文化祭

TVのニュースでは公民党時期党首、東と大宝製薬社長北條の黒い噂について報道がなされていた。闇献金問題について、TVの評論家は語っている。そんなニュースを寺田と竹内はラーメン屋で見ていた。

「実際のところ、どうなんですかね?」竹内は寺田に聞く。

「さぁな。わからん事だらけだ。」寺田はラーメンをすすりながら言う。

「カードについて何かわかったか?」寺田は竹内に聞く。閉鎖中の大宝製薬の工場内で常軌を逸した精神状態の東、傍には大宝製薬社長北條の遺体。そしてこれまた精神状態の崩壊した大宝製薬の社員10名。何やらわからない獣の様な切り刻まれた残骸がおよそ4匹。床に置かれた一枚のカード。カードには、保育園、300万、闇献金、暴走族、大宝製薬、人体実験。これらは全て1つに繋がる。judgement night。とパソコンで打ち込まれた文字で書かれていた。これらが発見されて丸1日が経過していた。

「カード自体は全国の文房具を取り扱う店で一般的に売られているもので、ラミネートも全国で売られているものでした。」竹内は言う。

「今回のカードと保育園に投函されていたものは別物だな。」寺田は竹内に言う。

「はい。」竹内は言う。寺田はラーメンを食べ終えていた。

「前田のスマホに残されていた遺書にもあった。...judgement nightか...。kがつくかつかないか...。」寺田は独り言の様に言う。

「先の1件のカードとスマホは偽物ってコトなんでしょうかね?」竹内は寺田に聞く。

「わからん。仮に名を語った偽物だとして、本物が動き出したのか?だが、1番解せんのは獣の様な人外の残骸。どの獣にも属さない未知の生物の可能性があると鑑識からは聞いている。それに...。」寺田は爪楊枝を片手に話す。

「切り口が第3倉庫の遺体の足と同じく、キレイ過ぎる。今度は日本刀もなかった。見つかった獣達は何に切られたんだ?解せん事だらけだよ。」寺田は眉間にしわを寄せる。

「製薬会社の極秘研究かなんかなんですかね?」竹内は言う。

「大宝製薬は昔からキナ臭い研究をしていると聞いた事はある。今回の一件で色々と出てきそうだな。judgement night、第三者がいたとしても、東と北條の繋がりをどうやって調べた?会社内部の犯行路線も考えないといかんな。全く持って不可解な事ばかりだよ。」寺田はTVに目線をやる。



文化祭当日、華月達の高校は朝から賑わっていた。中でも沙希のクラスのコスプレ喫茶は大繁盛で沙希は大忙しであった。

「全く、あれ程きてねって言ったのにアイツらわぁ〜!」沙希は慎司達に怒っていた。

慎司はサッカー部の招待試合があり、グラウンドでラインを引いたりと準備に追われていた。突如寒気に襲われた慎司は、

「沙希ちゃん怒ってんだろうなぁ。」慎司は見透かした様に言う。

鈴音達のクラスは演劇で午後の部からなので午前中は自由時間であった。鈴音は隣の沙希のクラスを覗く。そんな鈴音の姿を沙希はいち早く発見した。

「あ、鈴音!かづちゃん達見かけたら引きずってでも連れて来て!」沙希は鈴音に近づきながら言う。

「う、うん。」鈴音は頷く。チャイナドレスに身を包んだ沙希はスタイル抜群で髪の毛は左右にお団子にしていた。ドレスのスリットから見える足は、男性客を魅了し、同性の鈴音でも息を呑むほど美しかった。他にも色々なコスプレをしたウエイター、ウェイトレスがいたが沙希が1番教室の中で美しかった。

