第15話 ホペイロという仕事
旅行は楽しかった、でもさすがに姫は疲れている。今日から授業と部活、あーだるい……部活もこれ以上休めない、サボりたい……。怠け者になりつつある。
「楽しかったけど、疲れたね。クラスのみんなのお土産でも渡すか」
華が重い腰をあげる。数が多いので舞にも協賛させて4人で購入、お土産は香菜が選んだ化粧品だ、そう、男子も含めて……。香菜から蕨への特別プレゼントは……ない。
「お昼は屋上ね!」
香菜ありがとう! 当面青春を感じられるのはこの瞬間しかない。
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さあ、久しぶりの部活。インターカップは3年生主体なので姫はBチームで調整。せめて3年生の手伝いって出来ないものか……そこで妙案が!
「監督、私インターカップに向けて3年生のサポートしたいです。どうでしょう?」
「練習相手になってくれるのか……でもな一人じゃ……」
「いえ、違います! 裏方の仕事です。私、この前ホペイロの方の本を読みまして、感動しました」
ホペイロ。海外では確立してる職業。ポルトガル語で用具係。選手が試合に集中出来るように、メンタルから道具の整備、ロッカーの清掃まで行う仕事である。3年生には試合に集中してもらいたい。林さんや斎藤さんがいない間に敗退する訳にはいかない。
前世では引退直後レジェンドホペイロの方に弟子入りした。そして、その仕事を学んでいる過程で知り合った方に誘われ社会的地位を得たのだ。
「そりゃさせられん、代表候補がホペイロって」
「練習相手になるより、余程効果あると思いますが……ここは部活動、ホペイロの重要性も学ぶべきです」
今回はゴリ押しした。こうして許可が下りた。こういう所もカトレアっぽい。素晴らしい学院に来たものだ。人選は任せてもらった……生徒会に相談しよう!
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金曜日、今日からホペイロ始動である。ホペイロの人選は華に相談した。サッカー部からだと不服も出よう、なので帰宅部に頼むことに〜香菜と田中である、田中は愛ちゃん呼ばれてる。姫に頼まれれば断れないクラスメイトの一人である。
「では香菜、愛、頑張りましょう!」
「喜んで! ヒメ様」
愛は姫に様を付ける。崇拝しているようだ。愛は……魅せ方が悪い、よし化粧の特訓はしよう。上手く塗ればイケるかもしれない!
3年生の練習が始まった。姫は3年生から色々声をかけられるがそれどころではない。教えることが多すぎるので仕事は絞ることにした。サッカー部にはマネージャーがいる、彼女たちの仕事も残しておかないと……。
「これでいいかな?」
「上出来! これでボールとスパイクの手入れは出来るね」
まず、マネージャーが手の回らない用具の手入れから始めた。これはかなり大変だ。3人ではこれだけで部活の時間が終わる。
「おー、すげー! 預けたスパイクピカピカじゃん。今日使ったトレシューも出していいの?」
「はい、明日の練習前までにどうにかやりきります。それと汚れたビブスとかはここに、これはマネージャーが洗います」
結局カトレアサッカー部ホペイロ係は用具関連の手入れとボール出しがメイン、使ってないゴールの網を補修したり、ピッチの清掃、ゴミ拾いをしたりと、多忙な毎日を過ごすのである。
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数日が過ぎて、U19組が帰ってきた! また全校集会で報告会がある。林部長から3位の報告と最終戦での舞のゴールが報告される。
「みなさん、ありがとうございます。今度はこの学院の為にインターカップ優勝を目指します!」
今回の集会では姫は代表でサポートメンバーとして帯同したこと、出場登録の関係で代表デビューが見送られたことなど、現状報告のみなされた。
「伊集院さん、代表デビュー出来なくて残念だったけどまた次頑張ってね」
こいつ誰だ?
「私さ代表戦、伊集院さん出るかと思って代表戦観に行ったの出ていなかったけど、関係者席に居ましたよね? 伊集院さん」
「うん、いたよ。サポートメンバーだったし」
で、こいつ誰? 廊下で声をかけられる。応援してくれているようだが、お手紙や告白と違って名前も分からない。
「相変わらず人気者ね!」
「華、まあ悪い気はしないけど…」
「違うクラスの子だよ、確かバスケ部」
「みんなネームプレートつけてほしいよね。小学生みたいに」
「姫の小学校ってそんなことしてたの? それ個人情報漏えいじゃない? ダメなやつ」
いけね、ジェネレーションギャップだ。確かに。
「あー、委員会の時だけだったかな。でもよく誰かって知ってるね?」
「生徒会やってると部活やってる人と話す機会多くて、何となく覚えちゃう」
そういうことか。華は頼りになる、人事総務部長だな。
「ありがとう、人事部長!」
お昼は4人揃っての屋上。やはりこれでなくては!ソウルの思い出話に花が咲く。
「そういえば姫、今3年生のホペイロやってるんだって? 変人だよね、姫って」
「違う、変態、だってソウルのプールで私のこと舐め回すように見てたし」
香菜ちゃんそれ正解かも……。
「3年生に頑張ってほしくて。その甲斐あって、1回戦突破したでしょ、」
「姫が出れば楽勝なんじゃない? 私とさ」
「白井監督の方針だし。舞のサッカー人生って多分あと2年では終わらないでしょ? でも3年生はこれで終わってしまう先輩もたくさんいる。やはり応援したいじゃない」
「じゃあ私もやろうかな。」
「ざ〜んねん、定員オーバーです」
舞には高みを目指してほしい、調整をし、練習をしてほしい。姫からすれば伸びしろの塊だから。
やはり屋上は楽しい。
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