第10話 意外な展開とすれ違い
試験は無事に終わった! 姫の成績は随時戻ってきているが、英語全般はさすがに高得点〜特にコミュ英は満点。その他の教科も70〜90点の間、まずまずだ。
部活はU19で主力が抜けることになり、月末から始まるインターカップはオール3年生のチームで臨むことになった。先駆けてU19候補の3人はビレッジでの強化合宿で不在、姫はフル代表が召集後にサポートに入る、それまでは自由だ。
「姫ー、駅前にさ、新しいパフェのお店出来たんだって。夕方行こうよ!」
食べ物に関しては敏(さと)い香菜から誘われる。来週の水曜日からは代表練習だ、遊ぼう! ってことで二人でお店に向かう。華は生徒会にスカウトされたらしい、今日は不参加。目的のお店の前に来たとき
「あーヒメ様、こんなところで会うなんて奇遇でございます」
渡邉だ。それと蕨もいる。こいつらデカいのに気づかなかった。それだけパフェに執着してたってことか……。
「渡邉と蕨じゃん」
「あれ、相川と遠藤は一緒じゃないの?」
「美女は何かと忙しいんですっ」
「じゃは2人は? 美女じゃないってこと?」
こいつらうぜー。どうせ一緒にパフェでも食べたいって魂胆だろ。まあいいコイツラも誘うか。
「今から2人の美女はパフェを食すという大切な使命があるのです。だから忙しい、そうだ2人もいく?」
姫の言葉に渡邉は明ら様に驚き喜ぶ。彼らを誘ったのは……ナンパ対策だ。ここに来るまで何組かに声を掛けられてる。
「でもおかね……」
「金ない? ダセーな、いいよ奢るから」
まあそうだよな、男子なんて。ボディガード代だな。資金は着々億り人に近づいている。
結局4人でお店に入る。そういえば……さっきから香菜が一言も話をしていない。香菜は気になる人いるって話だったけど、このどっちかなのかな? いや、きっとそうだ。
お店のオーダーは……4人とも同じパフェ、このウルトラスペシャルBIGフルーツパフェ。メニューを見て姫が即座に注文。3800円、飲み物はフルーツフレーバーウォーターの飲み放題が付いている。
「ねえ香菜、渡邉とかと話す機会ってあったの?」
「そんなのなかなかないよ、オレ、お嬢様の皆様から危険な男子って思われてるし」
「渡邉、オメーには聞いてない」
「やはりさ、クラスで男子6人だとなかなか肩身狭いんだよ、気軽に声なんてかけるとナンパなやつって思われるし」
蕨は正論を吐く。こいつ常識人なのかな?
「私は男の人と話すこと、家でもないし、ずっと女子校だし、変に意識しちゃうんだ」
おー、香菜ちゃんその表情たまらんよ。
「でもさ、男子6人衆っていつもどんな話してるの? エッチな話ばっかりなの? ヤダー、不潔ー」
姫が下衆なネタをぶちこむ、姫も前世は不潔だった。
「伊集院、いやヒメ様、自分は違います。クラスの女性は素直に尊敬しております。みんな美人ですし」
蕨は真面目か!
「じゃあ純愛希望ってこと? 誰かいいなーって子はいるの?」
「自分は石井さんが気になります。守ってあげたくなります」
おいおい、本人を目の前にして、こいつバカだ。さっきの香菜の発言聞いてなかったの?さすがの渡邉も話題変換出来ない。香菜の顔が紅潮する。
「なんか……嬉しいです」
香菜の一言、強烈パンチ! この二人どうなることやら。
香菜の発言で会話のきっかけが掴めた4人は、ソコソコ仲良くなることができたのでした。
BIGフルーツパフェ事件はすぐさま華と舞に報告だ。華は冷静に喜んでいた。舞は……既読にもならない。合宿忙しいのかな、とその時は軽く考えていた。
△△△△△△△△△△△△△△△
週が改まって月曜日、生徒会主催の全校集会が開かれる。そこではU19選出の3人とフル代表サブメンバーの姫が登壇し、選出報告をする。舞と林さんは集会が終わったあとまた合宿に戻ることになっている。束の間の再開。
「舞ー、久しぶりー。忙しそうね! 連絡見てくれた?」
「あ、うん、見てない」
「何よー、忘れないでよー」
無視だ。返答もそこそこにいなくなってしまった。やはりな、返信が来ない時点で覚悟はしていた。自分がマネージャーにと誘った友達が練習試合の20分でフル代表候補、舞も飛び級での選出だけど、嫉妬もするだろう。
前世を入れると20年のキャリアがあり、前世に出来なかった動きもこの身体能力で出来てしまう。京都でプロとして5年間過ごしてる訳だが、舞にはそんな事説明なんて出来ない。どうしたものか……。
そして集会が始まり、姫も登壇する。
「みなさん、本日は嬉しい報告があります。我が校サッカー部の3名がU19日本代表としてソウル大会に出場する事が決まりました、3年生の林真理さん、斎藤希さん、そして1年生遠藤舞さん!」
理事長が高らかに宣言。全校生徒どよめく、黄色い声援も多い。3人はそれぞれが抱負を全校生徒スピーチをする、代表になるとスピーチ練習は協会からみっちり行われる、無難だ。そして壇上には姫もいる。
「3人ともありがとう、そしてもう一人、伊集院姫さん、彼女は今回、サブメンバーではあるが日本代表の候補として召集されました!」
一瞬の静寂、その後は歓喜、大声援。
静まるとスピーチ、それも一言…。
「伊集院姫です。精一杯がんばります!」
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