「凄いね。それ。」鈴音は沙希に言う。

「でしょ?後で皆で写メ撮りたいのに、アイツらちっとも来やしないんだから!」沙希は怒っている。

「慎司くんは試合の準備とかなんじゃない?」鈴音は言う。

「あ、そうだ。そうだったね。じゃあしんちゃんはゆるしてあげよう。でもかづちゃんは許さないんだから!」沙希は怒りながら言う。

「慎司くんの試合は見に行くって言ってたよ。」鈴音は朝華月と話した事を思い出した様に言う。

「じゃあその時に写メ撮ろう。どう?鈴音も何か着てみる?」沙希は笑いながら言う。

「わ、私はいい。」鈴音は手を振りながら答える。

「私の眼は誤魔化せないわよ。アンタもスタイル良いの知ってるんだから。」沙希は手をワシワシしながら言う。鈴音は思わず手で身体を隠す。

「しんちゃんの試合の時に、もう一着チャイナあるから、来て応援行こ♪」沙希は強引に話を進める。

「わ、私はホントに...。」鈴音は言い淀む。

「何?鈴音、アンタも来るの遅かったわよね?隣なのにね〜。」沙希は鈴音に絡む。

「し、試合の時だけね...。」鈴音は沙希の迫力に気圧された。

「やったぁ!実は予備で作ってたんだけど、スタイルの合う人が他にいなくてね。鈴音なら合うと思うんだぁ。折角作ったんだから、楽しまなきゃね!」沙希は喜んだ。


華月は屋上で昼寝をしていたが、スマホのアラームが鳴り起きた。慎司の試合の時間にSETしていた。

「さて行くか。」華月は身体を起こし屋上を後にする。途中、解放されている華道部の部室を覗き込んだが、部員は誰もいなかった。香織と華月、鈴音の作品が飾られており、客は見に来ていた。華月は玄関で靴を外履きに履き替え、グラウンドに向かった。試合前から何やら人集りが出来ており、写真を撮っている様だった。華月はグラウンド脇にある自転車置き場の2階に登った。グラウンド脇とは違って人は誰もおらず、グラウンドが見渡せる穴場であった。審判が笛を吹く。両校の選手が入場する。

「しんちゃ〜ん頑張って〜!」沙希の声に慎司は手を挙げたが、明らかに顔が驚いていた。沙希はともかく、隣には鈴音がチャイナドレスを着て沙希に負けじ劣らずなナイスバディを披露していた。それは他の部員達も同じ様子であった。慎司は1年生ながらレギュラーで張り切っていたが、より一層やる気が出てきた。

(あぁ、あれの撮影で盛り上がってたのか。)華月は遠目から鈴音達を見て納得した。ピィーッ笛が鳴り響き試合が始まる。鈴音は華月を探していたが、見つからなかった。それは沙希も同じであった。開始直後、慎司達のN高は果敢に攻め上がり、相手ゴールを脅かした。N高のシュートをキーパーが弾き出しボールは裏手のネットに当たった。その延長線上に華月がいたのを慎司は見た。華月は右手を上げた。慎司はコクリと頷く。

「いた!かづちゃん!」沙希は鈴音を見る。鈴音も見つけていた様だ。

「行こ。」鈴音と沙希は手を取りながら華月のいる自転車置き場に走った。コーナーキック、ディフェンスが外に弾き出しもう一度コーナーキック。

「はぁ、はぁ...。」2人は息を切らしながら華月のそばに来た。

「もう、探したんだから!」沙希は言う。華月は何も言わずに微笑んだ。

「で、感想は?」沙希は華月に全身を見せながら言う。

「あぁ。似合っている。」華月はフラットなテンションで答える。

「はぁ〜。かづちゃんに聞いた私がバカだったわ。」沙希は華月の左隣に来る。鈴音は華月の右隣に来る。

「後でしんちゃんと一緒に写メ撮ろう!」沙希は笑いながら言う。

「あぁ。」華月はいつもの調子で答える。鈴音はその様子がおかしくてクスッと笑った。沙希も華月も驚いた様子で鈴音の顔を見る。

「な、何?」鈴音は2人に言う。

「鈴音、笑うと可愛いわね。」沙希は言う。「あぁ。」華月も少し微笑んだ様に鈴音には見えた。ピィーッ笛の音で皆試合を見る。ゴールが決まっていた。心地良い秋風に吹かれながら、3人と慎司はガッツポーズした。

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