3.オノマトペの使い方(その2)

 「はい。第九章は未華子の親友の奈緒が、未華子のオナラ癖を防止するために、お尻の穴にガムテープを貼ることを思いつくんです。それで、未華子は奈緒にガムテープをお尻の穴に貼ってもらって、ゼミの梳部すけべ教授とのセックスに臨むという場面です」


 「まあ、素敵な場面ですね。果たして、未華子のオナラ癖はガムテープで治るんでしょうか? どきどきしますねえ。楽しみですねえ。では、さっそく、第九章を私が朗読してみましょう」


********


 私は教授室の中で、梳部すけべ教授と二人だけになった。


 私は教授の見ている前で、ゆっくりとブラウスとスカートを脱いでいった。ブラウスとスカートが、順々に教授室の床に音もなく広がった。


 ついに、私は教授の眼の前で、ブラジャーとパンティだけの姿になった。私は、教授の眼を引こうと、紫色のブラジャーとドピンクのパンティを身に着けていた。ド派手な私の下着を見て、教授は案の定、眼を大きく見開いて、口からよだれを垂らした。


 「未華子くん。す、素晴らしい下着だね。どれ、僕によく見せてくれたまえ」


 梳部教授はそう言うと、机から立ち上がった。その場で服を脱いで全裸になった。そして、私の後ろにまわった。床に両膝をつくと、私のお尻に顔を埋めた。私のお尻を覆うパンティー越しに、お尻の穴の部分に鼻をつっこんでくる。そうして、教授はクンクンと私のはいているパンティーの匂いを嗅いだ。教授のヒクヒクと動く鼻が私のお尻に当たっている。私のお尻の穴が刺激された・・そして・・私の腰が・・お腹が・・刺激される・・。


 私は思わず「ああ~ん」と声を上げた。次第に私のお腹が膨らんできた。教授の鼻の刺激を受けて、お腹の中にガスが溜まってきたのだ。


 私は安堵した。よかった。奈緒がお尻の穴にガムテープを貼ってくれて・・。お陰で、お腹の中にガスが溜まっても、教授の顔にオナラをぶっ放す心配はないわ。


 「未華子くん。パ、パンティを脱がしてもいいかね?」


 「ええ、教授。はやく・・脱がせて・・」


 「そ、そうかね」


 すると、教授はあせっていたのだろう。一気に私のパンティを膝まで降ろしてしまったのだ。そして、教授は私のお尻の穴の中に鼻を突っ込んできた。


 「ヒヒヒ・・・あれっ」


 教授の鼻が私のお尻の穴を覆っているガムテープに当たって止まった。


 「未華子くん。これは何だ。・・こ、これは・・ガムテープだ。こんなところに、ガムテープが貼ってある。どれ、僕が剥がしてあげよう」


 えっ・・教授。剥がしちゃ、ダメよ。


 私がそう思ったときは遅かった。教授がガムテープの端を少しめくると、一気にお尻の穴から引き剥がしたのだ。


 「ひぃぃぃぃ」


 あまりの痛みに私の口から悲鳴が飛び出した。同時に、私のお尻の穴から『ぶおおおおおん』という大きな爆音がひびき渡った。そして、巨大なガスの塊が私のお尻の穴から教授の身体めがけて猛烈な勢いで噴き出したのだ。


 教授の小柄な裸体がガスの直撃を受けて浮き上がり、ものすごい速度で宙を飛んだ。教授の全裸の身体が建物を支えている大きな木の柱に当たった。教授室の壁の中にインテリアとしてその柱が出ているのだ。ゴーンというものすごい音がした。教授が当たった柱に大きなヒビが入った。教授の身体は方向を変えて、今度は教授室の窓に向かって飛んだ。そして、教授室の窓をガシャーンと突き破って、さんさんと初夏の日差しが降りそそぐキャンパスの芝生の庭に向かって飛んでいった。芝生には大学の創設者の銅像がある。教授の身体がその銅像にドッカーンとぶち当たって、今度は銅像がはるか向こうにある農学部の畑をめがけて飛んでいった。ヒューと金属が空気を切る音が次第に小さくなっていく。芝生の芝が舞った。芝がゆっくりと落ちてくると、銅像があった場所に、梳部教授の生身の像が裸体で立っていた。手を挙げて、空を仰ぐポーズになっている。股間の小さなものがプラリプラリと二回揺れた。芝生でくつろいでいた女子学生の口から声が洩れた。「まあ、かわいい!」

 

 教授の像の肩越しに、遠くで畑の肥溜めからしぶきが上がるのが見えた。


 私は破れた教授室の窓から、外に飛び出した。


 私の後ろで、梳部教授の教授室が入っている3階建ての建物がゆっくりと傾いて、土煙とともに倒壊した。


********


 「いやあ、素敵な描写ですねえ。梳部すけべ教授の教授室での、主人公の未華子と教授の上品な出会いが、実にロマンチックに描かれていますねえ。女子なら誰でもこの通りのシーンで恋をしたいですねえ。それで、ここでは、梳部教授が未華子のガムテープを引き剥がしたときに出た『ぶおおおおおん』という音を取り上げてみましょう。永痴魔先生、ここはやはり『ぶおおおおおん』というオノマトペでないとダメなのでしょうか?」


 「そうなのです。このシーンは梳部教授が未華子のお尻の穴にパンティー越しに鼻をくっつけて、パンティーの匂いを嗅ぐわけです。それに刺激されて、未華子のお腹にガスが溜まっていくんです。そのガスが、教授がガムテープを引き剥がしたために、一気に噴出する・・その音なんですね。ですから、ここは『プー』とか、『ぶりぶりぶり』というオノマトペではダメなんですよ。未華子のお尻の穴から噴出する巨大なガスの塊を表現するわけですから、重厚な『ぶおおおおおん』という音の表記になるわけです」


 「なるほど、オノマトペによって、そういった状況が手にとるように分かるわけですね。ラジオを聞いている皆さん、如何でしたか? 大変、参考になりましたねえ。ぜひ、永痴魔先生の名著『その美しい女性は、スッポンポンになって屁をこいた』を参考になさって、皆さんの作品の中でオノマトペを使ってみてください。なんだか・・スタジオも臭ってきたようです。・・・では、今週の『永痴魔先生の小説講座』はこれでおしまいで~す。次週は、小説の話がどうしても続かないというあなたにピッタリ、こんなときに、どうしたら長い小説が書けるかということを永痴魔先生にお話ししていただきます。それでは、皆さん、次週をお楽しみに~」



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