第16話 蓮の気持ち、姫の気持ち
「どうするの? 蓮」
蕨か話しかける。
「どうって……」
「お前さ、姫のこと狙ってんだろ?」
考え込む蓮。そう蓮は隣でのクラスの女子に告白されたのだ。背が低くて可愛らしくとても幼く見える。カトレアの制服がよく似合う。
「姫と付き合うなんて、そりゃ無理だろ。女子に殺される」
冗談を言っても流される。
「蓮は姫のこと好きなんだろ? この学校の男で多分姫に一番近いのは蓮のだと思う。ワンチャンあるかもよ? 本人に聞いてみようよ」
「慎一くん、ヒメ様とお呼びください。どこぞで誰が聞いているか分からないからね」
(恐らく……姫の連絡先を知ってる男子はオレとわらびのみ。グダグダ考えずに聞いてみよう)
蓮は帰宅部である。中学までバスケをしていたが、カトレアには男子運動部がまだない。文化部には興味ないので帰宅部だ。やましいところはない。
家に戻る。携帯を開いて姫に連絡する。
----今部活かな? 相談したいことあるんだけど。土曜日のとかって空いてないかな? 確か部活なかったと思うし----
思い切って送信!
----連絡くれるなんて珍しいね! いいよー、でもその日は買い物かごあるから付き合ってくれるなら----
すぐに返信があった。〜付き合ってくれる〜という文字に一瞬ドキリとする。
△△△△△△△△△△△△△△△
「おまたせー、ごめん遅れて」
眩しい。よく誘えた、泣きそうだ。
「おー、とてもお似合いです、ヒメ様」
「あー、その言い方なし。今日は姫でいい、だから私も蓮って呼ぶね、今日は対等ってことで」
「姫」
「なに?」
「ごめん、呼んでみただけ」
舌を出しておどけてる姫、あー、夢を見ているみたい。
目的地は原宿。駅前にあるサッカー用品専門店だ。自分のスパイクと部活で使うレインボー柄のビブスを買うらしい。電車では色々質問された、が、内容は覚えていない。周囲の視線が気になる。
「原宿って久しぶりー、ねえ、お昼だからご飯にしよ。今日は付き合ってくれたから奢るよ、ても私の好きなものね、選択権は蓮にはなし」
「わかった、お店のチョイスは姫にお願いするよ」
「ここにしよ!」
意外、中華料理店だ。それも外観からかなり高級そう。
「いいから、いいから」
店に入った。丸いテーブルだ。姫との距離が遠い、少しホッとする。メニューを開ける、なんだ? ランチだよ? 購買弁当の10倍はする。
「蓮は飲み物だけ選ばせてあげる、料理は私に任せて!」
蓮は一番安い烏龍茶にした。姫はやはりいいところのお嬢様なんだな、住む世界が違うかも。
運ばれてきた料理は多くない。北京ダックに、デカいエビチリ、スープにチャーハン。スープ以外は大皿だ。
「ここはエビチリ美味しいよ、北京ダックは私が好きなもの、チャーハンは男子用」
「ありがとう、でもこれ高くない?」
「大丈夫、億り人だから!」
え? 何かバイトでもしてるのか? 葬儀関係の……。後で調べてみよう。
会話は弾まない。デートであれば失敗といえる。会話も全て姫のペースだ。
「ご飯のときは相談は無しね、美味しく食べたいから」
「そうだな。」
「量が多いけど頑張って食べてね。私も食べるから」
やっと落ち着いてきた。姫は楽しそうにクラスメイトの話しをしている。食事が終わると買い物、まずスパイク、限定のNORIKAモデル、高っ! お買い上げ。 レインボービブス、これ着けるの恥ずかしー、枚数多いので送ってもらうことに。女子だから買い物長いと思いきや即決即断。
「これ欲しかったのよ、限定モデル!」
買い物を済ませてカフェにいる。姫はコーヒーをブラックで飲んでる。そして買い物の成果にご満悦だ。
「良かったな。」
「そそ、相談あるんだっけ? ごめんね、ここまで待たせて」
「いやいや。お昼ご馳走してくれたし。実は……ある女の子に告白されまして……。」
「おー! すげー! その子可愛い? どんな感じ? 巨乳? 」
蓮は複雑だ。悲しい顔を期待していたのかも知れない。
「うーん、背が小さくて見た目より若いというか……」
「おー、ロリ系かぁ。背が低いなら巨乳は見込めないな、でも大丈夫、蓮が責任持って揉んで大きくしろ!」
そうか! 蓮は気がついた。姫は……男友達と同じ感覚だ。天真爛漫なプリンセスというより、自分に近い。そして、蓮は人として姫が好きだ、でもそう割り切るべきなのか……。
「あ〜あ、姫が超絶ブスだったらなぁ」
「ざーんねん、どんなにブスでも私男に興味ないので!」
「じゃあ女の子好きなの? 舞とかを愛してるとか?」
姫は考え込んでいる。
「蓮さ、もし蓮がその記憶のまま女になったらどう思う? お風呂なんかも覗き放題」
「そりや天国だな」
「女になっても女の子好きは変わらないよね、じゃあ男の子とは? 恋愛対象とかで見られる?」
「愛があれば、とは言い切れないかな。もちろんジェンダー問題とは別として」
「私、そんな感じなのよ。男女の友情って難しいでしょ。女の子も好きだけど、男の心で見てる感じ。でも私、オンナだしね、女の子とも付き合いたいとか、性の対象とか、そういう気持ちにはならないの」
沈黙。
「でも胸は、揉める」
姫の言葉
「じゃあ、オレがロリっ子の胸大きくしてやるか!」
二人で笑う。姫が美少女でなくて、男だったら……親友になれたな。慎一と3人で……。
△△△△△△△△△△△△△△△
(あー疲れた)姫は自宅に戻った。連からの決定的な告白は回避できた。それにかなり打ち解けた。最初はデート? そして最後は男どおしの付き合い、まで変化させた。
「明日、3人への報告が面倒だな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます