10.三点描写法(その3)

 朗読を終わった司会の姉ちゃんがふーっと息を吐いた。


 「以上、『そのおばはんは、シワシワのおっぱいをオイラの口に突っ込んだ』の第五章を朗読してみました。いやあ、永痴魔先生、すごい迫力でしたね。『おっぱい風車のお竜』のおっぱいの回転の中へ吸い込まれていった村人がどうなったのか気になりますが、ここで、永痴魔先生に三点描写法の解説をお願いします」


 「はい、第五章の冒頭部分の風景が三点描写法で描かれています。まず最初に空が来て、次に地平線が描かれています。その次は村人ですね。村人たちが蒼汰と『おっぱい風車のお竜』を取り囲むシーンがきているわけです。そして、最後に『おっぱい風車のお竜』がブラウスのボタンをはずして、シワシワのおっぱいを二つ出すシーンに移行していくわけです」


 「まあ、まさに、教科書通りに視点が全体から細部、つまり遠方から身近なものへと順に移動しているわけですね。リスナーの皆さん、ぜひ、この書き方を学んでくださいね。それでは、次に『そのおばはんは、シワシワのおっぱいをオイラの口に突っ込んだ』の第九章を朗読してみたいと思います。永痴魔先生、第九章はどのようなお話なんですか?」


 「第九章はですね、『おっぱい風車のお竜』を倒した蒼汰が、今度は『おっぱいチョップの結奈』と対決するんですね。『おっぱいチョップの結奈』の武器はこん棒のように相手をなぎ倒すおっぱいなんですが、実は『おっぱいチョップの結奈』にはもう一つ秘密兵器として、恐ろしい武器があるんです」


 「えっ、まだ武器があるんですか? それはどんな武器なんでしょう?」


 「『おっぱいチョップの結奈』が股間を相手に向けたときに、股間がしゃべるんです。そして、相手が何か返事を返したら、その相手は『おっぱいチョップの結奈』の股間に吸い込まれてしまうんです」


 姉ちゃんが両手で自分の股間を押さえた。


 「まあ、股間に! なんて、気持ちのいい・・いえ、素晴らしい武器なんでしょう」


 「そうなんです。それで、第九章は蒼汰が『おっぱいチョップの結奈』の罠にかかって、股間に向かってうっかり返事をしてしまうんですね。そのシーンから始まるんです」


 「では、また、私が『そのおばはんは、シワシワのおっぱいをオイラの口に突っ込んだ』の第九章を朗読してみましょう」


********


 『おっぱいチョップの結奈』がいきなりスカートをめくり上げた。薄いピンクのズロースが見えた。


 蒼汰は息を飲んだ。


 ズ、ズロース? いまどき、ズロースをはいてる姉ちゃんがいるのか?


 すると、『おっぱいチョップの結奈』はいきなりそのズロースを膝までずり下げたのだ。


 蒼汰は眼を見張った。


 この姉ちゃんはいったい何をする気なんだ?


 そうして、『おっぱいチョップの結奈』が腰を蒼汰の方にぐいっと突き出した。『おっぱいチョップの結奈』の股間が蒼汰の眼の前に露わになった。


 蒼汰は股間を覗き込んだ。


 なんて、いい眺めなんだ。こんなことをしてくれる姉ちゃんがいるのか?


 思わず、蒼汰の口から口からよだれがこぼれた。蒼汰が上品に笑った。


 ヒヒヒヒヒ・・


 すると、驚くべきことに、その『おっぱいチョップの結奈』の股間が開閉を始めたのだ。・・やがて、股間から声が出てきた。それはまるで、股間に口がついていて、その口が音声を発しているようにも思えた。


 その声は・・最初はもごもごした音だったが、やがてはっきりと蒼汰の耳に意味のある言語として聞こえてきた。その声はこう言っていた。


 「兄ちゃん、私と一発やらないかい?」


 思わず、蒼汰は返事をしてしまった。


 「おっ、オイラとかい。いいねえ。やろう、やろう」


 次の瞬間、蒼汰の身体は『おっぱいチョップの結奈』の股間に吸い込まれてしまった。


 ・・・・・


 蒼汰は気がついた。


 ここはどこだろう?


 頭上にはセピア色の空があった。空には雲も何もない。ただ、セピア色が広がっているだけだった。空のはるか向こうに亀裂のようなものが見えた。地面から空に向かって、まっすぐな線が亀裂のように伸びているのだ。それがセピア色の空の唯一の変化だった。


 蒼汰は空を見ながら首をひねった。亀裂?


 蒼汰は地面に眼をやった。真っ黒な地面が広がっていて、地平線に消えていた。向こうに小高い山が見えていた。ここには、その山以外には何もなかった。360度見渡しても、視界にはその山しかないのだ。


 地面には黒い草が一面に生えていた。細い細い草だった。丈は蒼汰の足首ぐらいだ。手で草の表面を触ると、すべすべした感触があった。まるで人の黒い陰毛のようだと蒼汰は思った。蒼汰が草を触った手を広げると、手の平に何かの液がべっとりと付着していた。蒼汰はあわててズボンのポケットからハンカチを取り出して手を拭いた。手からすえた臭いが漂ってきた。蒼汰は顔をしかめた。


 蒼汰は向こうに見える小高い山に向かって歩き出した。ここにはその山しかないので、その山を目指すしかなかったのだ。歩くと、足元の草がさわさわという音を立てた。


 蒼汰は小高い山のふもとに辿たどり着いた。山には地面にあるような人の陰毛のような毛はなかった。山肌はつるつるした肌色をしている。蒼汰は山の周囲をぐるりと回ってみた。すると、小さな立て看板が見えた。立て看板には達筆の字で『栗取棲山』と書いてあった。蒼汰はその字を読んだ。


 クリ・・トリ・・ス・・ヤマ?


 蒼汰は首をひねった。聞いたことがない山の名前だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る