掌編小説集『小2警察-気ままにLEVROUGE-』

2環乃ことり 

ACT.3 『プリンセスの盾』


2機のアルテミスがプリンセス(お姫様)が乗ったリムジンを先導している。


フォリス・フォリアと深い関係にある国家、その王女の訪日という事以外、何一つ公表されていない。プリンセスの名前すらレブルージュの二人には、聞かされていないのだ。それほど秘密を守りたいのだろう。警護する側は、たまったものではない。彩聖と万理架、警護するその姿は、とても凛々しい。


急にリムジンが停止...。

ドアが開く。


一瞬、何が起こったのかわからない。身構える彩聖と万理架。

ティアラを冠った暗褐色の髪色。王女様だ。スカートを捲り上げて、太ももに冷たいハンドガンが一挺。SPを跳ね除け、こちらに駆け寄ってくる。


いきなり、「飛・ば・せ」と命令する王女。何と物騒な。王女様にはあり得ない一言だ。

飛んだ王女様だ。レブルージュの面目丸潰れ。否、それ以上に悪い。国家間の問題に発展しかねない。


言われた通りに、街を縫うようにアルテミスを発進させる。

アルテミスは二人乗りでは無いのだが...。





「ここ迄来れば、大丈夫さ」

「どうして、こんな事を?」

万理架が王女様に聞いた。


「あなたたちの国の少女女の子たちと同じ格好。同じ遊びをして、御国に帰りたい」

懇願する王女...。


困り顔の二人...。

「たったそれだけの事で?」

「......」

「わかったわ。言われた通りに行動しますから、御安心を」



横浜中華街で、UFOキャッチャーや飲茶を愉しむ。元町の商店街では、アクセサリーや洋服を選ぶ王女たち。今どきの格好でキメるプリンセス。彩聖と万理架が二人で、王女に似合う洋服を探した結果だ。決して、高価ではない品ばかりだが、逆にそれがうれしかったのだろう。また、レブルージュの二人は、妹が出来たような感覚が心地よかったりもしたのだろう。何もかもが新鮮に感じる王女...。


横浜の名所を案内させられた彩聖あやせ万理架まりか

港がみえる丘公園で、美しい夕日を眺める王女エルカノ。元町で購入して貰ったプラチナの円状イヤリングが、夕焼けに反射してオレンジ色に燃えていた。

11才の少女二人には、理解できたように感じた。自分たちより恐らく2、3才年下の王女様。国家の重責と少女の心が鬩ぎ合っていたのであろう。しかも、相談できる者などいるわけもない。


「ガタガタガタッ」とこちらに迫る足音、多数。

はっとする王女エルカノ。


SPが汗を掻いて、こちらを見ている。


「ここまでね」

「彩聖、万理架。本当にありがとう」

「忘れないわ」

王女エルカノがニコリと笑った。


「こちらこそ」




ACT.4 『プリンセスの盾』終


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