第3話




「一番大好き……」


「はい! 『ウィールズ学園』シリーズのキャラみーんな私、好きですが、その中でも貴方が一番大好きです! わわわ会話できてる夢って凄いもう私思い残す事とかないわ今すぐ天に召されたい!」



しかし話が不思議な方向へとかっ飛んだ。



「お前が何を言っているのかイマイチ分からんのだが……シリーズとは何だ。ウィールズ学園は一つしかないが」


「あ、ごめんなさい。『ウィールズ学園』シリーズってのはウィールズ学園を舞台にした乙女ゲーです。主人公ちゃんがウィールズ学園に入学して勉強に戦いに恋にと色々頑張っちゃう物語なんです」


「物語? つまり実在する学園をモデルとした娯楽小説か何かか?」


「う~ん、大体そんな感じですー」



あ、こやつ説明諦めたな。


というのがありありと伝わってきたのだが、それまでの説明が余りにも不可解だったので、謎の深淵をのぞく前にゼルフィールは理解を後回しすることにした。


そうだきっとそれが良い。だってこやつ訳分からんし。


……訳分からん。でもだからこそ、世界の滅びの化身たるゼルフィールだというのに、世界で一番大好きだなどと言ったのだろうか。


尻尾めいた黒髪が、意図をせずともくるんと揺れる。


ゼルフィールの眼前にちょこんと正座したままの少女は、今更ながら周囲を見回し、小動物めいた所作で小首を傾げた。



「ここはどこです?」


「王都外れの適当な洞窟だな」


「今私、一体どういう状況なんです?」


「お前、いや、お前が得た肉をかどわかし洗脳しようとしたのだが」


「ほあ!?」


「人の魂の脆弱さを想定しきれず、加減を誤り……」


「ええっ持ち主さんは無事なんですか??」




勿論、消失している。魂ごと。


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