LOVERS 彩聖の瞳に写るもの』終

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