13.魅力ある登場人物を描く(その2)
「それでは『全裸戦隊フィンガーレディースはすっぽんぽんで戦うのだ』の第六章を朗読してみましょう」
司会の姉ちゃんの甲高い声がスタジオに響いた。
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良太は『お下品ふんどしのノッコ』に体育館に追い詰められた。『お下品ふんどしのノッコ』の出身地である『すけこまし県やりまくり市』の市民体育館だ。良太にはもう逃げ場はなかった。『お下品ふんどしのノッコ』が、ピンクのスケスケの小さな布を良太の眼の前に突き出した。『においスキャンティのミーオ』がはいていた『においスキャンティ』だ。
『お下品ふんどしのノッコ』が言った。
「良太。何があっても、お前にこの『においスキャンティ』をはいてもらうよ。この『においスキャンティ』はね、はいた人物が頭に思い浮かべた『におい』を自由自在に出すことができるんだよ。ただね、それにはね、はいた人物の思念の波長が『においスキャンティ』の波長と合わないといけないんだ。思念の波長が『においスキャンティ』の波長と合う人物はね、この世の中で、前にこれをはいていた『においスキャンティのミーオ』とお前の二人だけなんだよ。だからね、『全裸戦隊フィンガーレディース』としては、お前を逃がすわけにはいかないんだ。お前はこれをはいて、『全裸戦隊フィンガーレディース』の女戦士になって、私たちと一緒に悪と戦うんだよ」
良太は首を振った。
「いやだ。僕はそんな、女がはく『においスキャンティ』なんて絶対に、はかないぞ」
『お下品ふんどしのノッコ』が鼻で笑った。
「フン。良太。お前は、軟弱男子で、周りの女性から女子として扱われているんだよ。いまさら、女物の『においスキャンティ』をはけないなんて・・笑わせるんじゃぁないよ」
「いやだ・・絶対に僕はいやだ」
「そうかい。じゃあ、仕方がないねえ。力づくで『においスキャンティ』をはいてもらうとしようかね」
『お下品ふんどしのノッコ』の眼が妖しく光った。
『お下品ふんどしのノッコ』がブラウスの前ボタンをはずした。豊満な二つの乳房がポロロンと飛び出した。ブラジャーをしていないのだ。良太の眼の前で、二つの乳房がプリンのように揺れた。ぷらん、ぷらん・・。良太はごくりと唾を飲み込んだ。
『お下品ふんどしのノッコ』はブラウスを投げ捨てると、今度はスカートのホックを外して、ファスナーを降ろした。スカートが音もなく、体育館の床に滑り落ちた。
良太は眼を見張った。『お下品ふんどしのノッコ』は、な、なんと・・ふんどしをしているのだ。白い滑らかに輝く美しい裸の女性が、白いふんどし一丁で良太の前に立っているのだ。
女性が・・ふんどしをするのか! なんて、お下品な!
あまりの意外さと美しさとお下品さに良太は言葉を失った。
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司会の姉ちゃんがフーッと息を吐いた。
「すごく魅力的なシーンですねえ。女性だったら、誰もがあこがれる『おフンドシ』が出てくるんですねえ。女性は全員『おフンドシ』をしたいって思ってますよねえ。もちろん、私も『おフンドシ』をしたいです。では、永痴魔先生に伺ってみましょう。先生、どうしたら、こんな素敵なシーンが書けるんですか?」
「はい。特徴を強調するんですよ」
「特徴を・・強調するんですか?」
「はい。さっき言ったように、主人公の良太は女の子みたいな男性、つまり女性から女子として扱われる男性という以外、何も特徴はないんですね。したがって、その分、周りの登場人物に特徴を持たせて、その特徴をできるだけ強調するように書くといいんです」
「と、言いますと?」
「はい。その特徴と言うのが、例えば、ここでは『お下品ふんどしのノッコ』がつけている『ふんどし』になるのですね。このため『お下品ふんどしのノッコ』が服を脱いで、ふんどし一丁になるシーンが重要になります。それでこのシーンを強調するように書くといいわけです。そうすると読者の印象に残って、読者に訴えるシーンになるわけです」
「ということは『お下品ふんどしのノッコ』が登場するシーンは常に『おフンドシ』を強調して書けばいいわけですか?」
「いえ、そうではありません。何度もふんどしばかりが強調されると、読者も飽きてしまいますよね。また作者の方も、どうしても同じようなシーンが続いてしまうんです。このため同じふんどしを扱っていても、強調する箇所を少しずつずらしていくんです」
「強調する箇所を少しずつずらすんですか?」
「そうです。たとえば、さっきの『全裸戦隊フィンガーレディースはすっぽんぽんで戦うのだ』の次の第七章を見てください。このシーンは『お下品ふんどしのノッコ』がふんどしを全部脱いで、素っ裸になるんですよ。そして『お下品ふんどしのノッコ』はその格好で相撲のしこを踏むような動作をするんです。そうすると、床のふんどしが立ち上がるんです。実は、ふんどしの『お下品ふんどしのノッコ』の股間に当たっていた部分には黄色いシミが付いているわけですが、ふんどしが立ち上がると、その黄色いシミがふんどしから抜け出して、人間の形になって良太を襲うのです。このように、強調する箇所を、さっきはふんどし全体、次に、ふんどしの黄色いシミというように少しずつずらしていくわけです」
「うわぁ、『おフンドシ』の黄色いシミが人の形になるんですか! すご~い。では、さっそく、『全裸戦隊フィンガーレディースはすっぽんぽんで戦うのだ』の第七章を朗読してみましょう」
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