第5話
なぜゼルフィールが破魂を確信できたのか。
勿論その手応えがあったというのもあるが、視覚的に分かり易く理解できる指標がある。
その娘の護衛たる
この世界の人間は一人につき大抵一体、その人間がこの世に生まれた事を喜びし神の祝福として、
その者の心が形成された頃に視認出来るようになり、成長と共に言葉を交わせるようになり、助力の種類も多く強力になっていく。
人に対する妖精配属、これも
世が混沌とすればする程、何故かゼルフィールの成長も早い。
ゼルフィール一度目の勝因がこれだ。
逃げ回っての時間勝利だ。
だからセフィリアは、人間一人につき大体一体、絶対に裏切らず、ひたむきにその者を愛する友が傍に居たら、人の心は荒みにくいのではないだろうかと考えたのだ。
最低限度の身の安全が保証され、人心が荒廃していなければ、世も安定するだろうと。
誰もが大体同じ実力の護衛をもち、誰もが最低でも一体は、心の支えとなり得る友を持つ。
世界がそんな状態になれば戦乱や荒廃は一定の沈静を見るのではないかと。
理不尽な暴力からもある程度は守ってくれ、飢えもしばらく何とかしてくれる、そんなささやかな力を持つ友だ。
力も性質もそれぞれ違い、見た目も本物の妖精のような姿のモノから動物、魚、小型の龍、果ては樹木までと様々だ。
それらは大抵妖精らしく手の平サイズの姿を取り、常に友たる人物の傍を浮遊、あるいは肩の上に乗っている。魚だろうと樹木だろうと。
その人間の生誕を水の神が喜べば水の性質を持つ妖精が遣わされ、炎ならば炎をまといし妖精が付く。
そして妖精達は、その人間が生まれてから死ぬまでを共にする。
神がその人間の生誕を祝福する心の具現、世の安定の為に人「心」を支える友、故に“死ぬまで”とはその人間の心の死を指すようだ。
つまり妖精が死んだのならば、肉に付随する心臓が動いていようと主の心が死んだと言えよう。
魂とは心の乗り物、心を護る乗り物が失せてしまえば霧散するしか道はない。
ゼルフィールが様々な『終了』を駆使してこの娘をさらった時に、主を守ろうと健気にもこちらを威嚇し、全身の毛を膨らませていた小さな黒狐が居た。
のだが、洗脳魔法の発動と同時に霧散してしまった。
恐らくあれこそが、心死したる少女の妖精(フェアリー)だったのであろう。
あれがもう居ないという事は、少女の肉体に宿っていた心とその乗り物たる魂が既に喪われている証左である。
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