m第6話

 狐を祓う任務をしている。

 彼女に、狐が憑いた。だから、それを祓う。それだけだった。指環に7年ぐらい加護をつけて、彼女に送った。

 しかし、7年経ってみれば。彼女は、記憶を食われていて。その記憶は戻ってこない。

 同じ指環。今日も彼女の手で割られていく。

 おそらく、記憶の処理で、自分のことはすぐ忘れてしまうのだろう。

 そして。

 記憶がなくなっても、感情に穴が開くことはない。自分のことをおぼろげに覚えていて、自分を待っているとか、そういうことはない。7年の月日で、分かってしまう。

 恋人の記憶を失うと、感情がそれを埋め合わせるために。すぐに新しい恋人を作る。それが人間の感情の作用。それだけ。

 彼女にも、新しい恋人ができるのだろうか。

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