妹に何もしてやれなかった俺が今度こそ幸せにするまでは死ねない話

第15話 ディストピア

「照君、僕達の家族になる気はないかい？」

　そんな風に言ったのは優美の父だ。

　ちなみに今は両親の葬式中である。

「有難うございます。でも両親の遺産もありますし、できる限りは頑張ってみようと思います。」

「そうか…‥困ったことがあればいつでも言ってくれ。」

「はい。」

　そうして外が真っ暗になった頃両親の葬式終わり、茜と帰路についていた時だった。

「どうしてなの⁉︎」

「あ？そりゃ新しい女ができたからに決まってんだろ。というかもう飽きたんだよな。じゃそういうわけだから。じゃあなもう会わないだろうけど。ギャハハ。」

「どうしたんですか、春香さん？」

「あっ照君。実は…………。」

　どうやら付き合ってた彼氏が浮気してたらしく、一方的に別れ話を切り出されたらしい。

　茜と張り合えるほどの美貌を持ち、どんな人でも幼児退行してしまいそうになる母性。

　世界中の男が放っておかなさそうな人をどうしてその彼氏……いや元彼氏は振ったのだろうか。

「きっと私に魅力がなかったから逃げられたのよね……。」

「そんなことないです‼︎そのクズが見る目なかっただけですよ‼︎俺だったら春香さんみたいな魅力的な人絶対に逃がしませんよ‼︎って俺なんかに言われてもキモいだけですよねすいません。」

「じゃあ君が私をもらってくれる？」

「へ？？？」

「駄目ですよ‼︎」

「君誰？」

「私はお兄ちゃんの彼女です。」

「お兄ちゃん？あっ、へぇ〜そういうことかぁ〜なるほどねぇ〜。照くん、報われない愛は辛いだけだよ。」

「覚悟の上です。」

「そうよ。お兄ちゃんと私の愛は何者にも引き裂けないわ。」

「私じゃ魅力不足なの？」

「そうy『今私は照くんに聞いてるの彼女か妹だか知らないけれど黙っといて。』…お兄ちゃん、こいつになんか言ってやってよ。」

「さっきも言った通り春香さんはとても魅力的だと思いますよ。」

「だったら『でも俺には茜がいますから。』…それがどうしたの？どうせ家族じゃ結婚できないんでしょ。」

「確かにそれはそうですが……。」

「そんなの愛があれb『だから黙っといて。それに愛があっても越えられない壁は存在するの。これだから現実を見ていないお子ちゃまは……はぁ。』ぐっっ。」

「二人とも落ち着いて。」

「そういえばあなたたちこんな時間に制服でどうしたの？」

「って話聞いてないし、本当マイペースだなこの人。……実はさっきまで両親の葬式に行ってたんですよ。」

「っっっ。ごめんなさい、私……。」

「別に大丈夫ですよ。」

「本当に大丈夫？お姉さんの胸で泣いてもいいんだよ。」

「ちょっと待った‼︎それは家族である私の役目よ。」

「あら？貴方に貸せる胸なんてあるのかしら？」

「お兄ちゃんはモデル体型が好きだって言ってたし。」

「あらあらじゃあ照くんに決めてもらいましょ。」

「えっここで俺に振るの？」

「「さあどっちの胸が好みなの？」」

「葬式で疲れてるのでまた今度にしてくれませんか？」

「そういえば両親の葬式だったのに話を聞いて慰めてくれたのよね。優しい照くん、絶対に逃さないからね。」

「だからお兄ちゃんは私のだって言ってるでしょ。」

「あなた本当にそれで照くんが幸せになると思っているの？」

「それは……」

「お〜い照ぅ〜。」

「ゆ、優美⁉︎」

　ただでさえカオスだったこの空間が今ディストピアへと昇格しようとしていた。