6.長い話を書く方法(その3)
「では、『裸の美女はやさしく私に言った。はよ、中に入れんかい! このボケ!』の第四章を見ていきたいと思います。永痴魔先生、この第四章はどのような場面なのでしょうか?」
「はい、第四章は主人公の美しい深窓の令嬢である雪乃が、同じ成城に住む成城マダムの鮎美に教えられて、生まれて初めて男を買うという場面です。具体的には、雪乃が指定された池袋駅東口のホテルユーカリの315号室に行って、買った男にお金を5万円渡してセックスを始めようというシーンですね」
「まあ、男を買うですって。いいなあ・・・私も男を買ってみたいです。・・・女性のリスナーの皆さんはきっと全員が『男を買うっていいなあ。私も買いたい』と思っていらっしゃることでしょう。・・・ああ、男が欲しい・・・私も男を買ってみたい・・・アタシの身体がうずく・・・あっ、失礼しました。『裸の美女はやさしく私に言った。はよ、中に入れんかい! このボケ!』のお話でしたね。どんなお話か楽しみですねえ。はたして、点呼小説がどのように使われているんでしょうか?・・・では、さっそく、『裸の美女はやさしく私に言った。はよ、中に入れんかい! このボケ!』の第四章を朗読してみましょう」
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315号室に入ってきたのは中年の男だった。雪乃の前に立つと、何も言わずに黙っている。
あっ、そうだ。お金を渡すのね。
雪乃は鮎美が「やる前にお金を渡すのよ」と言っていたのを思い出した。雪乃は男に5万円を渡した。男はうれしそうにお札を受け取ると、そそくさと財布に仕舞った。
初めて男が口を開いた。渋い声だった。
「お嬢様。服を脱がせましょうか?」
雪乃はお上品に答えた。
「お前が先に脱がんかい! このボケ!」
男は雪乃の女性らしい優しい言葉に驚いた様子だった。二度、三度と首を振ると、雪乃の前で服を脱ぎ始めた。
男が全裸になった。雪乃の前に無言で立った。
雪乃が男に近づいて、右手で男の股間をさすりながら、優しく言った。
「次は、私の服を脱がさんかい! このボケ!」
男は雪乃の洗練された優雅な言葉に、一瞬眼を大きく眼を見開いて雪乃を見つめた。やがてまた首を大きく振った。そして、ゆっくりと雪乃の服を脱がし始めた。
雪乃も全裸になった。雪乃の方からベッドに仰向けになった。雪乃の淡いピンクの唇が開いた。また優雅な優しい言葉が出た。
「はよ、中に入れんかい! このボケ!」
その優しい声に男が弾かれたように動いた。男がベッドの上の雪乃の上に覆いかぶさる。雪乃がおしとやかに言った。
「待たんかい! このボケ!」
男が動きを止めた。雪乃の美しい声が続く。
「5万円も出したんや。その分、サービスしいや。このボケ!」
雪乃の口から関西弁がでていた。成城の美しい深窓の令嬢の口から関西弁・・まさに、これ以上ないぴったりな組合せだ。
男が首をひねった。困惑した表情だ。
「サービスですか?」
雪乃が微笑みながらやさしく言った。
「そうや。お前のんを私の中に入れたらなあ、腰を振って、一、二の三でお前のんを私の中に突き上げるんや。その動作を本番の一発をやる前に・・・そうやなあ・・・50回はしてもらわんと、あかんなあ。それから、お楽しみの一発や。ここまでしてもらわんと、5万円の元がとれへんわ。ええか、一発やる前に50回は腰を突き上げるんや。このボケ!」
男の口から信じられないという声が出た。
「する前に、50回も腰を突き上げるんですか?」
深窓の令嬢、雪乃の女性らしい優雅で優しい言葉が続く。
「そうや。でも、一、二の三の掛け声では、なんや、おっさんの掛け声みたいで・・もひとつ、気分がでえへんな。このボケ!」
「・・・」
「そや。一、二の三やのうて、『すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん』の掛け声でいこか。『すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん』と言いながら腰を突き上げるんや。それで、お前が一回突き上げるごとに、わてが、1回、2回て数えるさかいな。ちゃんと、50回、突き上げをやらんとあかんで。このボケ!」
中年男が雪乃の上に乗った。そして、雪乃に命じられたように腰を前後に揺らしながら雪乃の中に突き上げた。
男の口から声が出た。
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
雪乃が喘ぎ声を出しながら、その声に応えて優雅に数を数え始めた。
「あああ~。1回や。このボケ!」
二人の声がホテルユーカリの315号室の中に響いた。
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。2回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。3回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。4回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。5回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。6回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。7回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。8回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。9回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。10回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。11回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。12回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。13回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。14回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。15回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。16回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。17回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。18回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。19回や。このボケ!」
「すっぽん、すっぽん、すっぽんぽん」
「あああ~。20回や。このボケ!」
中年男の顔に汗が光っている。激しい息を吐いていた。男の頭に絶望がよぎった。
まだ、30回もある・・・
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