9.三点描写法(その2)
司会の姉ちゃんが、私の『そのおばはんは、シワシワのおっぱいをオイラの口に突っ込んだ』の第五章を朗読し始めた。
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頭上にはどんより曇った空があった。灰色の雲が何重にも重なっていて、今にも蒼汰の上に落下しそうだ。蒼汰は重ぐるしさを覚えた。蒼汰は周りを見わたした。何もない草原だった。枯れかけた正気のない草の波が地平の果てまで続いていた。前も後ろも右も左も同じ光景だった。『おっぱい風車のお竜』はどうしてこんな何もない草原を決闘の場所に選んだのだろう。蒼汰の胸に疑問が湧きおこった。
草原の中で、蒼汰は『おっぱい風車のお竜』と対峙していた。蒼汰と『おっぱい風車のお竜』の周りを村人たちが取り巻いている。村人たちは20人近くいるだろう。蒼汰と『おっぱい風車のお竜』の決闘を見物に来たのだ。
すると、『おっぱい風車のお竜』の手がブラウスのボタンにかかった。そして、上からボタンを順々に外していったのだ。『おっぱい風車のお竜』がブラウスの隙間から胸に手を入れた。そして、おっぱいを二つ取り出したのだ。『おっぱい風車のお竜』のシワシワのおっぱいが蒼汰の眼に映った。おっぱいの表面には黒いシミがいくつも浮いている。蒼汰は古くなってシワシワになったナスビを連想した。
蒼汰は言った。
「やい、おばはん。オイラはしわくちゃナスビなんぞ、見たくもねえや」
『おっぱい風車のお竜』は首をかしげた。
「ナスビだって?」
『おっぱい風車のお竜』は蒼汰の言ったナスビが何のことか分からなかったようだ。『おっぱい風車のお竜』がトンチンカンな答えを返した。
「ナスビは八百屋の天狗屋に売ってるよ。この辺では天狗屋が一番安いんだよ」
蒼汰もトンチンカンなことを口にした。
「ナスビはな、天狗屋よりも『スーパーあけびや』の方が18円安いんだぜ。これでオイラの勝ちだな」
ナスビは天狗屋より『スーパーあけびや』の方が安いのか? という無言の声が周りにたたずむ村人たちの中を波のように伝搬していった。村人たちに動揺が走った。知らなかった!
蒼汰の言葉に『おっぱい風車のお竜』の顔が真っ赤になった。
「おのれ~」
すると、『おっぱい風車のお竜』の身体が草原から浮き上がったのだ。『おっぱい風車のお竜』の身体はゆっくりと上昇していって、地面から3mほどの中空で停止した。すると今度は、『おっぱい風車のお竜』の二つのシワシワおっぱいがゆっくりと回転し始めたのだ。蒼汰は眼を疑った。それに、シワシワおっぱいが回転しながら、長く伸びてくる。ついに、二つのおっぱいが2mぐらいの長さになった。『おっぱい風車のお竜』の胸を中心にして、2mもある二つのおっぱいが大きな円を描いて回転している。
すると、今度はその回転がだんだん速くなった。二つのおっぱいが回転するブンブンという音が蒼汰の耳に聞こえてきた。おっぱいの回転はどんどん速くなる。やがて、回転するおっぱいを眼で捉えることが不可能になった。回転が一つの円になった。オッパイが回転する音がブンブンから、ギューンギューンという高音に変わった。
蒼汰の周りで風が起こった。空気が回転するおっぱいに吸い込まれていくのだ。蒼汰の周囲の草原の草が引きちぎられて、『おっぱい風車のお竜』の回転するオッパイの中に吸い込まれていった。蒼汰の身体も少しずつおっぱいに吸い寄せられていく。
いけない。『おっぱい風車のお竜』の回転おっぱいに身体が吸い込まれそうだ。
蒼汰は何か手でつかめるものを探した。そして、驚愕した。周りは枯れたような草ばかりだ。つかむものが何もない!
そうか。それで、『おっぱい風車のお竜』は決闘の場を何もない草原に指定したのか!
そのとき、大きなカラスが一羽、蒼汰の頭上に飛んできた。カラスが空中で止まった。『おっぱい風車のお竜』が創り出した吸引地獄に引っかかったのだ。羽根をバタバタさせて、必死で吸引力から逃げようとするのだが、カラスの身体は後ろ向きに少しずつおっぱいの輪に近づいていく・・・
ついに、カラスが回転するおっぱいの中に吸い込まれた。カラスの黒い身体が見えなくなった。次の瞬間、回転するおっぱいの中から、ばらばらばらと吐き出されたものがあった。それは、周囲の村人たちの頭上に落下していった。蒼汰の頭上にも一つ落ちてきた。
蒼汰は『おっぱい風車のお竜』の吸引力に耐えながら、手で落ちてきたものを受け止めた。串に刺した焼き鳥だった。
カラスの焼き鳥なんて・・うまいのだろうか?
周りの村人から「うまい。うまい」という声が聞こえてきた。みんな、串に刺した焼き鳥をほおばっている。
『おっぱい風車のお竜』の声がした。
「蒼汰。お前の身体もカラスのように焼き鳥にしてやるよ。あははははは。この村の『焼き鳥屋 どん兵衛』の焼き鳥のように、お前の焼き鳥もさぞかし、おいしいだろうね」
蒼汰の身体を恐怖が貫いた。このままでは、焼き鳥にされてしまう。思わず、蒼汰の口から声が出ていた。
「おい、おばはん。『焼き鳥屋 どん兵衛』の焼き鳥よりも、『スーパーあけびや』の総菜コーナーで売ってる焼き鳥の方がうまいんだぞ。これでオイラの勝ちだな」
焼き鳥は『焼き鳥屋 どん兵衛』よりも、『スーパーあけびや』の総菜コーナーの方がうまいのか? という無言の声が、周りでカラスの焼き鳥をほおばる村人たちの中を波のように伝搬していった。村人たちに動揺が走った。知らなかった!
蒼汰の言葉に『おっぱい風車のお竜』の顔が真っ赤になった。
「おのれ~」
『おっぱい風車のお竜』のおっぱいの回転がさらに速くなった。
村人の一人の身体が地面から浮き上がった。そのまま、『おっぱい風車のお竜』のおっぱいの回転の中へ頭から吸い込まれていく。村人はカラスの焼き鳥の串を手に持っていた。そして、『おっぱい風車のお竜』のおっぱいの回転の中へ吸い込まれる寸前に、「焼き鳥は『焼き鳥屋 どん兵衛』よりも、『スーパーあけびや』の総菜コーナーがうまい!」と叫んだ。
その声が終わるや否や、村人の身体が見えなくなった。『おっぱい風車のお竜』の恐怖のおっぱいの回転の中に頭から吸い込まれていったのだ。
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