第7話


淡く紫の光沢を放つ銀雪の長い髪。


透き通る白い肌に薔薇色の頬。


涼やかな紫紺の瞳。


本体が持つ色合いを際立たせる白と紫を基調とした、他の生徒とは違う色合いの、特注らしきウィールズ学園の制服。



肉の美醜に興味は無いが、改めて視界に入れてよく見ると、女神共とも比肩しうる美貌の持ち主だった。


冷たく鋭い印象を与える瞳を限界までまあるく見開き、桃色に彩色された唇をあんぐりと開いて、人間にしては美しいと言える容姿を台無しにさせている。



「えっ、これ、ヒルデガルド・ハイデルベルクだよね? うそうそ何で!? これ私? うそうそ私こんなに美人じゃないのに!」



目に薄ら涙すら浮かべて少女は動揺している。


余りの動揺ぶりにゼルフィールは細く震える肩に思わず手を置いた。


はっとこちらを見上げる紫紺の瞳が透き通っていて心臓が跳ねる。


涙が美しくほろりと、白い頬を伝い落ちる。



胸が騒ぐ。どうしてか、この人間に悲しんでいて欲しくない。


何か言わねばと、もどかしく口を開こうとしたその時。



「やだやだ止めて下さい自分で操作する推し以上の解釈違いはありませんよ見て下さいこの動揺顔ぉ~こんなのヒルデガルド・ハイデルベルクじゃないですう! もっと高慢綺麗な表情であるべきなんですううううっこんななっさけない姿にさせてしまうとかマジ解釈違いいいいホント推しに土下座したくなるんですよでも私が土下座すると絵面的には土下座する推しとなってしまって私は一体如何すれば! 推しを私が操作するとかホント不敬極まりないって言うかマジでムリムリほんんっと勘弁なんですだからえーとつまり! 私、ヒルデガルド・ハイデルベルクにお身体返還したいです!」


「無理だぞ」


「そんなバッサリと!」




混乱したのか立板に水を流すが如くよく分からない事を喋っていたが、無理なものは無理だ。


ゼルフィールは性質上、辺りに終末をもたらしがちだ。


そしてそれ以外は別に得意ではない。



「そんな事よりお前、不可解な情報を持っているな。知っている情報を全て教えろ。それにより俺の生存を盤石とする一助にする」


「ええ~それそのうち世界が終わるのでは?」


「そうだな。勝てば四勝目だな」


「そんなの駄目ですよ!」


「そうか、なら洗脳されておくか?」


「言います私ゼルフィール様の従順な信徒極まりないです!」


「よく言う。世界の滅びを拒む癖に」


「貴方の『権能:終焉』自体は別にそこまで好きじゃないです。ていうか迷惑だから止めて欲しいくらいです。でも。貴方の信念は大好きです。貴方の生き様が大好きです。私が見た物語での、貴方の言葉が忘れられません」



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