第17話 思わぬ解散
「という結末でした、めでたしめでたし」
「なーんだつまんない。こっぴどく振ってやばれ良かったのに」
「で! 蓮には彼女が出来た訳だ」
「まあ、学院内の害虫が減った訳だからめでたしめでたし。ごめん香菜、蕨くんは害虫じゃないよ、そーね、ワニかな」
「爬虫類じゃない……せめて哺乳類にしてよ」
姫は4人に報告を完了した。期待外れの結果だっようだ。みんなに褒めて貰いたかったのに。
「姫、今週もホペ活?」
「ごめん華、でも早く終わりそう。ファミレスのメニュー作りやり行く?」
ファミレスのメニューを作るのではない、全ての商品を頼んで写真に収める。そして可愛いメニューを作ろうという、なんともバカげた遊びを始めている。これは愛が言い出した。そして、愛は何故か屋上メンバーに加わっている。愛がお弁当を持ってくるときは一緒に食べている。
「ポへ活のあとにメニュ活、期末試験まで忙しいね」
愛もノリノリだ。
△△△△△△△△△△△△△△
日曜日、ホペ活はまさかの終焉を迎える。川崎東高校、無名校に負けたのだ。この試合から林さんが復帰、ほぼベストメンバーだったが……たった一回のミスからの失点、不運なPK、焦りから精彩を欠いたカトレアは3回戦で姿を消した。
姫もここまで3年生のサポートを全力で行ってきた。泣き崩れるイレブン。林さんは東京でプロ入り、斎藤さんは……これでサッカーを辞める。監督がみんなを集める。
「はい、顔を上げる! みんな3年間お疲れ様でした。今日は悔しいな、実力を出し切れずに。でもこれがサッカー。(中略)これから立ち向かう社会というフィールドでも同じようなことがきっとある。失敗から学んでほしい。以上」
監督の長い話を初めて聞いた。後半途中からもう覚悟していたのだろう。この話をしよう、という雰囲気の強い言葉だった。そして、来週半ばからは試験休みに入る。
「姫、本当にありがとう。」
真っ赤に目を腫らした斎藤さんが声をかけてくれた。
「いえ。私も3年生のお手伝い出来て本当に楽しかったです。あの。明日の放課後、部室棟に集まって頂けませんか? お預かりしてるスパイクとかありますので」
「ああ、そうだな。こんな所で負けるとは思ってなかったからな。最後までありがとう」
「いえいえ、せっかくなので3年生全員とホペイロ係で記念撮影しませんか? 私にも大切な思い出なので」
「わかった、みんなには私から声かけるよ」
姫は今夜は徹夜だなと気を引き締めた。
次の日の放課後、3年生はみんな集まってくれた。1年生と2年生も来ている、スパイク返却が思わぬ引退式のような形になった。
「えー、みなさん。改めてありがとう。 昨日は悔しい思いをさせてしまって、ここにいるみなさんに申し訳なくおもってる。でもここでの思い出は……素敵な思い出だ」
林さんも泣きそうだ。
姫は機転を効かせて話し始める。
「えーみなさん、ここで私達ホペイロ係から3年生へプレゼントです!」
3年生にプレゼントが渡される。
「これレインボービブス風ハッピです。3年生のみなさんの名前が刺繍されてます。昨日は私達もビックリ、半分も出来ていなかったので徹夜でした」
「ありがとー。可愛い! これ一人ひとり名前入れたの?」
「これは香菜と愛でやりましたー、女子力のない私は監督総指揮ですっ。計画ではポジションも入れる予定でしたけど」
「これで十分よ! 新人戦はこれ着て応援行くからね」
大好評だった。香菜と愛の裁縫は神がかっている。
「じゃあ全員で記念撮影! ハイっ3年はハッピ着用!」
「そうね、写真終わったら紅白戦やろうよ! 3年対その他で!」
こうして3年生は引退していった。
△△△△△△△△△△△△△△△
期末試験前で部活は休みに突入。今回は科目が多く姫もピンチ。真面目に勉強に励む。真面目になると、何故かボールを蹴りたくなる、放課後少しだけ部室棟寄るか。
部室棟には人が少ない。3年生が引退した影響もあるのだろう。白井監督が来ていた。
「おー、レアモン(レアモンスター)みっけ!」
監督にボールを投げられる。
「ちょうど良かった。伊集院に話があったんだ。理事長室は行きたくないからここでいいか?」
あー、代表のことだな。
「代表の事だけど、姉さんから正式に代表として召集したいって連絡が来た。そうなると取材なんかも受けないとならないし、お前超がつく美人だしな、何か起こりそうだ」
「私サッカー好きですし、代表のメンバーも手懐けましたけど……一存ではハイと答えられません」
「では一度ご両親含めて話をするか。藤川先生から姫のことチラッと聞いてな……」
と言うことで試験が終了した日の夕方に話し合いをすることになった。
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