m第5話

 7年ぶりに会った彼女は、自分のことを完全に忘れていた。狐に記憶を食われたらしい。

 思い出してほしくて、彼女に指環を送り続けている。

 そして彼女は、特に何も感じることなく、その指環を割っていく。

 割られる度に、なんとなく。自分の心が。少しずつ割れていく感じがする。

 彼女は、もう自分のことを思い出さないのだろうか。

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