ACT.4 『心臓輸送 時速300キロ』
淡白い顔の少女は、その生涯を終えた。
切開された小さな胸から心臓が取り出される。脳死と判定されても、その心臓は、ダイナミックに脈動し続けている。
そして、その心臓は、次の『天使』へと移植される運命なのだ。
街の信号機が滅茶苦茶だ。地上と空の交通管制が、何者かによってハッキングされている。これでは、ドクターヘリは、飛ばすことはできない。こんな時に限って...。これもハイパーコンピュータMAIの仕業か?考えている猶予などない。
横須賀中央医療センター・エントランス
それが入った医療用のクーラーBOXが、レブルージュの二人に渡された。
「まかせたぞ!彩聖くん、万理架くん」
彩聖、自身の専用端末とアルテミスとを、専用のコネクターで結ぶ。凄まじい速度で、ハッキングされたシステムを「オセロ」のように塗り直す。これなら、地上の交通管制だけならオーケーだ。いける。
何も言わずに、親指を立て微笑む彩聖。
もう一度、経路と到着時間などのやり直す。その全てが、アルテミスのディスプレイに整然と表示されている。
生暖かい空気とバイザーに付いた無数の雨粒が、二人の気持ちを微振動させた。二人はやる気だ。しかし、時間がない。アルテミスに火を入れ、スロットルを捻る。マフラーからの物凄い圧力が、湿った空気を攪拌させた。
2機のアルテミスが、ハイウェイを時速300キロで疾走する。
雨粒が耳に当たる音が、一瞬、「ありがとう」と聞こえた。
ACT.4『心臓輸送 時速300キロ』終
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